pagetop
   

 

 

「同和や」と息子の結婚に反対
司法書士から戸籍謄本など入手
「部落差別で身元調査」と京都市

「解放新聞」(2004.11.22-2195)

 

 【京都】息子の交際相手の戸籍謄本などを司法書士から入手し、「同和や」と結婚を断念するよう迫った結婚差別事件の京都市との協議会を11月4日夜、京都・部落解放センターでおこない、京都市の事件の認識、事実調査、救済措置などの進捗度を確認、部落差別にもとづく結婚差別事件であり、身元調査であることを認め、あらためて、市の見解やとりくみの方向などを説明することになった。
 京都府連からは、野口峯吉・糾弾闘争本部長(副委員長)、西島藤彦・書記長(中央書記次長)、山内政夫・京都市協議長など135人が参加。京都市から西川隆善・市民生活部人権文化推進担当部長ら4人が出席した。

結婚拒否を告げ

 事件は、昨年7月11日、結婚差別の相談が府連に寄せられ、発覚した。府連などの調査では、息子が女性との結婚を両親に話したところ、兄もまじえ4人での話しあいとなり、テーブルの上に女性の両親の戸籍謄本2通を並べ、1通を指して「同和や」と発言し、結婚に反対、翌日、父親が女性の家に来て、結婚拒否を告げたもの。
 4回にわたる開示請求をおこない、4区役所にわたる戸籍謄本などの請求用紙が開示され、司法書士用の職務上請求用紙であることが判明。しかし請求人の名前や住所などは墨塗りにされていた。
 粘り強い調査のなかで司法書士を特定、全面開示を求め、不服申立を準備していたところ、最初の開示請求から6か月後に司法書士本人が第3者照会に応じ、全面開示された。
 協議会で京都市は、「結婚に反対する親が身元調査をおこない、同和地区を理由に反対したもので、司法書士が戸籍調査をおこなったと強く疑われる事件で、事実であれば部落差別にもとづく重大な差別事件」と、発覚後1年4か月も経過している事件にたいする認識とは考えられない回答をおこなった。このため事実関係を指摘し、具体的とりくみを追及するなかで、「部落差別に起因した結婚差別事件の可能性がきわめて高い」へと変わり、さらに「部落差別にもとづく結婚差別で身元調査」であることを最終的には認めた。

戸籍謄本を不正取得
司法書士が「職務権限」悪用

京都・結婚差別事件で明らかに

司法書士が戸籍謄本などを職務上請求用紙を悪用して入手した結婚差別事件の経過と、これまで明らかになった問題点を報告する。

請求理由は「裁判」「登記」と記されて

 部落差別にもとづく結婚差別事件で、本人の知らない間に戸籍謄本などを取っていたのは司法書士で、請求用紙は職務上請求用紙であり、請求理由は「裁判」や「登記」とされていたことが判明している。
 京都市の情報公開条例にもとづく開示請求を、昨年7月いらい4度おこなうなかで、4区役所にわたる請求用紙が開示された。
 その結果、差別された女性の母、祖父(故人)の本籍地までさかのぼり、戸籍謄本や除票を請求していたことがわかり、「裁判」や「登記」の目的ではなく、明らかに身元調査であることが認められた。

職務上請求用紙で不正取得が野放し

 職務上請求用紙は「戸籍法施行規則」に示される、弁護士や司法書士、税理士など8業種で使用されている。職務上請求用紙による戸籍謄本などの不正取得は、89年に弁護士二人が請求用紙を大量に興信所に横流ししていた事件が発覚しているが、15年後の現在でも、いぜん野放し状態にあることが明らかになった。
 また99年には、大阪府警生野署の警部補が、捜査関係事項照会書を使い、生野区役所から不正に戸籍謄本などを入手し、情報を流した事件も発生。この事件では、大阪市個人情報保護条例にもとづく開示請求により、警部補が不正取得していることが明らかになった。結果、警部補は懲戒免職となり、逮捕・起訴され、有罪となった。しかし有罪とされたのは、有印公文書偽造・同行使であり、身元調査や部落差別は罪に問われていない。

差別者守る個人情報保護条例の不備

 今回の京都市の結婚差別事件で、司法書士の名前や住所を京都市が全面開示したのは、開示請求からおよそ6か月後。独自の調査でつきとめられた司法書士が京都市の第三者照会を承諾したため、これまでの「墨塗り」にされた部分も開示された。
 京都市の「個人情報保護条例」は、被差別者の人権は守らず、差別者の「人権」が守られるしくみになっているといわざるを得ない。
 先の大阪府警生野署警部補の場合は「大阪市個人情報保護条例」に「あらかじめ審議会の意見を聴いた上で、提供の申出をした者の人権が侵害され、又は侵害されるおそれがあると認められるときに限り、申出者の人権を擁護するために必要な限度において、申出者に当該第三者に関する情報を提供することができる」ことが明記されており、これにもとづいて情報が開示され、警部補が特定された。
 現在、府連は、さらに調査をすすめ、事実の解明をおこなうとともに、京都市の責任も追及している。


「解放新聞」購読の申し込み先
解放新聞社 大阪市港区波除4丁目1-37 TEL 06-6581-8516/FAX 06-6581-8517
定 価:1部 8頁 115円/特別号(年1回 12頁 180円)
年ぎめ:1部(月3回発行)4320円(含特別号/送料別)
送 料: 年 1554円(1部購読の場合)