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一九九三年に総務庁による「同和地区実態把握等調査」が実施され、はや七年が経過した。今日の部落の実態を明らかにするものとして、公的で全国的な規模をもった部落の実態調査は、この調査しかない。
だが、この七年間、部落をとりまく社会情勢も、部落の実態も激変してきている。何よりもまずバブルが崩壊し、企業倒産、リストラの進行による失業者の増大がみられる。また、地方自治体の財政危機が進行し、各種予算が削減されてきているが、「同和」対策予算も例外ではない。
さらに、「地対財特法」にもとづく特別施策も順次削減され、十分な受け皿を準備することなく一般施策への移行が推進されている。
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部落をとりまく一連の条件が激変した結果、部落のなかでも企業の倒産、失業者の増大がみられる。たとえばそれは三重県の実態調査や大阪府泉南市での最近の調査によっても明らかにされている。
企業倒産や失業者の増大、さらには先行き不安が広まるなかで、各地で悪質な差別落書きや差別投書、インターネットを悪用した差別宣伝が増加してきている。
東京都の石原知事による「第三国人」差別発言や、森首相による「天皇を中心とした神の国」発言に象徴される国家主義的な傾向の強まりは、必然的に部落差別をはじめとする一連の差別の強化をもたらす危険性がある。
今後の部落差別撤廃の方策を確立するためには、何よりもまず、九三年実態調査から後のこうした一連の激変の結果、生じている部落と部落差別の実態を総合的に明らかにする調査が不可欠である。
一方、部落では少子・高齢化傾向が部落外と比較して急速に進行してきている。このなかで子育て支援がうまく機能しているかどうか、あるいはこの四月から導入された介護保険制度から部落の高齢者が排除されていないかどうか、早急に調査する必要がある。
また、これまでのとりくみの成果もあって、所得が安定したり大学進学を達成した人のなかには、部落外で生活をする人がしだいにに増えてきている。
こうした現状のままでは、部落の活力、ひいては部落解放運動の活力が弱まっていくおそれがある。
子どもと高齢者、経済力が乏しい人と経済力を付けた人、中等教育で終えた人と高等教育を修了した人、これらの人びとが、ともに暮らしていく部落を作り上げていくことが、さし迫った課題となっている。このためには、どのような方策を講じていく必要があるのかの調査も必要だ。
さらに、二一世紀における部落解放の展望を考えたとき、部落の周辺地域との連帯を積極的に構築していく必要がある。そのための課題としてどのような課題があるかを、それぞれの部落に即して解明していく必要がある。
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これまで指摘したような一連の課題にとりくむためには、実態調査の実施が不可欠である。
さる四月二六日、衆議院の内閣委員会で、民主党の岩田順介・議員(民主党)の実態調査実施を求める質問にたいし、続・総務庁長官は「総務庁は政策評価という仕事をもち、
『同和』行政の推進がどのように進行しているのか、どういう手立てが必要なのかという政策評価、それは同時に調査に結びつくわけで、今までの『同和』行政の政策評価を検証し、あわせて、これからいかに『同和』行政を進めていくべきかの、具体的な政策を立案するためにも、そういうことをやらせていただきたい、重くうけとめて」と答弁している。
中央本部段階では、この答弁なども手がかりに、総務庁をはじめとした政府各省庁に、早急に総合的な部落実態調査を実施するよう求めていく。
大阪府や鳥取県では、二〇〇〇年実態調査が実施されているが、このとりくみに学びながら各都府県連、各支部でも、それぞれの都府県、さらには市町村に、総合的な実態調査を早急に実施するよう、働きかけを強めていこう。
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