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解放の議席の重みを凝視し
松岡とおる選挙を闘いぬく
「解放新聞」(2004.05.31-2171)

 

一つのエピソードを紹介したい。
 戦前、松本治一郎全国水平社委員長が衆議院選挙に立候補した。みずから部落民であることを名乗り、国政選挙に立候補したのは、松本委員長が初めてであった。このとき、選挙の事務局長を務めたのが北原泰作さんだった。軍隊内での部落差別の激しさに憤激し、天皇直訴事件を起こしたことで有名な人だ。
 北原さんは、全国水平社の幹部として選挙闘争に奮闘した。そのさなか、父親が重体に陥ったのだ。あと数日しか命がもたない、といわれた。それでもと、奮闘する北原さんに、周囲から、せめて死に目にあってから、とすすめられ、博多から故郷の岐阜に帰った。そのとき、まだ父親は意識があった。父親はこういった。
 「おまえにあって、もう思い残すことはない。おまえがいても、おれはもう死ぬだけだ。そんなおれについていても意味がない。早く博多に帰って、選挙に専念しろ」と。
 差別に苦しむ全国の部落民の注視の的が、松本治一郎委員長の選挙だったのだ。北原さんの父親も、同じ思いを抱いていたのだった。だからこそ、息子に早く帰るように訴えたのだ。
 松本治一郎委員長は、この選挙で見事当選を果たし、全国の部落民の願いをかなえた。

 いらい、国会での松本治一郎委員長の議席は「解放の議席」と称せられ、敗戦後は参議院全国区で守りつづけられてきた。松本治一郎委員長の議席は、松本英一によって引き継がれた。しかし、松本英一顧問の死去にともなって、空席となったまま現在にいたっている。
 死去にともなって、繰り上げ当選になったのが、アイヌの萱野茂さんであった。松本英一顧問の遺族はもちろん、私たちもアイヌで初の国会議員の誕生を祝い、ともに手を携え、被差別少数者のための政策実現へ努力してきた。
 こうした状況のなかで、14年ぶりに参議院の比例区で部落の代表を出し、日本の人権政策の推進をより図っていくことが第60回全国大会で決定され、その候補者として松岡とおる書記長を押し立てることも決定されたのだ。

 参議院選挙の投票日、7月11日まであと40日を残すだけとなった。最終盤戦に闘いは突入している。
 今回の松岡とおる参議院選挙闘争にも、全国の部落の仲間はもちろん、被差別者、反差別共同闘争をともにになう人びとなどから、大きな期待が寄せられている。
 問題は、一人ひとりの同盟員が、松岡とおるになりきって、政策を訴え、どれだけ多くの人びとに浸透させていくかにかかっている。最終盤の闘いを、全同盟員が一丸となって担い抜くのかどうか。すべてはそこにかかっている。
 松岡とおる参議院選挙闘争勝利へ、団結し、闘い抜こう。


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