部落農家の要求を整理し
食べていける元気な支援を
「解放新聞」(2004.12.06-2197)
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中央農業対策部は11月4日、全国農業対策部長会議をひらき、今後の農対部の活動の方向と農水省にたいする要求項目を検討した。
会議では、埼玉県の代表が、イチジク生産組合と観用植物生産組合の事例を紹介し、同和対策事業で導入した施設型農業の現状と課題を報告した。
このうちイチジク生産組合では、施設の導入によって生活の基盤ができたけれど、生計を立てるには規模が小さすぎ、年間の生産時期が限定しているため、ジャムなどの加工施設の導入が必要だと訴えた。
高知の代表は、就労対策として導入したハウス(小ナス)生産組合の報告をおこなった。当初は順調な経営であったが、消費動向や価格の低迷、生産費のコストアップなどで苦しくなっている経営状況を報告した。
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昔から指摘されているように、部落の農業は3つの特徴をもっている。小規模、高齢化、低生産性だ。
差別によって農地をもてず、戦後の農地開放でも十分な農地を獲得できず、小規模のまま今日にいたっていることが第1の特徴だ。第2は、高齢化がきわだってすすんでいる点だ。農業の担い手の高齢化は部落だけではない日本全体の共通現象だが、部落はとくに高齢化がすすんでいる。展望のない農業に見切りをつけて、若い世代はつぎつぎと農業から離れ、担い手のいない荒れた耕地が増えている。第3は、低生産性だ。立地条件や地味のやせた土地が多いのも差別の歴史性を背負っ
た部落の特徴だ。
このような農業環境のなかで、農業経営をつづけていくことは容易ではない。加えて日本の農業をとりまく国際環境を考えれば、よい材料はどこにも見あたらない、ということになる。
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多くの国際専門機関が人口の増加や異常気象などの要因によって21世紀の世界の食糧不足を警告しているが、日本の食糧自給率は40%まで低下し、先進国でも例のない食料海外依存国になっている。そのうえ、小泉内閣は、農政改革といいながら、農業全体をますます輸入自由化と市場原理にゆだね、農家に打撃を与えている。このため国内農業の維持と食料の安定確保は、大きな政策課題として存在しているが、自給率の回復や農林業の再生は展望がひらけない。
いっぼう、「安全で新鮮な地場農産物」を求める住民や消費者は着実に増えてきており、学校給食への地場農産物の供給や、集落単位での営農組合の設立による消費者と直結した農産物直売所の建設、田植えの苗床の一括生産施設など農業に元気をとりもどす事例も各地でみられるようになってきた。つくるだけの農業から、賢い農業への転換が模索されているのだ。
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中央農対部は会議で、今後の方向として①一般対策事業を積極的に活用すること②企業としての農業経営の近代化をめざすこと③そのために営農集団の形成をめざすこと④今日まで全国各地で導入された各種の農業施設の全国的な組織化を検討することなどを提起した。
会議には、農水省の担当者も出席して国の事業の説明をおこなった。農水省の担当者は、部落向けの特別メニューはなくなったけれど、部落を含めた小規模な農家を支援するための事業を紹介し、ぜひそれを活用してほしいと説明した。もちろん、それでも部落農業にはハードルが高いのだが、十分に検討する値打ちはある。
この長期不況・大失業の時代に、他の産業並みの所得と労働条件さえ確保できれば、農業を「職業として選択する」という若い人がいることは各地の調査でも明らかだ。部落の農家の元気をとりもどし、食べていける農業をめざして、中央農業対策部はハウスや施設園芸整備など地域の実状にあった農業振興策を積極的に支援していく。
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