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人権週間で「人権侵害救済法」の
必要性を訴え世論盛り上げよう
「解放新聞」(2003.12.01-2147)

 

 昨年の人権週間で、タイ国家人権委員会委員のスティン・ノーパケッさんと韓国国家人権委員会常任委員のパク・キョンソさんを招いて、12月9日に世界人権宣言54周年記念集会を東京でひらいた。「人権擁護法案」が2回目の継続審議となった第155臨時国会の最終局面での開催であった。2人の話を思い起こしてみたい。
 スティン・ノーパケッさんは、「人権委員会に求められるもっとも重要な点は、運営の独立性だ。人権委員会が任務を遂行し、成功するには、その構成組織、意志決定プロセスと予算、支援などの財政面すべてで独立していなければならない」とのべるとともに、「日本の『人権擁護法案』は、これまで日本政府が主導してきた。しかし、みなさんが参加することで飛躍的に改善されるだろう。日本政府が態度を変え、法務省の所管に人権委員会を設置する方針を変えることを期待している。日本の市民社会活動が、政府と議会に影響を与え、人権委員会がより高い独立性をもち、人びとの意志と信念にたいしてよりひらかれ、効果的で実効性のある組織になることを望む。日本のあらゆるセクターの人びとが良好な関係を保ちつつ、世界の最高水準の国家人権委員会の設立に寄与されることを心から期待する」と提案された。
 パク・キョンソさんは、「政府の干渉から人権委員会を自由にする独立性がひじょうに重要で、韓国の人権委員会は政府の行政上、立法上、司法上のどの部門にも属していない。人権委員会の独立性の達成に向けて、韓国のNGOは、1999年に人権委員会設立の法案を法務部が提出していらい3年間を闘いつづけた」と韓国人権委員会への背景と経過を紹介しながら、「韓国の経験から見ても、独立した効果的な人権委員会を日本に創設するには、現在の「人権擁護法案」は修正せねばならない。必要な修正をし、効果的で日本の人権状況向上に貢献する機関を設置していただきたい」と結んだ。

 この昨年の集会のまとめで、組坂委員長は、「国会で法務省は、枝葉のところをすこし改正しようと答弁してきたが、肝心要の所管を法務省から移すことや地方人権委員会をつくることなどには断固反対している。これではやはり後世に悔いを残し、歴史の批判に耐えることはできない。今の法案では日本は国際的にも恥をかく。これから人権救済機関をつくる多くのアジア諸国のみなさんにもたいへん迷惑をかけることになるのであり、われわれには国際的な責務があるのだ」と集約した。
 その後、われわれは死力を尽くして「人権擁護法案」の抜本修正を求める闘いを継続してきた。しかし、アジアの友人たちが大きな期待を寄せてくれた「人権擁護法案」の抜本修正はなされないままに、今年の10月10日に衆議院解散とともに廃案となった。
 われわれは、「人権擁護法案」の廃案を乗り越え、「人権侵害救済に関する法律」の早期制定へ向けて、新規立法運動への闘いにすでに着手している。そのさい、新規立法を求める根拠は、第1に人権擁護推進審議会答申の具体化という政府責任であり、第2に国際人権諸条約機関からの一連の勧告にたいする誠実な履行という国際的責務であり、第3にこれまでの与野党協議にもとづく合意事項への信義という政治的責任であることを明確にしてきた。
 これらの3つの根拠にもとづいて、パリ原則をふまえた独立性と実効性を確保した人権委員会の創設を中心とした「人権侵害救済に関する法律」の早期制定を強く求めていかなければならない。

 今年の人権週間では、12月9日に世界人権宣言55周年記念集会として『国内人権機関の設立に関するアジア・太平洋地域セミナー』を東京でひらく。
 日本での国内人権機関の設立について深い憂慮と大きな期待を寄せてくれているアジア・太平洋地域国内人権機関フォーラム(APF/12か国加盟)の多くの国の友人たちが、代表3人を派遣してくれることになった。オーストラリアのキエレン・フィツツパトリックさん、ネパール人権委員会委員のスーシル・ピャクレルさんである。
 この集会の一連のとりくみで、われわれは「人権侵害救済に関する法律」の早期制定へ向けての広範な各界の声を結集して、国内外および院内外の強力なとりくみを本格化する契機にしていく決意である。
 全国各地で開催される人権週間でのあらゆるとりくみで、「人権擁護法案」の廃案をのりこえ、ただちにパリ原則にもとづく人権委員会の創設を中心とする「人権侵害救済に関する法律」の早期制定への揺るぎない意思統一ととりくみを開始していくことを強く訴える。


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