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「被差別部落女性に対する差別-女性差別撤廃条約 Ⅰ.要請書 被差別部落の人びとは世系に基づく差別(カースト差別と似たもの)を受けており、特に、被差別部落女性は部落の男性やマジョリティ女性と比べるとより劣悪な状況に置かれています。女性差別撤廃委員会への政府報告書でも、1993年に行われた部落に関する全国的な実態調査[1]のどちらにおいても、部落女性の実態は把握されていません。その結果、いまだに部落女性の正確な実態が把握されず、そのため実態を改善する有効な施策が取られていません。そこで、我々は、日本における被差別部落女性の実態調査を実施し、それらの調査結果をもとに統計・分析をおこない、次回の報告書に反映することを政府に要請します。また、女性差別撤廃条約の第4回・5回政府報告書に対して、特に以下の点について具体的な記述を求めるとともに、同条約にてらし政策の改善を求めます。 1. 国の政策・方針決定過程への被差別部落女性の参画について(第4条関連) 政府報告書の中に「審議会委員に女性の登用目標達成年を定め・・・」とあるが、具体的にどういう内容なのか不明である。また、政府は委員会において部落女性や他のマイノリティ女性を含む差別を被っている当事者の声を正確に反映できるよう明確な措置を講ずるべきである。市町村においても同様の措置を講ずるべきである。 2. 被差別部落女性の不就学問題(第10条関連) 資料表①のように、部落女性の不就学率は6.4%(男性は3.1%)で、大学進学率は部落女性が2.0%(男性は6.3%)となっている。このように被差別部落内においても、男女間での進学率の格差が存在する。にもかかわらず、第5回政府報告書第1部総論(2)では女性の大学進学率は上昇傾向にあると明記されている。 また、資料表②では、保護者の子どもへの進学希望に子どもの性別が影響していることが示されている。その理由の一つとして、低教育のため、多くの被差別部落の保護者の子どもの学習への理解度の低さや子どもの教育への関心の低さが挙げられる。こうした家庭を取りまく教育環境や、さらに経済的背景が低い進学率、特に部落女性の低い進学率をまねいている。上記のデータはどれ一つとして政府報告書で言及されておらず、また、我々は貸し付け条件のある現行の奨学金制度の改善を求めるものとする。 3. 被差別部落女性の非識字実態と改善施策の必要性について(第10条関連) 読み書きが当たり前の社会のなかで、いまだに読み書きに不自由している高齢層・若年層の被差別部落女性がいる。識字率は、解放運動における識字活動の成果によって上昇しているが、被差別部落内における男女間での識字率の格差が存在する。全く読むことができない部落女性は2.6%で、男性1.4%の2倍近くになっている(資料表③・④)。この要因は、教育を受ける権利は憲法に保障されているにもかかわらず、特に女性の教育を受ける機会の欠如が原因として現れている。また非識字は日常生活にも影響を及ぼしており、それが部落女性に対するさらなる差別をまねく結果となっている。そこで、政府はこの問題解決にむけた必要な施策を直ちに講ずるべきである。 4.被差別部落女性の就業条件の整備の必要性について(第11条関連) 日本経済のこの大不況真っ只中で安定した職を求めて多くの人びとが奮闘する状況のなかで、部落女性や他のマイノリティ女性のような一番弱い立場の人びとはその影響を直に受けている。一例として、被差別部落女性が正規職員の応募をしても、会社の差別身元調査により不採用になるといったことがしばしば起こっている。学歴状況(資料表①)もまた部落女性の低い就業率、特に専門職に影響している。以上の要因のもと、被差別部落女性は、結局は、賃金が低く不安定な就労実態であるパートタイム労働者として、あるいは中小零細企業で働かざるをえない。そこで、我々は政府に同一労働、同一賃金に違反しているパートタイム労働者の処遇、雇用の安定に向けた対策を講ずるよう求める。また、政府のパートタイム労働政策のあり方を見直すために設置されている研究会の委員に被差別部落女性を登用するよう求める。 ※ すべての資料は、大阪府が2000年に行った被差別部落女性の生活実態調査による。
[1] 同和地区実態把握等調査(1993年)
◆同和地区住民の学歴構成 女性の「不就学」が6.4%、男性が3.1%となっており、「大学修了」では女性が2.0%、男性が6.3%となっている。 <表 ①> 本人の最終学歴
注)学歴区分は次のとおり 「不就学」=「学校に行かなかった」「小学校中退」の合計 「初等教育修了」=「小学校卒業」「中学校中退」「中学校卒業」「高校中退」の合計 「中等教育終了」=「高校卒業」「短大・高專中退」の合計 「高等教育終了」は下記「短大・高專修了」「大学修了」の合計 「短大・高專修了」=「短大・高專卒業」「大学修了」の合計 「大学修了」=「大学卒業」 ◆中学卒業後の進路について 子どもが中学生の場合には、「高校まで」が35.0%と「短大又は高專まで」および「大学まで」の合計比率は37.6%と、ほぼ同じになっている。 <表 ②> 親の進学期待
◆同和地区の非識字実態 非識字率は、「読む」ことに関する非識字率が10.3%、「書く」ことに関する非識字率が14.3%となっている。識字問題は、なお、重要な教育の課題である。 女性の非識字率が「読む」ことに関して5.6ポイント、「書く」ことに関して5.3ポイント、それぞれ男性より高くなっている。 <表 ③> 読むこと・書くことに関する識字状況
<表 ④> 非識字状況別・福祉サービスで困った経験がある
注)1.該当数は60歳以上の人 ◆失 業 実 態 <表 ⑤> 失 業 率
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