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部落解放研究第35回全国集会(全研)が、十月十六~十八日、香川県高松市でひらかれる。全研は、部落問題はもちろんのこと、さまざまな差別問題・人権問題に関心を寄せる多くの人びとが参加し、各分科会を中心に熱心な討議がおこなわれ、回を重ねるごとに大きな成果をあげてきた。
とくに、部落解放運動にかかわる実践交流と理論創造に向けた論議では、今後の運動の方向や「同和」行政のあり方などについて重要な、積極的な提言を生み出してきた。また、さまざまな人びとから、部落解放運動をめぐる、ときには厳しい意見も受けとめながら、部落差別撤廃に向けたとりくみを大きく前進させる役割もはたしてきた、といえる。
昨年の第34回鳥取全研では、部落差別撤廃にとりくむ多くの団体・個人が結集した現地実行委員会中心に、大きく成功させてきた。とくに、鳥取西部地震の直後ということで、一部会場変更をせざるを得ないなどの悪条件を現地実行委員会を中心にした懸命な努力と全国から約二万人の参加者の協力を得てはねのけ、成功裡に開催できたことは、全研を、さらに大きく、意義深いものとすることができたといえる。
今年の香川全研も、こうした成果を受け継ぎ、発展させ、部落問題解決を中心的な課題としながら、さまざまな差別問題・人権問題にとりくむ共闘・連帯のとりくみを交流し、討議を深めてもらいたい。
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今年の第35回香川全研では、香川県連を中心に、幅広い団体・個人によって、現地実行委員会が結成され、昨年から精力的なとりくみがすすめられている。
部落解放運動の新しい時代を切り拓くために、全体集会では、「地対財特法」後の「同和」行政・人権行政の方向について、国・自治体・運動団体の立場から、それぞれ論議を深めていくためのシンポジウムをもつ。また、南アフリカで開催された「反人種主義・差別撤廃世界会議」の報告もおこなう。
この間の「基本法」中央実行委員会を中心にしたとりくみの成果として、「人権教育・啓発推進法」が制定された。この「推進法」に関わっては、とくに国が策定する「基本計画」に、自治体などの「人権教育10年」のとりくみを反映させ、差別撤廃と人権文化の創造に向けて、大いに活用することが求められている。また、「法」後の「同和」行政のすすめ方についても、部落問題の総合的抜本的な解決に向けて、さまざまな施策を活用・研究することが重要である。
分科会でも、「基本法」や狭山闘争、差別糾弾闘争のほか、福祉や生活の課題とともに、「人権のまちづくり」、地域・職場・学園での教育・啓発のとりくみなどを中心にして、今後の「同和」行政・人権行政の確立に向けた論議を深めてもらいたい。
さらに、今回の全研では、全体集会でも取りあげる予定の福田村事件を中心にした「被差別部落と行商」のテーマと、「ハンセン病と人権」をテーマにした、二コースでフィールドワークをおこなう。
今後とも、こうした集会内容・運営についてさらに検討をすすめ、現地実行委員会の協力を得ながら、全研成功のとりくみをすすめていきたい
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今日「基本法」制定を求める国民運動の幅広いとりくみによって、「人権教育・啓発法」が制定された。また、人権侵害救済制度のあり方をめぐって、五月に「人権擁護推進審議会・答申」が出された。「答申」では、国内人権機関の創設を中心にした内容が明記され、与党・人権問題等に関する懇話会も、来年の通常国会に政府が法案を提出するように申し入れがされた。また、「法」後の課題として、「解放奨学金制度」や生活環境整備事業についても基本的な方向が確認され、同様に政府に申し入れがされている。
今後の課題は、こうした国や自治体がとりくむ「同和」行政・人権行政を推進させていくための組織体制の整備である。この間の総務省(地域改善対策室)交渉では、特別対策の終了を「同和」行政の打ち切りと意図的に歪曲してとらえる姿勢を徹底して追及してきた。この秋には、全国大行動のとりくみ成果を集中させ、「法」後の「同和」行政・人権行政の確立を厳しく迫らなければならない。
また、狭山再審闘争も、新証拠提出以降、異議審闘争が最大の山場を迎えており、再審実現に向けて闘いを強めていかなければならない。さらに、インターネットによる差別事件をはじめ、今日的な差別事件の分析と、差別糾弾闘争の強化も重要な課題になっている。
第35回香川全研は、こうした状況のなかでひらかれる。今日の部落解放運動や差別撤廃をめざすとりくみをめぐる情勢は厳しいが、われわれの闘いは、差別撤廃と平和を願う国内外の多くの人びとの想いとしっかり結びついたとりくみとして成果をあげてきた。
全国の仲間の力で、第35回香川全研を成功させ、「人権の二一世紀」を実現するための、確かで、大きな第一歩としよう。
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