大量差別ハガキ事件で
救済制度確立と結合し闘う
「解放新聞」(2003.12.15-2149)
被差別部落民への憎悪をむき出しにした差別ハガキが、東京都連の活動家を中心に大量に送り付けられている。その後は、注文した覚えのない高額な図書や物品がつぎつぎに届く。周辺の家いえにも「危険なエタが住んでいる」と差別ハガキをばらまく。そんな悪質な事件が執拗にくり返されている。「殺害」さえ予告するという事態にたいしても、東京法務局の動きは鈍く、東京都連は被害者名で浅草署に告訴、捜査が開始された。
こうした事態をふまえて、東京都連は12月3日夜、都内の文京シピックホールで「連続・大量差別はがき事件の真相報告集会」をひらき、事件内容を大衆的に明らかにし、断固とした決意をもって事件の真相を究明することを示した。
集会では、一連の事件の経過とともに被害者3人が報告した。また、長谷川三郎・都連書記長が、「被害者を支えきる。犯人に必ずわれわれの前で謝罪させる」と表明。調査権のある「人権侵害救済制度」確立の闘いと結びつけたいとのべ、差別に妥協はないという決意表明の場になった。また、東京人企連、東京同宗連、平和運動センターの代表がこの差別糾弾闘争への連帯と決意を表明した。参加者は300人。
基調報告にたった藤本忠義・都連副委員長は、「今年5月に東京食肉市場に差別ハガキが送られて以降、前後して大阪、兵庫、広島、高知、福岡県連などに同一犯と見られる差別封書・ハガキが送り付けられた。現在までに都内各地の同盟員宅などに約90通。物品の送付を含めると125件。全国では約220件におよぶ。消印は渋谷郵便局が圧倒的に多い。多摩市の未組織部落にも執拗に送りつけられ、被害者の精神的苦痛は限度をこえている」とのべた。
「生命と生活」脅かす
連続・大量差別ハガキ事件
集会の基調では「連続・大量差別ハガキ事件」の特徴として①大量であること②物品の送付③地域に差別を煽る④電気の差止めを依頼する、など「ライフラインに手をつけている」をあげた。また、「同盟員の命と生活を脅かす」点にあり、地域からの排除・排外を扇動していること。未組織部落で運動に立ち上がっている同盟員ににたいして集中的に執拗にハガキの送付をおこない「恐怖と不安」を煽るという許しがたいものだと指摘した。
これまで、事件発覚後、被害者の精神的な不安と苦痛にたいして支える体制をとる一方、東京法務局との交渉をおこなった。再三再四にわたる要請で一部事件について事情聴取をおこなったが、これも法務局に出向くことにこだわった。また、一連の事件については「告発や調査について検討する」段階にとどまっていると強く批判した。
今後の闘いの方向として被害者を守り支える闘いを基軸としながら、都民に広く真相を訴える。来年の通常国会に焦点をあてて、「人権侵害救済制度」の法律実現に向けて運動をまきおこしていくとのべた。
このあと3人が証言にたち闘う決意をのべたが、特定の個人や家族をターゲットにした差別ハガキへの怒りの表明とともに、家族の動揺や精神的な苦痛の大きさに改めて戦慄した。ながく運動しているが初めての経験とのべた。
また、集会冒頭には、この事件の告訴を担当した河村建夫・弁護士が、この事件は差別を生む構造が社会にあることを明らかにした重大で差別的な事件だ。犯人確保が必要であり告訴した。特定の個人家族の問題ではなく部落解放運動にたいする差別敵対行為。部落解放同盟として告訴ができないので個人での告訴とした。今後法務局へ対応の改善を求めるほか、日弁連に「人権救済の申し立て」を検討している。みんながともに生きられる社会のために闘いたいとのべた。
「人権と戦争」の激突
不況やリストラで社会が寛容を失うとそれまで機能していたかに見える脆(ぜい)弱な民主主義と人権意識はいとも簡単に瓦解し、この社会の本質を無慈悲に露呈させる。
今回の一連の差別事件は、日本社会自体の危機のあらわれを切り取ってみせたといえる。自分たちと「同質化」しない、在日外国人やマイノリティーを敵視し排除することで不満を転嫁し精神的均衡をたもとうとする自己保身のあらわれでもある。
日本社会自体が内包する危機のあらわれは、憲法や人権を伸長させるのではなく、意識的に戦争に参加することで「正義を確認し」何事かが解決するかのような雰囲気をつくることにある。まさに、人種主義と排外主義が強まりファシズムの端緒がつくられている時代だといえる。21世紀が「人権と戦争」の激突の時代であることを証明してしまった、きわめて憂慮すべき事件であり、危機感をもってこの事件をみていく必要がある。
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