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人権政策検討委員会の「3
報告案」を各級機関で検討し、
内容を深めていこう

 昨年十月に鹿児島でひらいた部落解放第36回全国研究集会で、三つの重要な報告案が発表された。それは、部落解放運動の新たな方向を示すために、中央本部に設置した人権政策検討委員会の三つの作業部会がまとめあげたもので、「新同和行政推進施策基本方針(案)」「日本の人権法制度確立基本方針(案)」「人権のまちづくり運動推進基本方針(案)」として提案された。
 これらの三報告案は、決して個別バラバラに提案されているのではなく、「部落解放の展望を人権が確立された民主社会の中に見いだす」とした部落解放運動の綱領的な戦略課題を三つの側面から言及したものである。歴史的な変革の時代と「法」失効後の部落解放運動の基本姿勢と基本方向を打ち出したものであり、すべての機関と同盟員が徹底的に報告案を読みこなし検討し、さらに内容を深めるとりくみをおこないながら共有していかなければならない。

 「新同和行政推進施策基本方針(案)」は、三十三年間つづいてきた「特措法時代」の同和行政の総括をふまえるなかから、今後は「人権行政としての同和行政の展開」を求めていくことを明らかにしている。そして、「五つの目標」と「三つの柱」を提示して、新同和行政の性格付けをおこなっている。
 五つの目標とは、①部落差別をはじめいっさいの差別を撤廃していくことをめざす行政②すべての市民が自己実現できることを支援する行政③部落差別の撤廃や人権確立を妨げている制度や風習を改めていく行政④憲法や国際人権諸条約を日常生活の場で実現していくことをめざす行政⑤人権行政発展の重要な一翼を担っていく同和行政の推進、である。
 三つの柱とは、①すべての市民の差別意識の解消・人権意識の高揚②部落出身者の自立と自己実現の支援③人権尊重のまちづくり-コミュニティ支援、である。

 「日本の人権法制度確立基本方針(案)」は、部落解放運動八十有余年の闘い、とりわけ「部落解放基本法」制定要求と反差別国際活動の闘いが切りひらいてきた日本での人権政策の経過と到達点をふまえながら、十四点にわたって政策提言をしている。
 すなわち、①第二次世界大戦をはじめとする過去の侵略戦争での人権侵害にたいする明確な謝罪と補償を実施すること②国際的な差別撤廃・人権確立に向けた潮流に合流すること③とりわけアジア・太平洋地域での人権確立に合流し貢献していくこと④国内に存在している差別と人権侵害を撤廃するための法制度を整備すること⑤悪質な差別や人権侵害を禁止するとともに、被害者を救済するための機関を設置すること⑥差別を撤廃し人権を確立するための教育・啓発を充実すること⑦戸籍制度に代表される、差別撤廃と人権確立を困難にしている風習や制度を抜本的に見直すこと⑧差別を撤廃し人権行政を推進していくために国と自治体で体制・方針・法整備などをおこなうこと⑨国と自治体の議会のなかに、差別撤廃・人権確立委員会を設置すること⑲法科大学院、司法修習のなかで、国際人権を必修にするとともに、裁判官などのなかでの人権研修を系統的に実施すること⑫民間企業でも部落差別撤廃・人権確立に向けた体制の確立、基本方針の策定、業務の見直し、研修の推進などにとりくむこと⑫労働組合、農・漁協や社会福祉協議会、PTAなどでも部落差別撤廃・人権確立に向けた体制の確立、基本方針の策定、業務の見直し、研修の推進などにとりくむこと⑬宗教団体やメディア関係でも部落差別撤廃・人権確立に向けた体制の確立、基本方針の策定、研修の推進などにとりくむこと⑭差別撤廃・人権確立をめざす人権NGOの役割を評価し、積極的な支援をおこなうとともに、ネットワークを構築すること、である。

 「人権のまちづくり運動推進基本方針(案)」は、部落解放総合計画運動の成果を継承・発展させるとりくみとしての「人権のまちづくり」運動を提唱している。校区・行政区を基盤にして部落内外の広範な団体・個人による住民主導の「まちづくり協議会」を設立して運動を展開することと、人権行政の推進力としての役割を明確にしている。そして、部落解放運動の新たな活力源としての「人権のまちづくり」運動の意義は、つぎの七点であることを明示している。
 すなわち、①居住運動としての部落解放運動の利点と経験を活かせる運動②部落差別撤廃・人権確立の「条例・宣言」を具体化していく運動③地域共同体の差別的な体質・土壌を具体的に改革していく運動④部落内外の共同闘争を対等・平等の原則により実質的に前進させる運動⑤地方分権化と住民参加の地方自治を現実化する運動⑥市民の政治参加を促進し具体化する運動⑦人類が到達した最善のものを地域生活のなかに活かす運動、ということである。

 このような概要で提起されている「三報告案」についての徹底討議が、いまほど必要とされている時期はない。
 「法」失効ということで一部の行政にみられる同和行政の混迷状況やこれを機に一気に同和行政を打ちきろうとする反動勢力の策略があるなかで、部落解放運動こそがその明確な方向を押しだしていくことが肝要である。とりわけ、日本共産党の「身代わりオンブズバーソン」活動やそれに追随する傀儡雑誌によって、悪質な「解放同盟潰し」の策動やキャンペーンがおこなわれている状況のもとでは、部落解放運動の基本姿勢や基本方向を真正面から打ち出して社会的に対決していくことが重要である。
 五月の第60回全国大会に向けて、人権政策検討委員会の「三報告案」をさらに深めて、今後の部落解放運動の揺るぎない方向性を確立していくことを全同盟員に訴える。

 


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