教育基本法の改悪を許すな
運動拡大へ集会とデモ
「解放新聞」(2003.06.30-2126)
「教育基本法」の改悪に反対し、6月14日午後、東京・芝公園23号地で6・14中央集会をひらき、4000人が参加。集会アピール
「変えることより生かすこと 教育基本法の改悪を許さない運動をひろげよう!」を採択し、日比谷公園までデモ行進した。
主催は、フォーラム平和・人権・環境、人権・民主主義の教育の危機に立ちあがる会、子どもの人権連、子どもと法21、退職婦人教職員全国連絡協議会、日本教職員組合で構成する「教育基本法改悪ストップ!実行委員会」。
主催者あいさつで、日教組の榊原長一・委員長は、「いまの日本は『構造改革』の名のもとに国家主義と新自由主義により国家改造がすすめられている。教育の面でもそうだ。新自由主義は教育の民営化、規制緩和、徹底した競争主義という形であらわれ、国家主義の典型は『日の丸・君が代』強制だ。それらの総仕上的な意味をもつのが『教育基本法』の改悪。改悪を許さないという、大きな大きな国民世論の形成を」とよびかけた。
来ひんからは、民主党の横路孝弘・副代表、社会民主党の福島瑞穂・幹事長、日本民主教育政治連盟の山元勉・会長(衆議院議員が連帯し闘う決意を語った。
人間を分断し愛国心を使って統合
東京
中教審は政治的
子どもの権利条約とも対立
基調報告した日教組の中村譲・書記長は「学習の主体者・子どもは『中教審』から意見聴取されたこともない」と指摘。「『中教審答申』ははじめから『教育基本法』を変えることが前提の審議、ひじょうに政治的」とのべ、「基本法」改悪と、義務教育費国庫負担金制度の見直しに、「怒りをもって反対を」と訴えた。
「平和・人権・民主主義の教育の危機に立ちあがる会」の熊谷一乗さんは、「改悪の企ては、国家、具体的には特定のグループの政治的経済的な目的のため」と指摘。「『基本法』の精神を教育の現場のすみずみにまで生かそう」と訴えた。
退婦教の上田京子さんは、マスコミへの投稿、誓願署名など運動を全国展開していることを報告。「連動に年齢制限はない。退職してもがんばる。教育の憲法を守るためにともにがんばろう」とよびかけた。
「子どもと法21の中村元彦さんは「国が『愛国心』『国を愛せ』というのは、愛される自信がないから。愛してもらえる政策をとって『どうだ、愛せよ』というような国になってもらうようにがんばりたい」と語り、決意表明した。
日退教の関嘉夫さんは、衆・参両院の90%以上の議員が有事3法に賛成した情勢に強い危惧の念を表明。「『基本法』と平和憲法を守る。孫たちのためにも、みずからのためにも断固闘う」と決意を語った。
子どもの人権連の森田明美さんは「日本は『子どもの権利条約』に真っ向から対立する政策をつぎつぎととっている」とのべ、「子どもの権利条約」第2回日本政府報告書がまもなく国連で事前審査され、来年1月に本審査されることを報告。国会審議中の「次世代育成支援推進法案」にも「子どもたちの多様な育ちを認める文言はない」ことを指摘し、「『基本法』を推し進める運動を」と訴えた。
閉会あいさつで、平和フォーラムの太田敏夫・副代表は「いま教育の荒廃があるとすれば、崇高な教育理念を掲げる『基本法』を実質画餅に等しく棚上げし、効率・競争優先の教育行政をしてきたためにほかならない」と指摘。「改悪や有事法制はまさに国民統制、軍事増強の一環。しっかりと胸にとめ、現行『基本法』の理念を生かす運動をいっそう強めよう」と訴えた。
大阪
選別して教育投資
「非才、無才は実直な精神を」と
大阪では6月1日に「どこが悪いねん! 教育基本法~改悪を許さない大阪集会」を、教育基本法改悪反対大阪集会実行委員会が主催し、市民211人が結集した。
一部では高橋哲哉・東京大学助教授が「『心』と戦争-教育基本法改悪が担うもの」をテーマに講演をおこなった。高橋哲哉さんの講演を要約する。
◇
「教育基本法」改悪案は有事3法案、個人情報保護法案、国立大学法人化法案などと深くリンクした問題。現行の「教育基本法」が深く論議されないまま「改正論」の方向性が出てしまっている。
「改正論」の思想性は「愛国心教育」と「選別教育」の二つを柱にすすんでいる。そこには国家主義という政治の要求と、財界の「経済のグローバル化にともない、それに勝つための有用な人材をふるいにかけて、教育投資しよう」という要請がある。
もう一つ、「新しい日本の歴史をつくる会」が「基本法」改正の動きに転換している。
「教育基本法」は、必要だという事情がある。45年まで教育を支配していた教育勅語、天皇を中心とした神の国を強化するための修身という道徳科目、それは日本人を支配してきた。日本を民主主義の国家として再生するためには教育勅語を否定しなければならず、だから、「教育基本法」が必要だった。これまでくり返し、「教育基本法」を国家主義的なものに改正しようとする動きはあった。その動きがあるかぎり「教育基本法」は必要。
河村健夫・文科省副大臣は「平成の教育勅語を念頭に置いた」基本法見直しだと発言している。
2002年4月に全小中学に配布された心のノートのメッセージは「愛国心」である、改正論者のもくろみどおりいけば、「改正基
本法」は教育勅語、修身は心のノート、憲法を改正日本国憲法という3段構えで国家主義をおしすすめようとしている。
「改正憲法」は身体、「改正教育基本法」は心という国家像と国民精神をつくろうとしているのだ。
自由化、個性化という美名のもと、早期に子どもたちのなかからエリートを見つけ出そうとしている。エリートは100人に1人でいいのだ。非才、無才は実直な精神を有していればいい、それが心のノートの役割だ。選別教育がどのように矛盾なく国家戦略のなかに統合されるかというと、国民のなかに分断を強いるとき、文句をいわずに、従順に日本を支えましょうと、競争心を強いられた人びとの統合の装置として愛国心を使うもの。教育を国家に従属させようとしている。戦前のように「教育を国家に返せ」、北朝鮮の脅威もあるし「そろそろいいでしょう」という国家を国民が容認するのか。
教育改革基本法改正は二つに収れんされる。一つは列強の一員としての新たなる富国強兵か、もう一つはこれが出発点となり、「基本法」が必ずしも実現されてこなかった、いまいちど再生させようというもの。
「教育基本法」にはべつの論として限界もある。「国民教育」というワクをつくっている。国際条約や子どもの権利条約に則り、マイノリティや民族教育などを保障する条項も必要である。
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