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文学賞で表彰式
入選者が受賞の喜び語る

「解放新聞」(2003.08.04-2131)

 

 第29回部落解放文学賞の表彰式と懇親会を7月12日、大阪・三井アーバンホテルベイタワーでひらき、入賞者、選者、文学賞関係者ら85人が参加した。今回の文学賞は7部門、計162篇の応募があり、人間解放に向けた文化創造の営みが編まれた。
 組坂委員長もかけつけ、「平和、人権を洞察し時代を撃つ文学の力を創造しよう」と、応募に挑んだ入賞者にお祝いをのべた。各部門の選者は、寸評と日本の国権主義の足音が響くなか、人間の魂に迫る文学で反差別の砦を築こうとする「部落解放文学賞」のはたす役割の重要性を語った。
 今回の入選作品は入選が識宇部門2篇、小説部門1篇、詩部門1篇、評論部門1篇。佳作が識宇部門1篇、小説部門2篇、詩部門2篇の10作品。受賞者は創作の苦悩を語り「これからの励みになる」と、喜びを語った。


空疎な時代、部落解放文学賞の意義を刻む
選者の言葉

想像力が現実を越えた
詩部門 金 時鐘

 熱い共感をもってお祝いしたい。伊藤さんの作品。克明に書いていながら書いた人の想像力が現実を越えた現実を裏打ちしている。散文ではあるが優れて詩になった。社会的、普遍的共感を生んだ。石村さんの作品に共感するのはアメリカのアフガン侵攻をあげながら「それでもお腹がすく」と苦悶している点。憂鬱な不条理を金輪際覚えていこうという意志がみえる。
 29回文学費の詩部門は変わってきた。最終選考の半分が部落外からの応募だ。部落解放の裾野、新しい視野を広げていきたい。

言葉により世界を獲得
識字部門 鎌田 慧

 毎年どういう作品が来るか楽しみだ。表現には魂があらわれる。言霊として言葉によって世の中と向かい合っている。識字作品にはプロの物書きが忘れがちなところを打たれる喜びがある。生活のなかで、現実と向かい合うなかで、余裕とユーモアを生みだしている。
 石川一雄さんという文字を奪われた人が、文字を駆使して人を脅迫するというのは権力側の発想。なんとか言葉を獲得しようとしている人の決定的な思いがわからない。人間として根本的なものは言葉によって世界を獲得するということ。
 部落に残っているにんげんの根源的な語りを掘り起こし、どんどん空疎になる社会の文字と対決しよう。

本物を育てる仕事こそ
戯曲部門 岩田 直二

 賞に値する作品がなく残念だった。戯曲は芝居とつながる、芝居の土台になる創作作品。現在、芝居が文学と離れている現状がある。芝居は舞台でみるというところに重点が置かれる、観念的、感覚的に凝縮されたもの。現在の日本の風潮は感覚的に面白ければすべていいというものに陥り、芝居が言葉や文学から離れている。こういう状況が戯曲を弱くし、貧弱化させていく。
 これから戯曲をつくるのはたいへんな仕事だ。こういう時代、本物と偽物をみわけ、本物を育てる仕事が重要になる。本物が多くなることを願い、来年の30回をバネに大きく発展させたい。


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