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朝鮮戦争時に大阪で闘った
民衆の記録
シンポと記念会ひらく
『大阪で闘った朝鮮戦争―吹田枚方事件の青春群像』
出版祝って

「解放新聞」(2004.08.09-2181)

 

 朝鮮戦争勃発54年・吹田枚方事件52年集会が、7月3日夕、大阪市中央公会堂でひらかれた。これは、『大阪で闘った朝鮮戦争―吹田枚方事件の青春群像』(西村秀樹・著、岩波書店発行)の出版を祝うために、シンポジウムと出版記念会の2部構成でおこなわれたもの。会場いっぱいの100人をこえる人たちが参加した。
 シンポジウムでは、詩人の金時鐘さん、作家の梁石日さんが発言した後、会場からも発言を求めた。
 金さんは、イラク派兵がブッシュの意向で憲法を無視してすすめられている。これは北の脅威を煽ることのうえに成り立っていることに悔しい思いがする。有事法でまずしわ寄せがくるのは在日朝鮮人だ。緊急時に駆け込む場所がない、市民レベルでつながる場がなくなってきている。改憲策動も含め、とんでもない暗がりがかかえこまれている。朝鮮戦争は日本を兵砧基地として使った。今回出版された本がなければ、検事調書だけが記録になってしまう。民衆サイドで事実をたぐり寄せている。日本の暗部を抱えた事件が吹田事件だ、今の動きに照らし合わせて、今この本を読んでほしい、と語った。
 梁さんは、自分が16歳のとき起きたのが吹田事件。戦争放棄をうたった「憲法改正」は時間の問題となりつつある。憲法解釈が拡大され、私たちの意識も崩壊してきた。そして、あらゆるものが相対化され、無化される、と憲法改悪への道を許さないとりくみを訴えた。
 1952年6月24日から25日にかけて、「朝鮮戦争への軍需列車を1時間止めれば1000人の命が助かる」と軍需列車阻止をめざし、労働者、学生、市民1000人が大阪の吹田操車場にデモ行進し、騒擾罪に問われたのが、吹田事件。枚方での武器・弾薬の生産再開に異議申し立てをしたのが、枚方事件である。


岩波書店 2200円
今と重ねて読む
 「いいじゃないか、そこには私の至純な歳月があったのだから」とは、詩人の金時鐘さんが吹田事件とは何であったのかと問われ、語ったものだ。ロシアの革命家、クロポトキンの言葉からの引用だ。
 朝鮮戦争から2年目、吹田事件には、参加者のさまざまな人生が交差する。筆者の西村は、青春群像として、見事にそれを描き切る。同時に、大きな歴史の流れを示しながら、朝鮮戦争に参戦国として日本が存在していたこともあぶり出す。(今)と重ねることでもっと豊かさを、この本はもつことができる。関西の社会運動の人脈も、この本はうかびあがらせる。

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