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廃案を求めず! 廃案
を恐れず! 断固とし
て抜本傾正を求める!

 十二月十二日にひらかれた参議院法務委員会で、「人権擁護法案」は継続審議となり次期通常国会へ持ち越されることが決まった。これで、人権擁護法案は第百五十四通常国会に続いて、第百五十五臨時国会と、二回にわたって継続審議扱いとなった。さきの通常国会では一度も実質審議されることなく継続になったが、今回の臨時国会では二回の審議をおこなった結果、棚上げされた後に継続ということになった。
 この間の国会闘争に関する総括をしっかりおこない、来年一月二十日頃に開会予定の通常国会で「人権擁護法案」の抜本修正をかちとるための闘いの論理と陣形を強固に整えることが、われわれにとって急務である。
 今回の第百五十五臨時国会での闘争目標は、人権擁護法案の抜本修正による法制定をかちとることであった。抜本修正の要点は、創設される人権委員会の独立性・実効性を確保することであり、メディア規制につながる条項を削除することであった。そのためには、「法務省外局からの所管替え」と、日常生活圏域で機能を発揮する都道府県・政令市での「地方人権委員会の設置」をおこなうことがきわめて重要であることを指摘し、これらの問題を中心として法案全体にわたって抜本修正をおこなう必要性があることを訴えてきたところである。

 法案の抜本修正に向けて、地方・中央段階での粘り強いとりくみが展開された。二万八千を越える各界・各種団体の代表署名や地方議会決議の獲得がなされ、この力が中央集会・国会請願デモ(十月三十日)や各地実行委員会による東京集会・行動として結実した。また、十一月上旬から一か月間にわたって、ブロックごとの都府県連役員や中央オルグ団・中央役員による国会常駐行動が展開されてきた。
 このような院外のとりくみと平行して、水面下での政府・与野党折衝も精力的に積み重ねられた。この経過の途中で、法務省が十月はじめに、「メディア条項の凍結と「法案見直し条項の追加」の二点の法文修正で法案の成立をはかることを解放同盟と合意したかのような説明を与野党にして回るなど、事実無根の姑息な信義違反の行動をとったことは許し難い行為であった。それにもかかわらず、われわれは抜本修正への具体策を探りながら粘り強い折衝を継続してきたところであるが、「法務省外局から内閣府への所管替え」と「地方人権委員会の設置」問題という抜本修正の核心部分では、政府・与党との間で歩み寄りの余地を見いだせていないというのが現状である。

 このような状況のもとで、参議院法務委員会で十一月七日と十二日に、人権擁護法案の審議がおこなわれたのである。国会という公の場で初めて人権擁護法案の問題点が明らかにされ、名古屋刑務所問題などに象徴されるように、「公権カによる人権侵害が頻発」している法務省の所管では、人権委員会が真の「人権侵害の救済機関」になり得ないことを白日の下にさらけ出したのである。これは、われわれが一貫して主張してきた「独立性」の確保がいかに大事であるかということを事実をもって証明したといえる。同時に、国会での審議内容や名古屋刑務所問題がマスコミなどでも大きく報道され、人権委員会の独立性や実効性にかかわっての問題点が社会的世論として大きな注目を集めてきており、われわれの抜本修正を求める闘いは有利な条件ができているといえる。
 重要なことは、ここまで明らかになってきている「人権擁護法案」の問題点を前にして、政府・与党および野党が、政治の責任として、わが国で本格的な人権侵害救済制度としての人権委員会をたちあげるためには、従来の制度や施策の枠組みにとらわれることなく、国際的な批判にも耐え得るような「法律」を制定するという崇高な政治判断をおこなうことが強く求められている、ということである。

 われわれは、今臨時国会で「再継続」になった事態を決して楽観視することはできないと考えている。本当に、差別や人権侵害に苦しんでいる人たちを救済し、差別を許さず人権を確立していくための大切な法律である「人権侵害の救済法」が、政争の具に使われることなく、党利党略を排して真剣に議論されるべきだと考えている。十二月五日の与党三党首会談で、次期通常国会で「報道規制条項の凍結」と「見直し条項の追加」だけの法案修正で成立させることで合意し、法務省外局問題は「与党は譲らない構え」だとの報道がなされているが、断じて「最初に結論ありき」の議論にしてはならない。
 来年一月二十日頃に開会予定の第百五十六通常国会では、「人権擁護法案」の抜本修正に向けた不退転の闘いを展開していかなければならない。われわれの闘いの基本は、一貫している。人権委員会の独立性と実効性を確保すること、そしてメディア規制条項を削除することであり、これらにかかわって「人権擁護法案」全般を抜本修正することである。そのためにも、今一度、「人権擁護法案」が、部落差別をはじめあらゆる差別撤廃のための政府責任と人権確立への国際的責務から提案されてきたという背景をしっかりと認識しながら、とりくみをすすめることが大切である。これが、われわれの抜本修正に向けた基本姿勢である。
 われわれは、この基本姿勢を貫きながら、来年の通常国会でのとりくみを推しすすめていく。闘いのスローガンは『廃案を求めず! 廃案を恐れず! 断固として抜本修正を求める! 』ということである。国内人権機関の設置にかかわる国際的な潮流や国内世論と逆行するような「人権擁護法案」であってはならない。まさに、差別撤廃と人権確立に向けた歴史の歯車を逆回転させてならないのである。正念場の次期通常国会に向けて周到な闘いの準備を開始しよう。


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