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部落問題資料室
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主張

 

衆参の附帯決議ふまえ「人権教育
・啓発推進法」の基本計画策定を
(2001.09.03-第2034号)

 昨年十二月六日に、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(以下「人権教育・啓発推進法」と略)」が公布・施行され、九か月が経過する。この法律は、部落差別をはじめ、あらゆる差別を撤廃し人権が尊重される二一世紀の日本社会を構築していくうえで、きわめて重要な意義をもっている。
 「人権教育・啓発推進法」は、人権教育・啓発の推進が国、地方公共団体、国民の責務であることを明記するとともに、国にたいしてそのための「基本計画」を策定すること、政府にたいして毎年その実施状況を国会に報告すること、地方公共団体にたいする財政上の措置を求めている。また、地方公共団体にたいしても、人権教育および人権啓発に関する施策を策定し、実施する責務を明記している。
 しかしながら、この法律は、人権教育・啓発を推進していくための枠組みを定めたものにとどまっており、この法律が現実に大きな影響を発揮するためには、国として具体的な「基本計画」を策定することと、政府によるその実施状況の定期的報告が実施されることが決定的に重要である。
 この点に関して、この法律が衆議院と参議院の法務委員会を通過するさい、附帯決議が付けられている。この附帯決議をふまえ、早急に国としての人権教育・啓発の推進に関わった「基本計画」の策定と、実施状況の報告を求めていく必要がある。

 そのさい、「基本計画」の策定にむけた方法については、①衆・参両院の附帯決議をふまえ、地方自治体や人権に関わった民間団体などの意見を十分にふまえること②このため、地方自治体や人権団体の代表の参画を得た「基本計画策定委員会」(仮称)を設置すること③「基本計画案」を公表しパブリックコメントを求めること④「基本計画案」にたいする地方公聴会を開催するなどの具体的な方策を講じること、を求めていく必要がある。

 また、「基本計画」の策定にむけた内容に関する基本的視点としては、①衆・参両院の附帯決議をふまえ、「人権教育のための国連10年」国内行動計画を充実させ、これを「基本計画」として位置付けること②「基本計画」の枠組みとして、基本的な考え方、あらゆる場での人権教育・啓発の推進(人権との関わりの深い特定職業従事者にたいする人権教育・啓発の推進を含む)、部落差別撤廃を含む重点課題の設定、国際協力の推進、計画の推進にあたって必要な事項等を含むこと③人権教育のための国連10年国内行動計画に関し充実すべき事項として、特定職業従事者のなかに、議員、裁判官、宗教者を追加すること④特定職業従事者にたいする人権教育・啓発を推進していくためにカリキュラムとテキストを策定すること⑤すべての府省庁で、人権教育・啓発を推進するための体制を準備し基本計画を策定すること、などを求めていく必要がある。

 さらに、「基本計画」の策定にむけた内容に関する個別要請事項としては、つぎの諸点を求めていく必要がある。
 ①小学校区単位に一定の資格を有した人権教育・啓発推進員(仮称)を設置すること。
 ②公正採用選考人権啓発推進員を一定の資格を有した制度にするとともに、二十五人以上の従業員がいる職場に配置すること。
 ③公民館、隣保館などを拡充し、小学校区単位に人権教育・啓発センターを配置すること。
 ④地方自治体の人権教育・啓発に関するとりくみを積極的に財政支援すること。
 ⑤人権教育・啓発にとりくむ民間団体を積極的に支援すること。
 ⑥学校教育、社会教育、生涯学習の基本に人権教育を明確に位置付け、カリキュラムを確立すること。
 ⑦人権教育・啓発に関わった情報を積極的に収集し、広く提供すること。
 ⑧人権教育・啓発の効果的な推進に役立つ研究を積極的に奨励するとともに、その研究・教育のための高等教育機関を設置すること。

 このほか、「基本計画」の実施に関しては、①「基本計画」をうけた実施計画を策定し着実に実行していくこと②「基本計画」の実施状況を毎年国会に報告すること③人権教育・啓発の効果的な実施のために必要な調査を定期的に実施すること④「基本計画」を少なくとも五年ごとに見直していくこと、などを求めていく必要がある。
 国にたいする基本計画の策定と年次報告の実施を求めるこれらのとりくみを、わが同盟が積極的な役割を果たし、地方自治体をはじめ広範な人びととの連携を強化するなかで展開していこう。

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