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今日、部落差別の撤廃は文字どおり国際的な関心事項となってきている。とりわけ昨年には人種差別撤廃委員会が部落差別撤廃にとりくむよう日本政府に勧告し、南アフリカでひらかれた反人種主義・差別撤廃世界会議でも、「職業と世系(門地)にもとづく差別」の撤廃が国際的な人権課題として注目を集めた。
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全国水平社創立以来の反差別国際連帯のとりくみに始まり、私たちは人権の国際的基準を積極的に「受信」してきた。私たちはそれらを国内に広く普及する役割を先進的にはたし、政府による「国際人権規約」や「人種差別撤廃条約」の批准・加入をかちとってきた。そして、部落差別撤廃をはじめとする人権確立のための国内法や施策は国際基準に照らして十分なのか、という視点で活動するなかで、差別の法的な禁止や差別の被害者の効果的救済、教育・啓発の推進、被差別者の劣悪な状態への特別施策の実施が、国際的な観点からも求められることに気づいた。
その結果、日本を国際社会に誇り得る「人権立国」としていく崇高なとりくみと自覚し、国際的な人権基準を意識しつつ、「部落解放基本法」制定や、「人権教育の10年」と「人権教育・啓発推進法」の具体化、実効的な人権救済機関の設置、また狭山再審闘争での証拠開示などの要求をおこない、多くの成果がうまれてきた。同時に、部落差別撤廃をはじめとする人権確立のための私たちのとりくみは、国際社会に積極的に「発信」していくべきものであることも明らかになってきた。それは水平社創立時の「宣言」の精神を世界に伝えることであり、部落差別を「職業と世系(門地)にもとづく差別」という国際的な人権問題として位置づけ、それを撤廃するための新たな国際基準を作るとりくみである。それを通じてインドのデリット解放運動をはじめとする世界各国の仲間との連帯も深まった。
「宣言」の精神だけでなく、差別糾弾闘争や部落解放・人権政策確立を求める闘い、部落の生活環境の改善を求める行政闘争、人権のまちづくり、狭山再審闘争、「人権教育10年」に関するとりくみなどから私たちがかちとってさた多くの成果は、国外で差別と闘う人びとに新たな勇気を与えうるし、私たちが学ぶこともたくさんある。
私たちの部落完全解放に向けた闘いは、国内のみならず国外の人権政策確立に大きく寄与する闘いなのである。
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「人種差別撤廃条約」などの国際的な人権基準は、被差別者の過酷な経験と闘いをもとにして育まれてきた法制度である。したがって、それら「基準」の実施や拡充に被差別者自身が関与しつづけなければ、それらは本当に「生きた」ものにはならない。
そのため、各運動課題で人権の国際的基準を「受信」し、それらの普及と具体化を求めること、運動が獲得した成果を効果的に「発信」すること、その両方を基盤として、新しい国際基準や制度を構築していく機会への積極的関与が大切である。
今年は、人種差別撤廃委員会が「世系(門地)」に関する一般的勧告を採択する可能性がある。昨年の反人種主義・差別撤廃世界会議の成果文書や、人種差別撤廃委員会による日本政府への勧告の具体的実施を求めること
などとあわせ、これに積極的に参画することが必要だ。
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反差別国際運動(IMADR)も今年十一月、門地差別撤廃のための国際連帯活動の強化をめざし、第6回総会を日本でひらく予定である。
全国水平社創立八〇周年を迎えた今年を反差別国際連帯活動躍進の年と位置づけ、各地での創意工夫をこらしたとりくみをさらに強化するとともに、IMADRのいっそうの強化のためにも、わが同盟がより積極的な役割をはたしていくことが求められる。
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