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奨学金制度の改善・充実
を求める闘いを強めよう
「解放新聞」(2004.12.20-2199)

 

 今年は「子どもの権利条約」が国連で採択されて15年、日本が批准して10年にあたる。昨年、国連・子どもの権利委員会で第2回日本政府報告書の審査がおこなわれ、全体的に「権利基盤型アプローチ」の必要性を強調した第2回総括所見(勧告)が出されている。
 この「権利基盤型アプローチ」とは、立法作業や政策立案で、子どもの権利保障を最大の目的とし、子どもの最善の利益を第一義的に考慮しすすめることや、子どもの権利保障と効果的な促進を図るために、実態を的確に把捉し、さまざまな課題について縦割りではない総合的な対応を求めるものである。
 部落解放連動は、子どもの学習権を保障するために、経済的な理由で進学を断念しないための奨学金制度の充実を図ると同時に、奨学金を必要とする背景にある部落の就労実態の改善にもとりくんできた。
 こうした部落問題解決の手法は、まさに「権利基盤型アプローチ」からの実践であり、こうした同和行政で培ってきた成果を損なうことなく、すべての人びとの権利を保障する視点に立った施策の充実と人権行政の推進が求められているのである。

 部落解放同盟は、02年3月の「地対財特法」の失効を前に、子どもたちが経済的な理由で進学を断念する状況を許さないという立場から、解放奨学金制度の一般施策への発展・創造を求める闘いにとりくみ、全国規模で実施される一般施策の高校奨学金制度としては初めて成績条項(学力基準)を設けない制度となる「高等学校等奨学事業費補助」事業の創設という大きな成果をかちとった。
 そして、来年度から旧日本育英会高校奨学金の地方移管分もふくめて、すべての公的な高校奨学金制度は都道府県が実施主体となり新たなスタートを迎えるわけだが、子どもの最善の利益を求める子どもの権利条約や、一般施策に工夫を加えて部落問還の解決を図るとした「地対協・意見具申」をふまえるならば、来春以降に実施される高校奨学金制度が、これまでの奨学金制度の内容を下回るようなことは許されない。
 現在、小泉政権がすすめる「地方分権」や「三位一体の改革」は、改革理念や主権者を置き去りにした財政合理化の議論に終始し、とくに教育や福祉の分野で生活困難層を切り捨てる論理で改悪がすすめられようとしている。
 部落解放同盟は、こうした逆風のなか、高校奨学金の地方移管の機会を制度改革の好機ととらえ、「育英」主義から「奨学」主義を柱とする制度への転換を求める闘いの姿勢を明確にし、全同数や日教組、自治労をはじめ多くの仲間とともに、成績条項の撤廃、採用要件を満たした有資格者の全員採用など高校奨学金制度の抜本的改善・拡充を求める署名活動にとりくみ、各自治体への要請行動を展開してきた。

 そして、各地での粘り強いとりくみの結果、来年度から実施される高校奨学金制度に関して、16都府県が成績条項を設けない制度に″一本化″を図る意向であることが確認されている。
 各都府県連・支部での全同盟員一丸となった果敢な闘いが、行政を動かし、一般施策の改善・新設という大きな成果をかちとったのである。また、他の多くの自治体では成績条項を設けていない「補助事業」制度を当面存続し、旧「日育」制度との″二本化″として実施する意向であることが確認されている。
 しかし、事態は急転している。政府・与党は「三位一体の改革」の「全体像」で、「高等学校等奨学事業費補助」国庫負担金の廃止・一般財源化を決定した。つまり、今回一本化が図られなかった自治体で、国庫負担金の廃止を理由とする「補助事業」制度の縮小・単純廃止という事態が懸念されるのである。
 奨学金制度の改善・充実を求める闘いは大詰めを迎えている。これまでの闘いの成果を水泡に帰すことなく、すべての子どもたちが経済的な理由で進学を断念することがないように、「人権」の視点にたった奨学金制度の確立に向けて、最後までの奮闘をお願いする。


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