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8月8日、参議院本会議で、郵政民営化関連6法案が望がの大差をもって否決された。この現実を前にして、小泉総理は、みずから内閣総辞職をすることなく、衆議院を解散するという政治的暴挙に出た。
総選挙は、8月30日公示、9月11日投票と決まった。今回の解散は、「自暴自棄解散」とも言うべき理不尽なものであるが、総選挙は反動小泉政権の政権交代を実現する絶好のチャンスである。
部落解放同盟は、松本龍・副委員長(福岡1区)の6選必勝と中川治・議員(大阪18区)をはじめとする全推薦候補当選への強力なとりくみを組織をあげて展開する。第162通常国会で、「人権侵害救済法」の提案・成立に反対した与野党の議員にたいする闘いでもある。同時に、「法」制定闘争の過程で明らかになったように、日本での戦後60年の「平和と人権」の路線をかけた闘いであり、国権主義・民族排外主義的な政治的潮流を明確に拒否し、「人権立国」の礎を固めることができるかどうかの正念場の闘いである。
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衆議院の解散という事態になった第162通常国会で、「充実した人権侵害救済法の制定実現」をめざした私たちの間断なき闘いは、政府・与党が現実に法案提出をせざるを得ない状況まで追い込んできた。
ところが、周知のように、3月10日以降の自民党内の強力な反対派議員(「真の人権擁護を考える懇談会」)の台頭により、事態は急変した。拉致問題などを悪用した国権主義・民族排外主義的な主張を底流にして、「そもそも人権擁護法などはいらない」とか「人権擁護委員の選任基準に国籍条項をもうけるべきだ」とかの理不尽な反対論が横行し、これに同調する一部の野党議員(「人権擁護法案から人権を守る会」)も巻き込んで、国会外の「新しい歴史教科書をつくる会」などと連動した反対運動が組織されたのである。
私たちは、この間繰り返し明らかにしてきたように、「人権侵害救済法」の制定に反対する勢力の論調は、ただ単に「法」制定のみに反対しているのではなく、戦後60年の長い時間をかけて心ある多くの人びとの努力によって築き上げられた「平和と人権」の路線を切り崩そうとする組織的・系統的なものであることに、鋭い警戒と機敏な対応を怠ってはならない。
反対派勢力の執拗な妨害活動や郵政民営化問題をめぐる混乱、さらにはポスト小泉問題などの複雑な政治状況のもとで、与党人権懇話会はギリギリまで法案提出への努力を続けたが、自民党役員会は、7月25日に「今国会での法案提出断念」という最悪の決定をおこなった。
民主党は、この事態にたいして、8月1日に独自法案である『人権侵害による被害の救済及び予防に関する法律案』を衆議院内閣委員会に提出した。衆議院解散により「吊し状況」のままで自然廃案になったとはいえ、国会論議への布石を打ったことの意味は大きかったといえる。また、社民党も、国権主義の台頭に危機感をもち、今国会での法案提出への努力をおこなってきたことを忘れてはならない。
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9月11日は、小泉総理が唱えるような「郵政解散」としての郵政問題の是非を問う総選挙ではなく、まさに日本の進路が「平和と人権」の方向にすすむのか、それとも国権主義・民族排外主義勢力がすすめようとする「戦争と差別」の方向に逆戻りするのかを決する重大な岐路である。
私たちは、郵政問題をめぐる自民党の分裂選挙に「総選挙の争点」を貶めることなく、明確に「平和と人権」を軸にした総選挙闘争を闘わなければならない。総選挙闘争は、短期間である。「人権侵害救済法」の制定問題、憲法・教育基本法の改訂問題、年金や生活保護制度などの社会保障問題などの重要な政策で、「平和と人権」の視点を堅持して積極的に政治活動をする人材であるかどうかをしっかりと見極めて、「政策協声を結んだうえで、推薦候補者の当選に向けて全力を投入する必要がある。
松本龍候補の6選必勝をはじめとして、民主党・社民党を中心にした「平和と人権」を求める全推薦候補者の当選を勝ちとり、次期国会で必ずや「人権侵害救済法」の制定を勝ちとり、「人権立国」を実現できる政治条件を作りだきなければならない。
すべての同盟員が、今回の総選挙が「平和と人権」の総路線をかけた歴史的な政治決戦であることをしっかりと自覚し、本部方針にもとづき創意工夫をこらし自主的・自発的な選挙活動を積極的におこなうことを強く訴える。
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