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筑摩書房と話し合い
「文庫」の差別記述に関して
「解放新聞」(2003.01.20-2103)

 

 ちくま文庫・三島由紀夫著『私の遍歴時代』(三島由紀夫のエッセイ1)に「特殊部落」との記述があることがわかり、発行元の筑摩書房に文書を送り、その回答を受けて、昨年末の十二月二十五日、東京・中央本部で話し合いをもった。文書回答での「ここでの『特殊部落』の使い方は明らかに問題である」ことを確認したうえで、話し合いをすすめた結果、どうしてこのような差別表現がそのまま掲載されるにいたったかなどのシステムの再精査、今後どう対処するかなどを含め、一月をめどに回答し、それをもとに再度話し合いをもつことにした。
 これには辻本文化対策部長が対応し、筑摩書房側からは平井彰司・筑摩書房編集情報室次長、青木真次・ちくま文庫編集長が出席した。

今後の対応で協議
システム再精査、教育など

 問題のか所は、三島由紀夫が『仮面の告白』で新人デビューしたときの心境をエッセイとして書いたつぎの部分。
 「こうして私はいよいよ、少年時代からそうなりたいと思っていたところの小説家というもの、職業的文士というものになった/世間が新人を遇するその遇し方も、今のようなきちがいじみたものでなかったせいもあるが、小説家となったことで、私は一向晴れがましい思いを味わったわけではない。極端なことを云えば、たしかにどこか悪い悪いと思っていた男が、ちゃんとした一人前の病名を告げられて、病院の一室のベッドを与えられたときの落着きと居心地のよさが、一等そのときの心境に似ているだろう。ついに私も、息苦しい一般社会の圧力をのがれて、アウトサイダーばかりの特殊部落におちつき、ほっと一息ついたたのである」
 筑摩書房とも、文脈からみて明らかに問題、ということでの認識は一致している。問題は、なぜ、文脈上からも明らかに問題を含んだこの部分が、そのまま出版されたのかということと、今後の対応。
 筑摩側からは、①古典的名声を得ているものは、本文を再チェックせずに掲載する傾向もあること②最近よく見かける一片の断り書きでなく、きちんとした解説・説明文をつけたい③宣伝誌にも見解・解説などを掲載したい④「特殊部落」という言葉は、差別撤廃運動の前進などもあり現在では死語化しているが、このまま放置することは差別を再生産することになり、若い世代に与える影響を考え、きちんとした解説が必要⑤筆写が現存しない場合は、遺族側との見解の一致が必要、などの見解が示された。
 辻本文対部長からは、なぜ、こうした事態を生じたかのシステムの再精査、社員への教育の重要性が語られた。


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