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人権週間を契機に、世界平
和と人権を各地で訴えよう

 ユネスコ憲章はその前文で「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」と宣言している。
 今一度、この前文を想起する必要がある。一九四人年十二月十日、国連の第3回総会で世界人権宣言が採択されて五十四年目を迎える。その日を記念し国連は、十二月十日を国際人権デーとし、日本では十二月十日を最終日とする一過間を人権週間と定めている。
 まもなく人権週間を迎えるが、国際情勢はイラク情勢に見られるように世界人権宣言やユネスコ憲章の精神と逆行する状況になりつつある。
 世界人権宣言は第一条で「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心を授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない」と明記されているにもかかわらず、現実政治には「理性と良心」が十分には働いていない。
 私たちは、戦争と差別は一体であり、人権と平和も一体であるとの認識のもと、差別撤廃を中心的な課題にしながら戦争への反対と平和の構築へ、たゆまぬ努力を重ねてきた。
 戦争は最大の人権侵害であり、テロも同じである。戦争行為とテロの悪循環を断ち切るためには、昨年の九・一一米国同時多発テロ事件や、その後のアフガニスタン・タリバン政権への戦争行為の犠牲者とその家族の苦悩を共有しつつ、新たな悲劇を繰り返さないために国内外の世論を喚起する必要がある。
 そのための平和と人権の基盤も国際社会には確立されている。国際情勢が緊迫した情勢にあることも事実であるが、長期的な基調は変化していない。
 国際協調と人権がキーワードであることに変わりはない。

 そもそも国際協調と人権がキーワードになったのは人類の生き残りのためである。国連には三つの大きな目標があり、平和と経済発展と人権の実現である。
 一九四五年の国連創設以来、第一期の平和を中軸に据えた時代に、逆に核兵器が拡散し、第二期の経済発展を中軸に据えた時代に地球環境の破壊が著しくすすんだ。核の拡散も地球環境の破壊も三つの共通点をもつ。
 第一に、これらの問題が悪化した場合、人類共滅の可能性が存在するということであり、第二に、自然現象ではなく人類がおこなった人工的な問題だということ。第三に、一国だけでは解決不可能な問題だということである。
 このような認識のもと、人類共滅ではなく、人類共存のためには、一国だけでなく「国際協調」が必要という共通認識が確立された。
 「国際協調」はまさに、以上のべたような人類的危機に直面したなかで出てきたキーワードである。
 また、このような状況のなかから第三期ともいえる国際連合のなかで「人権」が最重要テーマとなってきたのである。平和の維持も経済発展も一人ひとりの「人権」の実現が究極の目的であり、そのための必要条件だとする認識が広がったのである。このような認識のもとで生まれてきたキーワードが「国際協調」と「人権」なのである。
 いっぼう、同時進行的に相反する面が出てきているのも事実である。
 平和や経済の問題も、科学技術のめざましい進歩や経済の発達によって、国家は国民の安全を保障する能力を失いつつあり、「国家の安全」から「人類の安全」へ、「国民経済」から「人類の経済」へと変化してきている。

 地球環境を保つ開発という視点に立ってグローバルな協力が必要であるように、「国家の中の人権保障」から国家をこえて、「地球的課題としての人権」をどう確立していくかが問われている。日本国内でも外国人労働者問題をはじめとして、国際関係をともなう人権問題が重要なテーマになってきていることからも明らかである。
 さらに、今日の国際収支の不均衡や南北格差、経済発展と自然環境保全の不均衡などに代表される人類的危機をともなう国際的不均衡や格差をなくしていくためには、国際的課題として「国際協調」するしかないのである。
 これらの「国際協調」と「人権」のパワーをいかに活用できるかが、これからの国内での部落解放運動や人権運動の成否にかかっている。
 人権週間を契機に、これらのパワーを生かすためにも、以上のような認識のもと世界平和と人権を各地で強力に訴えよう。

 


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