本紙前編集長の土方鐵さんが亡くなった。78歳だった。土方さんは、1927年1月2日、京都市伏見区の被差別部落で生まれた。作家、俳人で、戦後の部落解放運動の苦難の時代を切りひらき、とくに文化運動で活躍した。
部落解放同盟京都府連合会顧問、部落解放文学賞実行委員会代表をしていた。優しい顔で、人びとを優しく包み込む性格は、多くの人たちに親しみを与え、部落解放運動の文化面での象徴的な存在だった。
1953年から部落解放委員会京都府連で専従。1963年に小説「地下茎」で第3回新日本文学賞(長編小説部門)を受ける。1974年から90年まで解放新聞編集長を務めた。1970年代には、狭山事件の真相を広めるために作られた映画、「おれは殺していない」71年/「狭山の黒い雨」73年/「石川君は無実だ」76年/「造花の判決」76年/「狭山・勝利への道」78年/「無罪-石川さんは脅迫状を書いていない」80年、の脚本はすべて土方鐵さん。狭山事件と裁判の真相や経過を世論に訴えた。
1974年に部落解放文学賞が創設されて以来30年間、実行委員、選考委員などとして同質を推進。第23回(96年)から現在、部落解放文学賞実行委員会代表。
1975年に、文化団体「差別とたたかう文化会議(議長・野間宏)」を結成。事務局長として活動、機関誌『差別とたたかう文化』を発行して、部落の伝承文化、在日朝鮮人問題、沖縄、障害者、アイヌ、インド、現代文明の危機などについても、問題を提起しつづけた。
著蓄に『浸蝕』『妣の間』『小説 石田波郷』『句集 漂流』『部落・ある靴職人の視点』などがある。
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