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「市町村合併」での部落解放、
人権政策を強化していこう

 全国的に市町村合併が活発化してきている。広域的な課題への対応、より広域的なまちづくりの推進、経費節減と効率化、医療や福祉サービスに必要な経費の増大にともなう財政負担を削減させるためにも、市町村合併はさけて通れない問題となっている。私たちがもっとも危惧しているのは、今まで築き上げてきた同和行政や人権行政の財産が自治体合併にともない、後退したり、白紙に戻されたりしないかという心配である。ポイントは、合併にともない設置される「合併協議会」(関係首長、議会代表、学識経験者等で構成)であり、この協議会で、ほとんどの取り扱いが決定されることになっており、同和行政担当部局の組織をどうするのかといったことに始まり、「人権条例」の取り扱い、同和問題などの審議会等についても、合併後の市町村に引き継がれるかどうかも決定することとなっている。私たちの態度は、市町村合併を同和行政や人権行政の後退につながらせないということは当然として、合併をチャンスにますます同和行政や人権行政を発展させようという態度で臨むべきだということである。さらに、国による中央集権を特徴とする二〇世紀型行政システムから分権型の二一世紀型行政システムへ転換させることも重要である。そのために避けて通れない問題として、地方への権限委譲とその受け皿づくりが重要であり、基礎自治体である市町村の機能と財政的
基盤を強化するための市町村合併でなければ意味がないということでもある。「特措法」以後、国集中型の同和行政から自治体集中型の同和行政へ転換しなければ、市町村合併により同和行政は埋没してしまう危険性をもっているということになる。分権時代という特徴をしっかり見据え、同和行政・人権行政を推進させるための政策を提案する私たち側の政策提案能力が今ほど問われている時代はない。

 そこで、これまで部落問題や障害者問題、女性問題など、いわば個別具体な課題による差別や人権侵害を人権問題と捉え、解決の方向を探ってきた行政的枠組みを転換し、こうした個別具体な人権侵害がいじめや虐待、自殺、ひきこもりといった地域で発生する“トラウマ”として、複合的・重層的な差別や人権侵害に発展してきていると捉え、分権型人権行政として、それを地域コミュニティとして受け止め、解決を図る総合的な地域人権行政のシステムに改革することが求められている。いわば人権侵害による合併症に対応する人権行政を確立しようということでもある。
 これまで同和対策事業を中心とした「特措法」時代は、個人給付事業が主流として展開され、個人の諸権利の保障にウェイトが置かれたことはいうまでもない。こうした個人給付を中心とした同和行政から、ポスト「特措法」時代は、地域で排除されたり、忌避されるといった人と人との関係を阻んでいるコミュニティに着目し、共同体の構成員として、豊かな人間関係を阻む制度や施策を改革する市民参加による部落解放運動が重要だといえる。行政ではできない、または手が届かない、「真に必要な人に、必要なときに、必要なサービスを」提供するための公益法人やNPOの存在が重要となってきており、そこに部落解放運動も参画しようという試みが全国各地で広がってきている。

 市町村合併問題は、同和問題解決の責任は行政にあることを白紙に戻したり、後退させたりすることではない。市町村合併こそ地域コミュニティ再生のチャンスとして捉え、行動することである。部落差別の撤廃へさらに奮闘しよう。

 


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