松岡徹・参院議員(中央書記長)が7月25日午後、参院行政監視委員会で連続・大量差別ハガキ事件をとりあげ、南野・法務大臣の見解をただすとともに、法務局はじめ人権擁護行政の不十分さを指摘し、追及。刑務所などでの矯正教育プログラムに差別や人権をテーマにしたものが必要であり、そのためにも職員への部落問題や人権研修が必要と、その実施を求めた。
南野法務大臣は事件について、「本当に私自身も大変腹が立つ課題」「その方がたの胸のうちを察し、そういう形をぜひなくしていく方向にいかなければならない」「人権という問題は一番大切な課題」「(事件の)根底にあるものはやはり差別意識で……あってはいけない差別」「人権擁護の課題というのが、今早急に考えられていかなきやならない課題」と回答した。
松岡議員は、人権擁護行政で大事なことは、被害者の立場に立つことを強調。法務局の不十分なとりくみが、1年半にわたる400通もの差別ハガキなどとなったことの反省を求め、人権侵害や差別から被害者をどう救済するかが問われていると追及した。
被害者の立場で人権擁護行政を
松岡書記長が行政監視委で追及
7月25日におこなわれた行政監視委員会での松岡徹・参議院議員(中央書記長)の国会質問の要旨を掲載する。
根底には差別意識
松岡徹・参院議員 7月1日に東京地裁で懲役2年の判決がでた連続・大量差別ハガキ事件について法務省、法務大臣の考え方を聞かせていただきたい。
南野知恵子・法務大臣 私自身も大変腹が立つ課題であると思っている。これだけ多くのハガキなどの投函を得て、聞くに堪えない言葉を発せられたことは本当に遺憾であり、人権問題は、一番大切な課題であると思っております。
松岡 この事件は名誉毀損、脅迫などですが、その動機についての認識を。
南野法務大臣 その根底にあるものは差別意識である思っております。あってはいけない差別であろうとも思っております。
松岡 また、この人は、この被害者の名前をかたって他の被差別の人たちにも差別ハガキをだしている。ハンセン病回復者の人たちや障害者の人たちに。大臣はどう感じられますか。
南野法務大臣 ハンセン病の方、その他いろいろな弱い方たち、社会的に弱者がおられると思います。その人たちにたいして差別扱いをするということは、けしからぬことだと思いますし、その方がたの人権をどのように守っていかなければならないかは人権擁護の課題で、今早急な課題だと思っております。
法務局の対応は不十分
松岡 この事件では擁護行政、東京法務局に救済申立てをしたが、対応は不十分で。どんな対応をしてきたのか、お聞かせいただけますか。
小西秀宣・人権擁護局長 東京法務局が被害申告を受け、重大な人権侵害であることから、被害者の方からの聴取などの調査をおこないましたが、相手方が不明であり、相手方にたいする説示や勧告、啓発などの措置をとることができないという事案の特殊性にかんがみ、関係行政機関とも連携し、4つのとりくみをおこなった。
第1には、浅草警察署に迅速かつ適正な捜査の遂行を数度にわたって要請。つぎに、被害地域の自治会などに人権についての啓発活動。3つ目は、法曹資格を有する弁護士の人権擁護委員を相談者に指名。4つ目は、被害者がおられる都営住宅を管理する住宅供給公社の機関誌に啓発の宣伝をした。
また、被疑者が逮捕されてからは、適正な刑事処分を求めて告発をおこなうと同時に、被疑者、被告人となった相手方から事情聴取し、啓発をしています。
松岡 私も被害者と話をしたんですが、法務局の対応は、被害状況を聞くだけに留まって、即答はできないと、回答もいつできるか分からないと答えている。人権擁護行政は一体何をしてきたのかと。人権侵害は、ハガキや行為で分かっている。被害者も分かっている。なのに法務局は、周りに啓発ビラをまいて説得したと。被害者は一体どういう状態に置かれているのか。
小西人権擁護局長 被害者が法務局へこられたことはそのとおりです。ただ、私どもも任意の調査機関なので、なかなか満足のいける対応ができなかったかも、その点はおわび申し上げたい。
松岡 人権擁護行政は被害者の立場にまず立つことが大事です。被害者は身の危険を感じているんです。結局、警察にいき、犯人不明のまま告訴した。その間、被害者たちは法務局にいき、告発してほしいといってるんです。なぜ告発しなかったんですか。
小西人権擁護局長 告発は逮捕後です。人権擁護機関としては、人権侵害をおこなっている者を特定し、事実確認した上で告発の措置を講じるのが相当と考えていたためで。必要の都度、浅草警察署に説明し、迅速な捜査の遂行を要請している。
職員研修が必要
松岡 判決は猶予ではなくて実刑。この場合の矯正プログラム、こういった人にたいする矯正の在り方についてどう考えているのか。
横田尤孝・矯正局長 調査した結果、同和問題・人権問題に特化した矯正教育プログラムを実施している施設はなかった。
被害者の立場に立ってみずからの加害行為を考えさせる「被害者の視点を取り入れた教育」プログラムで、人権に関する内容を実質的に指導しているほか、部外講師の講演や各種の講座などで差別行為が人権侵害であることを教えている施設、人権啓発に関するビデオ教材を視聴している施設はありました。
刑務所では、たとえば本人の差別意識が犯罪に直接結び付いている場合には、個別にその間題の指導で改善を図っていくことになります。さまざまな観点から検討し、その充実を図っていきたいと考えています。
松岡 矯正局の職員が部落差別などの正しい認識をもっているのか。職員の学習や能力を高められるようなとりくみをお願いしたい。
最後に、今後、こうした人権侵害や差別からの被害者をどう救済するのか、見解を。
南野法務大臣 職員にたいしては、いろいろな啓発活動をとおしていかなければならないと思っている。また、このような差別は絶対あってはならないことであるということを1番の基本にしながら、真剣にとりくんでいきたい、人権擁護の問題は人としての、人の道としての大切な課題であると認識しております。