抜本修正求め県民集会
2本の講演など中心に
「解放新聞」(2003.04.28-2117)
【新潟】「基本法」新潟県実行委が3月21日、「人権擁護法案」の抜本修正を求める県民大集会を県教職員組合会館でひらき、170人が参加。法案にたいするさまざまな立場からの懸念を聞き、抜本修正へのとりくみを強化する決意を固めた。
集会では、金子匡良・慶応大学講師が「人権擁護法案の評価と問題点」と題して、基調講演。「公権力の相次ぐ人権侵犯と『人権擁護法案』」と題して福島瑞穂・弁護士が特別講演をおこなった。
金子さんは 人権委員会のしくみや権限、救済手続きの流れを説明。独立性がない理由を列挙するとともに、国籍差別にふれていないことや、公権力の人権侵害への調査権限がないことなどを指摘した。
福島さんは、アメリカのイラク攻撃について国会報告。狭山事件についても弁護団の動きを紹介、「開示されてない証拠を開示させたい」と決意を語った。
山積した人権課題を前に
「人権擁護法案」抜本修正を
福島弁護士は、「人権擁護法案」について、名古屋刑務所の虐待死事件を例にあげ、「83年からの死亡事案を法務省に聞いたら、3年分しかないといわれた。それでも5人が死亡し3人が病院に運ばれていた。追及すると、法務省は『自傷行為』として調査もせず、1月にやっと捜査し、拷問死であることがわかった。受刑者ごとにあるはずの視察表も『ない』といわれた。公文書がなくなるなんて、とんでもないことだ。刑務所の人権侵害は、闇に葬られてきた」と語った。
そして、刑務所のなかは、弁護士会もなかなか入れず、議員も予約しないといけない。予約なしでの査察には大変な効果があり、それができる体制でなくてはならない。また、拷問部屋の存在も明らかになった。法務省は検察官庁であり、法務省の外局では絶対に何もできない。抜本修正をかちとり、実行力ある人権委をつくろうと準えた。
パネルディスカッションでは、片岡中執をコーディネーターに、金子さん、福島弁護士、アムネステイ・インターナショナルの和田光弘さん、新潟ヘルプの会の横山陽子さんがそれぞれの立場から意見をのべた。
和田さんは、刑務所内での非人道的あつかいを紹介し、「難民問題でも、条約では国に帰してはいけないと主張したら法務省は『確立した国際法ではない』などといっていた。人権を守ろうという姿勢がない。その法務省が人選や予算を管轄し、人事交流もあるようでは独立した機関とはいえない」と訴えた。
横山さんは、「新潟にも日本人と結婚した外国籍女性が増えている。男性と知り合うのは『サービス業』。彼女たちが夜の男社会を支えている。日本の男と結婚すれば生活が安定すると思い結婚するが、離婚すると在留資格がなくなる。DV防止法はあってもビザの関係で公の場に訴えられない。日本人男性とのあいだに生まれた子どもも、離婚後に何の公的援助もなく見捨てられている。入管法自体に人権侵害がある。入管も法務省の管轄だ。外国籍住民の実態調査と人権救済機関は第三者機関としての独立が必要だ」と訴えた。
金子さんは、「まずは法務省からはずし、人事院や内閣府の所管にすべき。また、法案に教育の項目がない。法務省は、法案の概要を決めた。差別されたあとの救済が擁護法なら、差別をさせないための方法は人権教育。これらは表裏一体のものだ」と指摘した。
福島さんは、「人権擁護法は対象の規定をなくし、きっちりとした個別法をつくらなくてはならない」と強調した。
片岡中執は、「人権救済と同時に差別禁止と差別しない教育も必要。5人の人権委では無理だ。しかし、法務省が強引に押し切ることも考えられる。全国的な運動で抜本修正をかちとろう」としめくくった。
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