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すべての同盟員は松岡参院
選挙への闘いに集中しよう
「解放新聞」(2004.05.24-2170)

 

 日本の政治状況は、混迷と迷走の渦中にある。理由の大きな一つは、重要な政策論議で、「人権」についての深い認識と、政策立案の根底に「人権」の視点を貫くという真摯な政治姿勢が欠落していることだ。
 イラク問題で、小泉政権は、「普通の国」や「人道支援」を標傍し、米英の大義なきイラク戦争に加担する形で自衛隊のイラク派兵を強行した。イラクの現地では戦闘行為が今もつづき、多くのイラク市民や子どもたちの尊い命が失われている。米英軍によるイラク人捕虜の拷問が日常化していることも表出した。人道支援や取材で現地入りした邦人の人質事件では、場違いな「自己責任論」が大合唱され、戦前戦中の「非国民」扱いの風潮がつくり出されようとしている。
 まさに、「戦争は最大の人権侵害である」ことを、イラクの現状は改めて実証している。イラク問題にかかわる政策立案やこの根底に存在する憲法論議は、平和と不可分である人権の視点が徹頭徹尾貫かれなければならないのである。
 年金問題でも、小泉総理をはじめ閣僚や国会議員の「未納・未加入」問題が焦点化している。その政治責任が厳しく問われる。そのことは当然としても、年金問題の本質が見失われ、制度の抜本改革の議論が置き去りにされてはならない。現行制度の問題点は、国民年金・厚生年金・共済年金という3層の形で職業によって制度が分かれ、負担と給付が異なるという複雑な仕組みであるうえに、今回の改革案ではこの制度を変えず負担を上げて給付水準を下げるということで、制度への不信と不公平感を増進している。
 憲法第25条に規定する「国民の生存権、国の社会保障的義務」という考え方にもとづくならば、年金制度は人権の視点から「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という状態を社会的に保障するために国の果たすべき義務と制度のあり方を議論し、社会的なセーフティネットを構築すべきである。そのさい、重要なことは、年金制度の複雑さも手伝って制度にたいする無知・無関心から未加入であったり、低所得のために未納であったり、社会的差別のため制度から排除された人たちが多数いることを忘れてはならないことである。
 そのような日本社会のあり方を創り出そうとするならば、年金制度はもちろんのこと最低賃金制度や生活保護制度のあり方も含めて、人権の視点(困難を抱えた人の視点)を大事にした総合的で本格的な議論にもとづく制度改革が必要である。
 司法制度改革での証拠開示の立法化問題も、石川無実の重要な鍵であると同時に裁判の公正な審理を尽くし、人権を守るために不可欠の制度であるが、従前の「検察官が相当と認める範囲」での証拠開示という域を出ないものとして茶番化している。

 「21世紀は人権の世紀」と声高にいわれながらも、国際的な人権潮流とは逆流して、日本の重要な政策論議で人権の視点が欠落しているために、政策立案の軸足がふらつき、政治状況が混迷と迷走に陥っているといえる。
 その端的なあらわれの一つとして、日本での人権の法制度確立の重要な礎である人権侵害救済に関する法律の制定問題が、今国会で何の論議もなされないままに推移しているという憂慮すべき事態がある。昨年の臨時国会で衆議院解散による自然廃案となった「人権擁護法案」にかわる法案を今国会で再提案し早期成立をはかることは、これまでの経過で政府責任・国際責任・政治責任からいっても当然である。
 われわれは、この憂慮すべき事態を打開するために、「3つの責任」追及を徹底的におこなうと同時に、人権を確立していくという市民責任の自覚にもとづき、部落解放・人権政策確立要求中央実行委員会による『人権侵害救済法案要綱(試案)』を公表し、早期制定への議論を巻き起こすための一石を投じたところである。広く各界での議論の「たたき台」として活用され、人権侵害救済に関する法律の早期制定を促す政治的・社会的世論の形成につながることを強く期待している。
 5月24日の中央集会は、第159通常国会会期中でのそのような政治的・社会的世論形成の集約の場であり、同時に人権侵害救済法の早期制定への行政府・立法府の責任を追及しながら、明確に「法」制定実現への道筋を示していく重要な集会である。国政での部落解放・人権政策確立のとりくみは、日本の基本政策全般にかかわる重要な柱であるとの認識のもとにとりくみのいっそうの強化が求められている。

 わが同盟は、国政で人権政策確立を真剣に推しすすめることのできる場を確保するために、衆議院の松本龍・中央副委員長と両輪となって動くことのできる参議院の候補者として松岡とおる中央書記長を撃止することを昨年5月の全国大会で決定し、部落解放運動の命運を賭けた闘いとして勝利へのとりくみをすすめてきている。
 その参議院選挙も公示日まで残すところ1か月という段階になってきた。当初懸念されていた「出遅れ」状況も改善のきざしをみせ、この5月に入ってとりくみが急速に加速化されてきている。しかし、まだ勝利を確信する段階にないことも事実である。
 負けることが許されない参議院選挙を必ず勝利に導くために、すべての各級機関とすべての同盟員は、投票日までの残された期間、あらゆるとりくみを選挙闘争に集中して、現時点での「4つの方向」完遂に全力を傾注する必要がある。第1は、部落内対策の強化、第2は組織内はもちろん推薦・支持を含む議員対策の強化、第3は企業連有力会員対策の強化、第4は共闘・支持関係への抜け落ちのない団体対策の強化である。
 これらのとりくみを最後まで周到にやり抜き、松岡とおる参議院選挙を確実に勝利することによって「解放の議席」を回復しなければならない。そして、人権の視点を欠落させて混迷・迷走する日本の政治状況に歯止めをかけ、国政での部落解放・人権政策確立への強固な足場を築いていくことである。すべての同盟員とすべての各級機関がこの意義を再確認し、松岡とおる参議院選挙闘争勝利のために、最後の最後まで所期目標達成への死力を尽くした奮闘を強く訴える。


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