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総選挙で、人権推進派議員の一定の前進が達成されるなか、政府や各党で新しい体制が整えられた。
私たちは85年に「部落解放基本法」案を社会に提示し、その実現へのとりくみをすすめ、15年が経過した現在、「基本法」案の「教育・啓発法」的部分の具体化につながる「人権教育・啓発推進法」(仮称)制定への大きな前進を獲得してきた。
具体的には、4月13日に民主党ネクストキャビネットが「人権教育・啓発の推進に関する法律要綱・骨子案」を、4月20日には社会民主党が「人権教育・啓発推進法骨子素案」を、5月31日には与党・人権問題等に関する懇話会が「人権教育・啓発の推進に関する法律大綱」を、それぞれとりまとめ公表している。これらは、私たちのとりくみの成果として確認したい。
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これらの成果をふまえ、今秋の第150臨時国会で法律を制定するために、総力あげたとりくみを展開しなければならない。
そのさい、法律の内容に、①地方自治体や民間団体などがおこなう人権教育・啓発への国の積極的な財政面の支援を明確にする②人権教育・啓発を推進するための一定の資格をもった推進者の設置を盛りこ③各地に人権教育・啓発センターを設置することを盛りこむ、④国や地方自治体が人権教育・啓発に関する計画を策定するさい、被差別当事者も参加した審議会などの意見をふまえる⑤法律の所管を内閣府に位置づける、などを求める必要がある。
今秋の臨時国会で「人権教育・啓発法」の制定を実現するためには、まず、与党・人権問題等に関する懇話会の早期再開と法案のとりまとめを求め、民主党や社会民主党との法案とりまとめの協議の早期開始を求め、政府各省庁に「人権教育・啓発推進法」(仮称)の早期制定への積極的な協力を求めていくことなどが必要です。
中央本部では、「基本法」中央実行委との連携を強め、与党各党、野党への精力的な要請をおこなうとともに、全国知事会、全国市長会、全国町村長会、全日本同和対策協議会などへの要請活動を都府県連と連携して展開。秋の臨時国会開催にあわせ、「人権教育・啓発推進法」(仮称)の制定を求める全国集会や波状的な要請行動など、総力をあげたとりくみを展開する。
都府県連、地協、支部も、「基本法」実行委に結集する多くの仲間とともに、臨時国会での法律制定へ向け、地元選出国会議員や地元自治体への精力的な働きかけをおこなおう。
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全国人権擁護委員連合会は7月18日、人権擁護推進審議会宛に、政府から独立した人権委員会設置の必要性を盛りこんだ提言をおこない、7月28日には人権擁護推進審議会が、独立の人権委員会設置の必要性に関する論点を公表した。これらは、これまでの法務省人権擁護局や人権擁護委員による、「人権侵害の救済」の限界を認めたものとして、一定の評価をすることができる。
しかし法務省筋は、この独立の人権委員会の機能の一つとして、人権啓発も実施するので、現在、制定が予定されている「人権教育・啓発推進法」(仮称)を制定しないように、と与党の国会議員を中心に関係方面に働きかけをしているようだ。
独立した人権委員会の一つの機能として、人権啓発も実施することは必要だが、人権教育・啓発は、この委員会だけでは到底できるものではなく、あらゆる機会、あらゆる場所で実施されなければならず効果的に推進するためには、あくまでも独自の「人権教育・啓発推進法」(仮称)の制定が必要である。
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あいつぐ保険金殺人、少年による連続殺人など、「人の命が軽視される」事件が頻発する昨今の日本の人権状況には、危険信号がともっている。警察官による一連の不祥事の発覚、横山・前大阪府知事のセクハラ事件、石原・東京都知事の「三国人」発言、森・首相の「神の国」発言など、公的機関の責任ある人びとによる基本的人権の否定や差別宣伝があいついでいる。
このような日本の人権状況を直視するとき、今秋の臨時国会で「人権教育・啓発推進法」(仮称)の制定を実現することは、21世紀の日本が、人権文化に満ちあふれ、国際社会のなかで名誉ある地位を占めるためにも、決定的に重要である。全力を傾注し、この闘いに勝利しよう。
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