平成13年5月25日
1 本日、人権擁護推進審議会は、法務大臣に対して、人権救済制度の在り方について答申を行いました。
2 人権は、人間の尊厳に基づく固有の権利であって、「人権の世紀」と呼ばれる今世紀にこそ、是非とも人権尊重社会を実現していかなければなりません。そのために人権教育・啓発が重要であることは申すまでもないところであり、本審議会としても、平成11年7月29日に、人権教育・啓発の在り方についての答申を行いました。しかし、残念ながら、現実には、様々な態様の人権侵害が繰り返されており、被害者に対する実効的な救済を図ることが、人権教育・啓発の充実と並んで、緊急の課題となっております。
本答申は、これに応えるために、人権委員会(仮称)という独立の機関を中心とした新たな人権救済制度の整備を提言するものであります。
すなわち、公権力によるものであれ、私人間のものであれ、人権の侵害に対する救済は、裁判所によるのが原則でありますが、それのみによっては、必ずしも効果的な救済が期待できない場合があることから、これを補完するため、簡易・迅速・柔軟な行政上の救済制度の整備が必要であります。また、行政上の救済においては、国、地方公共団体、さらに民間の関係諸機関、諸団体との密接な連携協力体制を敷くことによって、総合的な救済を図ることが可能であります。
その際、差別、虐待に典型的にみられるように、自らの人権を自ら守ることが困難な状況に置かれている被害者に対しては、特に行政上の救済を図る必要性が大きいことから、調停、仲裁、勧告・公表、訴訟援助、人権救済機関自らが裁判所に一定の行為の排除を求める等の手法や、実効的な調査権限を備えた積極的救済の制度を提案した次第であります。
さらに、このような積極的救済を担う人権救済機関は、通常の行政から独立し、職権行使の中立公正が確保された委員会組織である必要があります。これに加えて、委員会の事務を補佐する事務局体制を整備する必要があり、特に専門性を備えた職員等を全国に適切に配置することができるようにすることが肝要であります。
3 本審議会は、人権救済に係る国際的動向に留意しつつ、我が国の人権状況や司法制度、行政制度に適合的な制度を構築すべく検討を進め、本日の答申に至りました。政府において、本答申が、審議会委員の総意のもとに成り立った、いわば必要最小限の枠組みを提示したものであることに留意し、早急に新たな人権救済制度の創設に着手されることを切望するものであります。
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