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解放保育運動が始まってかれこれ30年の年月がたっている。その間にこの運動はひじょうに大きな成果をかちとってきた。いまそれを逐一あげることはしないが、何よりも特筆すべきはこの運動が婦人(ここでは歴史的な意味であえてこの言葉を使う)たちによる婦人のための、層としての初めての自主的運動であったかも知れないということである。
もちろん、この運動には部落の子らの将来もかかっていた。まだいたいけない子を紐で柱につないでという形で、内職仕事をおこなわざるをえなかった部落の母親たち。そしてその母親たちがみずからの労働権と子の教育権を求めて立ちあがったのがこの運動であったのだが、いま総括しておくべきは、この運動が部落解放運動のなかでさえ、「女の運動」としての位置づけしか与えられてこなかったという点についてであろう。
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「婦人が変われば部落が変わる」。こんなスローガンがかつて部落解放運動のなかから生み出されてきたし、いまもそれは使われつづけている。しかし、そんななかで男はどれほど変わったのだろうか。変わる必要はなかったとでもいうのであろうか。
「共同子育て」という概念がある。「保育所・幼稚園・地域・家庭が一体となって」の保育を「保育所職員集団と保護者集団」がどう作りあげていくのか、ということがそのなかで語られてきたのである。これもまた、すばらしい成果であったとは思う。
ただ、残念なことに、そこにジェンダー・フリー(性別にとらわれない)という考え方が、それほど明確には位置づけられてこなかったのではないかという疑問が、どうしてもつきまとってしまう。ようは夫の側、父親の側を「共同子育て」のなかにどう引きずりこんでいくことができるのか、そしてそのための戦略をいかにして組み立てていくことができるかということなのである。
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「男女共同参画社会基本法」がすでに制定されているが、いわれるその不十分性を克服していくためには、前述のような意味でわが解放保育運動がはたすべき役割はひじょうに大きい。
長くつづいた保母という呼称が「保育士」に変えられた後ということもある。このさい、家庭であるとか保護者であるとかの、保育の基礎的な単位のなかにも、ジェンダー・フリーというメスをきちんと入れてみるべきだと思う。当然、ドメスティック・バイオレンス(夫、恋人からの暴力)への対応なども含まれるべきだと思うが、それなくしては「子どもの権利条約」も何もあったものではない。
男こそ変わるべきなのだ。
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