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狭山再審へ補充書提出
契機に闘いを強化しよう
「解放新聞」(2003.09.22-2137)

 

 狭山弁護団は、9月30日に最高裁に補充書を提出、永井調査官と面会する。補充書では、自白を徹底して再吟味する必要があること、自白に信用性がないことを総合的に評価しなければならないこと、再審の理念をふまえて事実調べ、再審開始をおこなうべきことを主張する。また、殺害方法について裁判所の認定が後退していること、異議申立棄却決定が依拠した検察官提出の石山鑑定の誤り、万年筆など3物証の疑問、捜査の問題、筆跡・国語能力の問題などを中心にあらためて石川さんの無実を明らかにし、再審棄却決定、異議申立棄却決定を取り消して、事実調べをおこない、再審を開始すべきだと強くせまる。証拠開示についても、最高裁に開示勧告を申し入れ、東京高検、最高検の担当検察官に証拠リスト開示を強く求めて今後も交渉することにしている。くりかえしいってきたように、補充書提出以降は最高裁がいつ決定をおこなってもおかしくない段階にはいる。特別抗告が2年をむかえる来年はまさに正念場といわねばならない。
 東北ではじめての狭山住民の会が、6月に青森県で結成された。この3か月あまりで宮崎、福岡、大阪とあいついで住民の会が結成され、現在28都道府県、119団体になっている。狭山事件40年の節目をふまえ、住民の会結成や各地での集会ももりあがっている。さらに原点にかえった総学習をすすめ、住民の会をひろげよう。
 中央本部では、弁護団が補充書を最高裁に提出する9月30日に報告集会をひらく。それをもちかえって、寺尾判決から29年をむかえる10・31には、各地で集会や学習会のとりくみを展開してもらいたい。弁護団補充書の学習、狭山パンフ臨時号や写真パネルを活用した学習・教宣を各地ですすめよう。最高裁、最高検へ事実調べ・再審開始、全証拠開示を求める要請ハガキを集中しよう。
 また、衆議院解散・総選挙にあたっては、狭山事件をはじめとするえん罪・誤判をなくすためのとりくみ、司法改革を求め、証拠開示の公正なルール化をすすめることを候補者に要請していくことも重要である。狭山40年の総括と証拠開示ルール化を柱に各地でとりくみを強化しよう。

 来年にかけて政府がすすめる司法改革で、公正な証拠開示のルール化を求めることはきわめて重要である。7月に閉会した156回通常国会ですでに司法改革の一環として「裁判迅速化法」が成立したが、刑事裁判を迅速にすすめるためにも、証拠開示の確立や捜査の可視化が不可欠である。審議会の最終意見も「刑事裁判の充実・迅速化」をはかるといっているのであり、弁護側の権利を十分保障せずに、ただ1審を2年以内にといった「拙速」では誤判が起きる危険がある。
 私たちは、狭山事件の1審裁判がわずか5か月、11回の公判で、十分な証拠調べ、証人尋問もなされずに死刑判決が出されたことを思い出す必要があるだろう。石川さんの取り調べの状況も、家宅捜索・万年筆「発見」の経過も明らかにされず十分調べられないまま、「自白」しているということに依存した誤判であった。
 また、市民が参加して審理する「裁判員制度」が来年の通常国会で法案が出され数年後には実施される。私たち市民が責任をもって裁判に参加し、集中して公平・公正な審理がおこなわれるためにも弁護側の権利の保障と証拠開示の公正なルールは不可欠である。
 そして何よりも狭山事件をはじめ多くのえん罪を訴え、誤判からの救済を求める多くの人たち、弁護団が切実に証拠開示を求めているということである。検察官が狭山事件にかかわる開示していない証拠をふくめ積み上げると2~3メートルもの手持ち証拠を持ちながら、事件から40年経っても開示しない、証拠のリストを見せることさえ拒んでいるなどということは市民常識として信じがたいことであろう。真実究明、正義の実現という姿勢とはとうていいえない。
 弁護側が証拠開示を受ける、検察官手持ちの証拠を閲覧・利用できるルールをつくることは、狭山事件だけでなく、えん罪を訴え再審を求めている事件にとって大きな意味をもつ。なんとしても公正な証拠開示の法制化を実現し、狭山事件の証拠リスト開示、全証拠開示と公正な裁判を実現しよう。
 また、証拠開示のルール化は国際的な人権基準、勧告に応え、世界的に通用するものでなければならない。国連の自由権規約委員会は、弁護側が捜査機関のすべての証拠にアクセスできる(閲覧・利用できる)よう法律と実務で保障するよう改善を勧告している。同じ当事者主義をとる英米と比較しても証拠開示制度が遅れていることや国連の勧告をふまえて、早急に公正な証拠開示ルールを日本でも確立すべきなのである。

 では、政府の司法制度改革推進本部での証拠開示ルール化の検討作業はこのような意義をふまえたものとなっているのだろうか。来年の通常国会での法案提出に向けて、政府の司法制度改革推進本部では、事務局の作成した証拠開示についての2つの案をたたき台として検討している。
 少なくとも、証拠リストを弁護側に開示することを義務化し、弁護側の開示請求権を認め、警察・検察の証拠隠しにたいするペナルティを設けるなど、「公正な証拠開示を求める会」の提起する証拠開示法制要綱を取り入れたルールをつくるべきである。
 司法制度改革推進本部(裁判員制度・刑事検討会)は、これまでの誤判やえん罪の実態を真摯に反省・総括し、「公正な証拠開示を求める会」の法制要綱案をぜひ取り入れて、証拠開示の公正なルール化を検討すべきである。
 現在、えん罪にとりくむ弁護士や法学者、ジャーナリスト、文化人らにより結成された「公正な証拠開示を求める会」の「証拠開示法制要綱」を法律化することを求める署名(団体署名と個人署名の2種類)が各団体でとりくまれ、ぞくぞくと集まってきている。
 まもなく臨時国会が始まろうとしている。来年1月からの通常国会で法案が提出される予定であることを考えれば、臨時国会での議論、世論の喚起は重要である。当面まず、証拠開示の公正なルール化を求める署名を集めきり、国会議員や司法制度改革推進本部に証拠開示の公正なルール化を強く要請しよう。


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