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部落問題資料室
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主張

 

鳥取県の条例制定の意義をふまえ、
「人権侵害救済法」の早期制定へ
地域から幅広い闘いを強化しよう
「解放新聞」(2005.11.7-2243)

 鳥取県議会で、10月12日に『鳥取県人権侵害救済推進及び手続に関する条例』(以下、「鳥取県人権侵害救済条例」と略)が、議員提案され可決(賛成=34、反対=2、棄権=1)された。これは、昨年12月の県議会に知事提案されて以降、3回の継続審議をへて成立したものである。
 部落解放同盟は、鳥取県人権侵害救済条例の制定に関し、今後克服すべき問題をもってはいるものの、基本的にこれを支持するものである。国レベルで「人権侵害救済法」の制定にかかわって、私たちは、人権委員会の所管問題やメディア規制問題とともに、都道府県ごとの地方人権委員会の設置が必要であることを訴えてきたが、今回の鳥取県の条例はその先駆的とりくみであり、大きな歴史的意義をもっている。その意義は、つぎのように確認することができる。
 第1に、悪質な差別事件や人権侵害が禁止され、これまで放置され泣き寝入りを強いられてきた被害者にとって、救済への道がひらかれたこと。
 第2に、被害者救済のための「人権侵害救済推進委員会」が設置され、具体的な救済への手続きが明記されたこと。
 第3に、従来、現行法下では任意調査や説示などの対処しかできなかった問題(大阪の岸和田差別貼示事件や名古屋の差別街宣事件などなど)にたいしても、一定の強制力をもった調査や勧告(公表を含む)ができるようになったこと。
 第4に、差別や人権侵害の被害者が司法救済を求める場合は、訴訟支援ができる仕組みができたこと。
 以上のような基本的な意義をもっているが、いくつかの問題点もある。すなわち、知事直轄委員会であることによる独立性の問題や行政機関への調査権限が制限されている問題などが存在している。しかし、これらの間題は、国と地方自治体との権力性の問題を同一次元で論じることはできないので、条例運営で市民監視と不都合が生じた場合の絶えざる改正ということで、問題点を克服していくことが可能であり、制定の意義を否定できるものではない。鳥取県での先進的成果を全国化していくことが重要である。

 地方自治体に先を越された政府・与党は、「人権侵害救済法」の一日も早い制定をおこなうべきである。
 第163特別国会で、9月29日の参議院本会議での神本美恵子議員(民主党)の代表質間にたいして、小泉首相はつぎのように答弁をおこなった。
 「人権救済制度でございますが、自民党は今回の総選挙にさいし、政権公約において、簡易・迅速・柔軟な救済をおこなう人権救済度の確立を公約しております。政府・与党内でさらに検討をすすめまして、人権侵害被害者の実効的な救済を図ることを目的とする人権擁護法案をできるだけ早期に提出できるように努めてまいります」。
 政府・与党は、小泉首相の答弁にもみられるように、来年の通常国会に「人権擁護法案」を提出する準備をすすめているといわれている。
 部落解放・人権政策確立要求中央実行委員会は、10月27日に各政党にたい⊥て、充実した法案の早期制定を求め要請行動を展開してきたところである。
 とりわけ、差別・人権侵害の実態をふまえた法制定の必要性と歴史性を強調するとともに、従来からの私たちの主張である、独立性・実効性ある人権委員会の創設に向けて、これまでの経緯をふまえて与野党協議をしっかりとおこないながら、巨大与党が圧倒的な数の力に頼ることなく国会で十分に審議をつくし、国際的にも恥ずかしくない充実した「人権侵害救済に関する法律」として制定することを訴えてきた。

 私たちは、「法案制定」に向けて今後とも全力をあげて闘いを推しすすめていく。しかし、先の第162通常国会で「法案制定」をめざしたにもかかわらず、国権主義的・民族排外主義的な反対派勢力の台頭のもとで、政府・与党が「法案提出を断念」したという苦い経験を忘れてはならない。同時に、総選挙後の巨大与党の成立という新たな政治状況のもとでの厳しい矧いになることは、明らかである。
 この厳しい情勢下で、「人権侵害救済法」の制定の闘いをいかにすすめていくか。つぎのような方向と課題を提起したい。
 第1に、与野党にたいする「法の必要性と早期制定の意義」に関して強力な働きかけを継続的におこなっていくこと。
 第2に、「総合的な人権の法制度の全体構想」策定プロジェクトを早急に立ち上げて、人権にかかわる全体の法体系の一環である実行手続法としての「人権侵害救済法」の位置づけを明確にして、議論の無用な混乱を整理すること。
 第3に、「鳥取県人権侵害救済条例」につづき、地域からのとりくみを徹底的に強化していき、新たな政治状況のもとで、「平和と人権」を求める裾野を広げていくこと。
 そのためにも、差別実態をふまえた各地域での学習会や集会を開催して、法制定への「議会決議」や「首長声明」の獲得にとりくむとともに、地域からの「人権の条例制度」を確立していくこと。
 第4に、「人権侵害救済法」の制定や「人権の法制度」の総合的確立は、部落問題だけにかかわる課題ではなく、すべての差別人権侵害にかかわる課題であるがゆえに、可能な限り幅広くマイノリティ当事者団体や人権NGO団体との共同のとりくみをしていくようにネットワークしていくこと。
 そして、これらのとりくみや差別・人権侵害実態をメディア関係者にていねいに説明しながら、法制定に向けてのメディアの役割を徹底的に重視していくことである。
 以上のようなとりくみを通じて、一日も早く「充実した人権侵害救済法」の制定を地域からの力を背景にかちとっていこう。


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