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子どもの人権を守るために
活動をさらに強北しよう

 文部科学相の諮問機関である中央教育審議会が「教育基本法」の見直しに向けてまとめた中間報告の「素案」があきらかになった。報道によると、年明けにも答申を提出し次期通常国会での改正案の上程を検討している。
 今回明らかになった「素案」では、「現行法には、新しい時代を切り拓くたくましい日本人を育成する観点から重要な教育の理念や原則が不十分であり、見直しを行うべきであるとの結論に至った」として、見直しに向けて①国民から信頼される学校教育の確立②「知」の世紀をリードする大学改革の推進③家庭の教育力の回復、学校・家庭・地域社会の連携・協力の推進④「公一に関する国民共通の規範の再構築⑤生涯学習社会の実現⑥教育振興基本計画の策定、など大きく六つの視点が挙げられている。
 これら六つの視点のなかには、地球環境、男女共同参画社会の実現、教育振興基本計画の策定など、教育のさまざまな問遭や社会問題の解決を意図する重要なものも含まれている。しかし、これらはいずれも教育基本法を見直さなくとも実現が可能なものばかりであり、教育基本法の見直しを必要とするような教育理念にかかわる問題ではない。

 一連の教育改革をすすめる理由として、学力低下やいじめ、不登校など教育現場に山積するさまざまな問題がとりあげられ、子ども自身や家庭にその原因と責任があるかのように語る一部の有識者がいるが、子どもや親など当事者の意見を聞いたことがあるのだろうか。
 本来、学校や教育は子どもたち自身が、そして子どもを通じて親たちもエンパワーメントされる場でなければならない。
 しかし、今日の教育現場はどうだろうか。エリート主義教育の推進と個人主義競争の連続で多くの子どもたちにとってストレスを受ける場でしかなく、子どもや親たちの間に排除と分断をもちこみ、そして差別を拡大する場になってしまっているのだ。
 いま必要なのは、教育基本法の見直しではなく、憲法や教育基本法の理念や原則を教育に活かすための教育条件と教育環境の整備である。そして、子どもたちの置かれている現実を直視し、そのための努力を積み重ねることが重要なのである。

 また、私たちは、「素案」のなかで「伝統、文化を尊重し、国や郷土を愛する心」や「国や社会など『公』に主体的に参画する意識や態度の涵養」など「公」や「日本人のアイデンティティ(国や郷土を愛する心)」がことさらに強調されていることにも警戒しなければならない。
 こうしたものは、多文化共生をめざす時代にあって新たな差別を生み出すものであり、「同和」教育・人権教育のなかで、あらゆる差別の撤廃と平和・人権・民主主義を目指して積みあげられてきた豊かな実践と成果を大きく損なうものでしかない。
 「愛国心一をもち国家に忠誠を尽くす「日本人」を育成するために、教育基本法を「改悪」し国家のための教育を再興しようとする動きを断固として許さず教育基本法の「改悪」を阻止しよう。
 そして、国際人権諸条約の規定や精神にのっとって憲法や教育基本法の理解と実践をさらに深め、子どもたちの人権を守るために子どもの権利条約の具体化を求めるとりくみをすすめよう。


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