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「地域福祉計画」策定を機に
人権のまちづくりの実践を

 いま、各地で「まちづくり」の論議が始まりだした。そんななか「地域福祉計画」が注目されている。計画は義務ではないものの、二〇〇三年をめどに各自治体が策定することが求められたもので、われわれは一昨年からこの計画に焦点を当てた一連のとりくみを模索してきた。大阪でのモデル事業の展開など創造あるとりくみも各地から聞こえるようになってきたものの、全体として「これから」の感は否めない。昨年末のコーディネーター養成講座の開催は、全国研究集会の主要なテーマであった「誰が旗振りをするのか?」にたいする本部としての決意でもあった。いうならば今年は「学ぶ」から「実践」への舵を切る勝負の年でもあることを確認しよう。

 これまでの学習会やシンポでも明らかなように、福祉の構造改革の焦点は「権利擁護」とそれを根底で支える「地域福祉」の実現にある。地域福祉計画はいうなれば「人権のまちづくり」の「福祉バージョン」ともいえるものであり、一般対策を活用するこれからの同和行政にとっても、重要な戦略的テーマともなる。画一的モデルで地域の個性や特性を生かし切れなかったこれまでの同和対策でのまちづくりから、校区を想定した地域のまちづくりに部落をしっかりと位置づけ、地域らしさや住民参加を試行できる意味でもこの計画づくりは意義深いものといえる。
 本年度以降、策定は急速にすすむであろう。問題はこの地域福祉計画が二一世紀の福祉政策を方向づけることは間違いないが、そのなかに部落問題が位置づけられるかである。地域社会をつくっていく住民運動としての共同闘争の視点が必要である。とりくみは地域生活のなかで差別の問題を浮上させることになる。地域での差別、疎外の困難さをともなうが、部落解放運動として重要な意味をもつことは明らかである。
 各自治体ですすみ出している「支援計画策定」や「計画」そのものへの部落差別解決の仕組みを位置づけることは当面する最大のテーマであり、委員の選出や住民参加のあり方など行政交渉を強める必要がある。
 国の「ガイドライン」は、「この計画の策定の課程そのものが地域福祉の実践である」と明記した。どんな計画ができたのかと合わせて、「どんな課程でできたのか」がある意味で地域福祉計画の神髄である。住民参加の手法についてしっかりと行政や社協に提案すると同時に、われわれ自身も地域福祉の理念をもち、これまでの「地域」のもつ閉鎖性や差別性を乗り越え、新たな「地域」のつながりの再構築のためのテーブルづくりを、部落の側から発信することが求められている。自治会や校区の福祉委員会などと協働し、まちの財産や夢を語ることで、「住みつづけたい」「このまちに生まれてよかった」と思える「まち」への思いをかたちづくり、その協働の作業を通じて差別の壁を乗り越える相互のアプローチが生まれることに期待したい。「部落があってくれたから……」と思える豊かな関係の構築の一歩をこの「計画づくり」に見出そう。

 国がこれに先だって示した「社会的援護を必要とする人びとにたいする社会福祉のあり方検討会報告書」(二〇〇〇年十二月)は、「これからの社会福祉はつながりそのものを生み出すものでなければならない」と提起した。まさにこれからの福祉は、特定の「かわいそうな人一だけの問題だけでなく、新しい「自治の創造」をはじめとした、「つながりとまちづくり」のなかで実を結ぶ。いうなれば「福祉で人権のまちづくり」である。

 


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