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部落問題資料室
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主張

 

差別身元調査事件の根絶
に向け強力なとりくみを
「解放新聞」(2005.5.30-2220)

 今年は「部落地名総鑑」発覚30年の年である。また、その「部落地名総鑑」や部落差別身元調査を規制する日本ではじめての法制度である「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」(以下「規制等条例」という)が1985年に制定されて20年目にあたる。
 その1985年8月、ニセ弁護士による戸籍不正入手密売事件が発覚し、ニセ税理士や資格を有する司法書士、行政書士が同様の行為をおこなっていたことが明らかになり、部落差別身元調査との関連が指摘された。
 あれから20年、再び行政書士による身元調査目的の不正入手が兵庫県を中心に明らかになりつつあり、それに関連して結婚時の差別身元調査や「部落地名総鑑」の貸し借りまで疑われる事態になってきている。こうした事能昔ふまえ差別身元調査事件の本質と課題を改めて明らかにし、全国の仲間にとりくみの強化を訴えたい。

 先の「規制等条例」によって、二つの部落差別調査事件が摘発されたが、その一つである1998年7月3日に新聞報道された「規制等条例」違反事件では、調査会社2社に大阪府が立ち入り検査をおこない、2社とも差別調査をおこなっていた事実を認めた。2社は「規制等条例」にもとづいて行政指導を受けるとともに、2社それぞれ廃業と調査業からの撤退をおこなわざるを得なくなったのである。この事件はエセ団体などの動きもあって、最終的に調査会社みずからが部落解放同盟に差別調査の事実を認めてきたものであるが、これらの事件が今日の差別身元調査の実態を顕著に物語っている。
 そもそも差別調査事件には差別調査を依頼した側(個人や企業など)と依頼された側(調査業者など)、そして調査をされる側という三者の事件関係者がいる。この事件の特徴は調査会社が自主的に認めてきたこともあって、部落解放同盟の要請にもとづいて調査業者が依頼企業側である顧客リストを提供したことである。これまでの差別調査事件で依頼企業側の顧客リストが示されたことは皆無であり、その時点で差別調査の実態を白日の下に晒すことになった。

 また、この事件は「部落地名総鑑」差別事件から23年、「規制等条例」制定から13年がへていたにもかかわらず、発生・発覚したものであり、部落差別の根深さを改めて示したものであった。
 明確になったことは、調査業者は被調査入の「履歴書」をもとに部落出身か否かの調査をはじめ、聞き込みによる人物評、思想、前の勤務先状況、家族の思想と生活などが主な調査項目となっており、これらを総合的に評価するためランク付けをおこなっていたことが判明しており、部落差別をはじめ今日でも差別身元調査が根強くおこなわれていたということ。膨大な量の差別身元調査がおこなわれ、多くの依頼者が存在していたことなど、これらの事件で多くのことが明らかになったが、そこから導き出された差別身元調査撤廃の課題を改めて明確にしておきたい。

 第1に、どのような差別身元調査も依頼者があっておこなわれることであり、依頼者の依頼が出発点である。依頼側つまり人間の集合体である企業や多くの市民の差別意識が表出したものであることに変わりはなく、それらの差別意識を撤廃するとりくみを確実に推進することがもっとも重要な課題である。結婚差別が根強く存在するのは基本的なところで差別意識がなくなっていない顕著な証であり、その手段として使われる差別身元調査の根本的な克服は差別撤廃なくしてあり得ない。
 第2に、これらの差別意識を容認し辛えている社会システムを改革していくことが重要な課題である。先の「規制等条例」以後、いくつかの県で条例ができたが、法制度の確立には至っていない。調査業者や依頼者を法制度的に規制し、被害者を救済するシステムは十分に確立していない。これまでの私たちのとりくみによって、改正職安法や各地での個人情報保護条例などが成立し、一定の前進はあるが差別身元調査の撤廃に向けては戸籍不正入手事件などに見られる住民基本台帳法、戸籍法等の課題克服なども対象にしたとりくみが求められる。
 第3に、差別身元調査の手段として使われる調査業者の問題である。差別的な依頼者とそれを金儲けの手段にする調査業者や、金儲けをするために依頼者の差別意識を煽る調査業者にたいする強力なとりくみのない限り手段としての差別身元調査の根絶はあり得ない。
 第4に、以上の課題を実現するためにも、あらゆる差別撤廃に向けた教育・啓発をさらに強化していく必要があるとともに、人権行政、同和行政をさらに発展させていかなければならない。
 これらの課題を克服することが差別身元調査の根絶につながる。全国の同盟員をはじめ多くの仲間にとりくみの強力な推進を訴えたい。

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