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今秋各地で有意争を強化し
人権委員会設置をかちとろう
「解放新聞」(2003.10.20-2141)

 

 昨年の3月末日をもって同和行政の「特措法時代」は、33年間の幕を閉じた。われわれは、この事能を「2つの転換」として位置付けてきた。1つは、従来の特別対策的手法を中心としたやり方から今後の同和行政は一般対策的手法を活用したやり方に移行していくという「手法的転換」である。もう1つの意味合いは、「発展的転換」ということであった。すなわち、従来の同和行政が、「格差是正の行政」(目的の媛小化)、「同和地区の行政」 (対象の限定化)、「特別対策の行政」手法の偏重化)として展開されてきた限界を打ち破り、人権行政として同和行政を発展させて いくという転換であった。
 この「2つの転換」は、特措法終結1年半の経過の下で、全国各地でしっかり根づいて いるといえるだろうか。残念ながら、決定的に不十分な状況であると言わざる得ない。多くの自治体で、「発展的転換」の意味を正確に捉えきれずに、部落問題などの個別課題を具体的にとりくむ施策を明示することなく抽象的な中身のない人権行政を唱えたり、「同和」という用語を使ってはならないとか「同和地区」を特定できないとかの勘違いをしたり、一般施策を活用した同和行政の推進方策が分からないというような混乱と躊躇が存在している。あまつさえ、ごく一部のところでは、「転換」の意味をまったく理解できていないか、もしくは意識的な曲解にもとづいて、同和行政そのものを終息させるという差別撤廃への行政責任を完全に放棄する反動的な対応も存在している。

 なぜこのような事態が起こってきているの か。理由は3つである。第1は、「特措法」時代33年間の同和行政の総括がしっかりとで きていないことである。第2は、新たな同和 行政での一般施策活用の方策が確立していないことである。第3は、人権行政の基本方向 が曖昧模糊としていることである。
 われわれは、これらのことについてすでに 「新同和行政推進施策基本方針」で、一定程度明らかにしてきた。これまでの同和行政の 総括と今後の一般施策活用事例を明らかにするとともに、人権行政としての同和行政の展 開の方向を4点にわたって提示してきた。す なわち、第1に、部落差別をはじめいっさいの差別を撤廃していくことをめざす行政。第2に、すべての市民が自己実現できることを支援する行政。第3に、部落差別の撤廃や人権確立を妨げている制度や風習を改めていく行政。第4に、憲法や国際人権条約を日常生活の場で実現していくことをめざす行政、ということである。
 これらの基本方向を、各自治体で、新同和行政・人権行政確立への礎として打ち固め、それぞれの自治体での具体的な差別撤廃・人権確立への施策を明確に打ち出していくことが必要である。
 「特措法」失効後の同和行政のあり方につ いて、混乱や躊躇を鷹揚に看過する時期はもうすでに過ぎさっている。この時期に、新同和行政・人権行政を盤石のものとして確立しなければ、いままでの同和行政の成果を水泡に帰す結果を招くことになる。
 したがって、この時期に徹底的に各地での行政闘争を強化し、同和・人権行政の確立を勝ちとっていかねばならない。この時大切なことは、われわれ自身が、「特措法」時代の感覚から脱却し、「部落解放の展望をこうした自主・共生の真に人権が確立された民主社会の中に見いだす」とした綱領的立場を徹頭徹尾貫くことが重要であり、このことを抜きにして行政姿勢を変えることはできないということを肝に銘じておくことである。

 衆議院解散・総選挙という状況にたいして、われわれは「部落解放・人権政策確立に向けたマニフェスト策定にあたっての要請書」を各党に提案して、部落解放運動が政治に何を求めているかを明らかにしてきた。国政に要求している内容は、地方自治体にも通底する内容である。
 各地方自治体でも行政闘争を強化し、明確に同和・人権行政の基本方向を確立していくために、つぎのとりくみに留意してとりくみをすすめることである。
 第1は、差別撤廃への具体的な政策を立案するためには、その実態とニーズを正確に把捉することが必要であるが、隣保館の基本事業である「(1)社会調査及び研究事業、(2)相談事業」を活用して、実態調査を現実化することである。
 第2は、地域福祉計画や人権教育・啓発推進法にもとづく基本計画・行動計画の策定作業を推しすすめるなかで、一般施策を活用した部落問題や人権課題の解決に向けた具体的な人権政策を確立していくことである。
 第3に、「人権擁護法案」は廃案にはなったが、抜本修正の闘いのなかでめざしてきた「地方人権委員会」の設置を各都道府県で先行させた形でとりくみ、人権侵害救済のシステムを実効力あるものとして地方自治体から立ち上げていくことである。すでに、各ブロック別の全国人権同和行政促進協議会との意見交流会では、地方人権委員会設置への積極的な議論がおこなわれており、鳥取県や大阪府では具体的な検討委員会が開始されている。
 以上のような点に留意して、今秋期に行政闘争を徹底的に強化し、同和・人権行政の早急な確立をはかり、地方人権委員会設置などを中心にした人権確立のシステムを立ち上げていこう。


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