第26回全解保の成功へ
実践を積みあげ参加を
「解放新聞」(2003.10.06-2139)
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ここ5年間、自殺者が連続して3万人を超えている。しかもそのほとんどが人知れぬ死なのだ。理由はいまさらのべるまでもないが、そんななか残された子どもたちはどんな生き方を強いられているのだろうか。いま手元に数字はないが、欧米にはこんなにひどい状態はないという。要は、わが国の人権状況の低劣さがもののみごとに示されているとみてよいのだが、そんななか児童虐待にかかる児童相談所への相談件数もここ7、8年激増しているという。
たとえばこうだ。95年に2700件ほどであったものが97年には5400件、その2年後の99年には1万2000件、さらにその2年後の01年には2万3000件にまで上っているという。いままで社会的に隠されていたものが、ようやく表面化し公然化するようになってきたのだ。
10月11日から3日間、香川県丸亀市で第26回全国解放保育研究集会がひらかれる。実に伝統ある研究集会といってよいし、そこからどれだけの研究成果や実践が生み出されてきたかは計り知れないのだが、奇妙なことに児童虐待の問題がこの研究集会で議論の狙上に上がったことはかつてなかったといってよいのだ。それがようやく、今年から「子育てネットワークづくり」という分科会の、討議の柱の一つとして入ることになったのだ。
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先に示した各年ごとの数字をいま一度見ていただきたい。要するに倍倍ゲームなのだ。現年度である今年はどうなのだろうか。増えていてほしくないし、むしろ減っていることを心から願うほかないのだが、実際はどうなっているのだろうか。とりあえずこんな数字が奈良県にかぎってはある。
「主な虐待者」の内訳についてなのだが、02年の場合で「実父43、継父21、実母228、継母1、その他14。計307」だったというのだ。何と悲しい数字だろうか。虐待者の4人に3人までが母親だという。「子どもを一人もつくらない女性が好き勝手、自由を謳歌して、楽しんで、歳とって……税金で面倒みなさいというのは、本当におかしいですよ」といってのけた森元首相なら「今時の母親には母性のかけらもないのか」なんぞというのかも知れないが、そもそもそういう発想自体が間違っているのだ。
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「子どもは社会の鏡」ともいわれるが、その母親も父親もそういう意味では「社会の鏡」そのものなのだ。核家族化がいわれて久しいし、少子・高齢化はますますすすむばかりだ。部落の場合それがもっとも激しいというべきか、青年層の流出に歯止めがかかららないばかりか、祖父母の世代と父母たちの世代が狭い公営住宅の壁で区切られてしまったなかでは、子育てのプロともいうべき高齢者たちの知恵が、伝達不可能な状態にさえなっているのだ。先の母性の問題にせよ、生活に安心と安定があってこその母性ということにもなってくる。虐待者のなかに父親が少ないというのも、早い話、子育てに参加しようとしない男たちに子を虐待しなければならない必然性など、生まれてくるはずはないというにすぎないのだ。
複合差別という捉え方が何より重要ということになってくる。と同時に、厚生労働省がすでに打ち出している「新エンゼルプラン」や、01年に政府が閣議決定した「仕事と子育ての両立支援策の方針について」にもとづく「待機児童ゼロ作戦」とも連動させながら、部落内外を貫く「地域子育て支援センター」の整備へと突きすすんでいかなければならないのだ。
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