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部落問題資料室
NEWS & 主張
人権擁護推進審議会による「人権擁護委員制度の改革について」の答申に対するわが同盟の見解
2001年12月21日
部落解放同盟中央本部

1,本日、人権擁護推進審議会から「人権擁護委員制度の改革について」の答申が出された。

2,これに先立ち、人権擁護推進審議会は、本年9月人権擁護委員制度の改革に関する論点項目を公表し、各方面からパブリックコメントを求めた。

3,各方面から寄せられたバブリックコメントは、25,621通、42,666件にも及んだ。わが同盟としてもパブリックコメントに応じて、以下の諸点を提起した。

 ①人権に関する理解並びに相談に関わる技能修得等を条件とする。このため、最低3 ヶ月程度の研修を義務づける。
 ②年齢やジェンダーバランスを考慮するとともに、被差別の当事者を積極的に選任する こと。(国籍条項の撤廃を含む)
 ③待遇はボランティアでなく有給とすること。また活動費を増額すること。
 ④名称は、「人権相談員」とし、基本的な任務は人権相談に応じることとすること。
 ⑤人権相談員は、少なくとも小学校区に1名配置すること。
 ⑥人権相談員の任期は4年とし、再任は妨げない。
 ⑦人権相談員は、市町村長が当該議会の同意を得て推薦したもので、上記①を終了し た者の中から任命すること。
 ⑧人権相談員は、国内人権機関としての「人権委員会」が都道府県・政令都市レベルで新設された場合、当該人権委員会に所属するものとすること。
 ⑨人権相談員に関わる予算は、国の予算から支給するものとすること。

4,今回、審議会から出された「答申」を見たとき、わが同盟をはじめ各方面から寄せられたパブリックコメントで提起された事項の一部分は取り入れられている。たとえば、「人権擁護委員の選任」に関する項目の中で、「人権擁護委員も、社会の構成を反映して様々な年齢層の者で構成されることが望ましい」、「人権擁護委員としては、その半数が女性であることが望ましく、女性の選任を一層進めるべきである」、「様々な分野で人権擁護に取り組んでいる各種団体のメンバーからも適任者の選任を図るべきである」、「我が国に定住する外国人が増加していることなどを踏まえ、市町村の実情に応じ、外国人の中からも適任者を人権擁護委員に選任することを可能とする方策を検討すべきである」等の提言がなされている。

5,また、「人権擁護委員に対する研修」の中でも「具体的な研修課題としては、人権擁護委員の使命・職務とこれに関する規律、人権保障に関する基本的法令・条約・計画、各種人権課題の状況、関係機関・団体等に関する基礎的知識や、啓発、相談、人権侵害事案の把握に関するノウハウ等が挙げられる」、「各種人権課題に関する実践的な研修を積極的に実施すべきである」、「カウンセリングにおける専門的知識・技術等も参考にしつつ、人権相談に関する留意点等について十分な研修を実施する必要がある」、「講義形式によるものの他、事例研究等の参加型研修を取り入れるなどの工夫が必要である」等の指摘が盛り込まれている。

6,さらに、「人権擁護委員の組織体の役割」の項目では、「人権擁護委員による積極的な自主運営を含め、組織体事務局や人権課題に応じた専門部会等の体制整備が図られる必要があり、人権委員会は、組織体の活動環境の整備に努めるべきである」との提起もなされている。

7,しかしながら、今回の「答申」は、基本的には人権擁護委員制度の部分的な改革にとどまっていて、抜本的な改革を求めたものとはなっていないという問題がある。たとえば、「人権擁護委員の待遇」に関する項目では、「職務の対価としての報酬は支給しない取扱いを維持することが適当である」との指摘にとどまっていて、わが同盟等が提案していた人権擁護委員を専任化にしていくことを否定している。これでは、若年・中年層の委員や、人権NGOの活動経験を持っている人を積極的に人権擁護委員として確保することは不可能で、現状と変わらないことになってしまうことは明らかである。

8,また、「人権擁護委員に対する研修」項目でも、先に指摘したように研修内容や方法の充実には言及しているが、研修期間が明確にされていないし、義務化することも触れられていない。これでは、本当に研修が充実されるという保証はない。

9,さらに、人権擁護委員が最終的に誰から任命され、いずれの機関の指導を受け、連携を図るかという点について不明確である。この点については、わが同盟をはじめ各方面から提起しているとおり、現行の法務省・法務大臣ではなく、新たに設置される人権委員会から任命され、人権委員会の指導を受け、連携を図るものとする必要がある。

10, ともあれ、今回の「答申」が、一定評価できる面を含みながら、基本的な問題点を含むものとなった理由は、人権擁護委員制度の現状に関する根本的な反省がなされていないこと、法務省があくまでも人権擁護委員を自らの影響下にとどめておこうとしているところにある。これでは、「人権の21世紀」にふさわしい、国際的な経験にも学んだ、新たな人権擁護制度の創造につながるものとなることは困難であると言わねばならない。

11, 人権教育・啓発に関わった「答申」の際にも、審議会の「答申」は、行財政的措置の必要性の指摘にとどまったが、その後の世論の盛り上がりの中で、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律の制定が実現したという経緯がある。来年の通常国会で、新たな人権擁護制度創設に関わった法律が審議されるが、この経験を踏まえ、わが同盟は心ある人びととの連携を強化し、部落差別をはじめとしたあらゆる差別の撤廃と人権確立に真に役立つ人権救済制度の構築に向けて、引き続き奮闘することを表明するものである。

以 上

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