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隣保飽満動の活性化を
各地ではかっていこう
「解放新聞」(2004.08.30-2183)

 

 社会福祉法の改正で「隣保事業」は、その目的とする部落差別解消のための部落と部落外の双方からの地域活動として、また「隣保館」は部落問題解決の「公的責任」と「住民参加」の促進という二つの側面からなるコミュニティセンターとして、新たな発展を期すことになった。この期待に応えるため、「配食サービス」の展開や、諸制度を活用した安否確認事業・生きがい教室の展開、NPO法人と連携事業の模索など、いくつかの隣保舘で地域と協働した創造的な実践が始まりだした。
 しかし一方で、先の厚生労働省調査によると、継続的相談援助事業や隣保館デイサービスなど、隣保館の新たな役割を模索する制度の活用は全体の2割程度にしかすぎず、館による強弱がみられるのも事実である。また多くの自治体では、地域福祉計画の策定などにあたり、隣保館を正しく位置づけた検討をいまだおこなっていないし、市町村合併の流れのなかで、隣保館の規模や予算が大きく縮小される危惧も報告される。
 地域福祉の向上や人権啓発の住民交流の拠点となる、ひらかれたコミュニティセンターとして、地区住民にとどまらない、生活上の各種相談事業や人権課題解決のための事業を総合的に実施し、「福祉と人権のまちづくり」の核としての隣保館の役割と期待は重大であり、その活性化は急務の課題である。

 このようななか、厚生労働省の「隣保館モデル事業」の実施要項が示された。「社会的資源としての隣保館の活性化をはかり、必要かつ先駆的なモデルを創る」ことを目的に、3年を超えない範囲で、約30か所での実施が予定されている。中央生活対策部はこの事業の実施にあたり、「四つの視点と13の例示事業(中央通達61086)」を示し、内容を豊富化すると同時に、実施隣保館を支援するための「プロジェクトチーム」を創って対応することを決めた。もとより、部落解放同盟の交渉を通じて実現した事業であり、たんに行政レベルのモデル事業とするのではなく、積極的な関与と活用が望まれる。
 今後、隣保舘は地域福祉に不可欠なポジションを得ることで発展させられなければならないし、社会福祉協議会を通じた地域福祉への住民参加の促進には、同和地区住民を、福祉を「受ける対象」だけでなく、「担う対象」として発展させていくことを、多様な事業を活用してとりくむ必要があり、そのための隣保館を核とした新たな「公」の創造が欠かせない。すなわち、部落差別を解消し、部落民が共生し、多様性を認め合いながら生きていくことを支援する新たな「公」を、「同和」行政のテーマとして本格的に検討することが求められているのであり、そのキーワードは「隣保館」である。

 「三位一体改革」での補助金問題や指定管理者制度の導入など、隣保館をとりまく状況は激変が予想される。たしかにピンチではあるが、一方で絶好のチャンスでもある。隣保館という「公的施設」が、部落問題解決に資するという「公的責任」と、部落民みずからの「住民参加」という両側面の統一的な認識にもとづく、新たな「公」や相談を通じた「発見」の仕組みを創造していくための「隣保館改革」に、果敢に挑戦していくことが求められている。多くの地域や隣保館から、モデル事業を機にさまざまな議論や実践を始めよう。


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