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第5回反差別国際連帯青年研修が11月1日から6日かけて、中国(北京、南京、無錫、上海)を訪れ、南京大虐殺記念館の見学や被害者からの聞き取りなどがおこなわれた。訪中団は、組坂繁之中央執行委員長を顧問、赤井隆史中央執行委員を団長とする全国の青年19人が参加した。
アジア諸国の人びとをはじめ内外の厳しい批判を無視して10月17日に小泉首相は、年に1回参拝するという小泉流の「公約」を守り、5年連続して靖国神社参拝を強行した。また、小泉首相の靖国神社参拝にたいして、福岡地裁、大阪高裁で違憲判決が出されたにもかかわらず、参拝を強行したのだ。
こうした参拝にたいしてアジア諸国から厳しい批判が集中したことはいうまでもない。それを「内政干渉」と言い放って「不戦の誓いをあらためて確認するために参拝した」などと平然と返答する姿勢は、内閣総理大臣が公式であれ、私的であれ参拝することは明らかに政教分離の原則を定めた憲法を否定し、侵略戦争を美化する行為にはかならない。
これらの動きは、テロ特措法、イラク特措法、有事法制の強化、教育基本法・憲法改悪の動きと連なるアメリカ追随の軍事大国化路線といわざるを得ない。
まさにこの時期に部落解放同盟として中国を訪問するという意義ある行動となった。中国人民に共通していたのは、「正確な歴史を伝えてほしい」との訴えであり、歴史をねじ曲げ、戦争の加害責任まで否定する日本の姿勢にたいして、政治課題として捉えるだけではなく、戦争という歴史が起こした真実を両国で確認することが今こそ大事だとわれわれに語ってくれた。
つまり、戦争という一種極限状態で残虐な行為がおこなわれることに被害者側と加害者側という対立的に捉えるのではなく、「戦争がもたらした過ちを真実として受け止め、ともに反省することが大事だ」「真実をお互いが認識し、そこから戦争への真撃な反省をともに確認できるのではないか」と訴え、それを日本政府や一部国会議員は、もう一度戦前の強い日本を標模し、力によってアジア諸国のリーダーへと国権主義・民族排外主義を強めていることに、不快感と抗議の意志を示しているのが中国人民である。
謙虚に反省する姿勢をもち、隣人を受け入れる〝人権の思想″こそが、アジア諸国との平和と友好を築くことができる鍵であることを改めて確認した訪中団であった。
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また、11月7日に人権問題をあつかう国連総会第3委員会で、人種差別問題に関してディェヌ特別報告者(セネガル)が、日本でも在日韓国、朝鮮人への差別や同和問題が存在することを指摘した。これを受け中国代表が「特定の政治家や東京都知事らの人種差別主義的な発言がある」と日本の批判を展開、韓国代表も「差別への懸念」を表明、北朝鮮も日本を批判したという。
日本政府は、こうした発言にたいして、「人種差別、外国人排斥のまったくない国は、世界中にほとんどないでしょう。人種差別はすべての国ぐにがとりくむべき課題です」とのべ、教育分野で差別解消に向けたとりくみをおこなっていることを強調するにとどまり、具体的な政治家の差別発言にたいして訃本政府がどのような立場をとるのか、説明を求められたことへの言及はなく、日本政府の人権に関する立場が、きわめて希薄であることを証明したばかりか、人権侵害にたいするとりくみも不十分であることを、国際的な舞台であからさまに指摘されるという実態が明らかとなった。
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アジアを軸に世界の平和・人権の確立をめざす共生社会の実現にこそ21世紀を真に人権が確立した世紀とすることができる唯一の道であることを、部落解放同盟としてあらためて表明しておきたい。
政治レベルだけの外交で平和の道がきりひらかれるわけではない。市民の友好・連帯の積み上げにこそ、国際連帯の杵は確立していくものであり、幾多の困難をともないながら松本治一郎元委員長が〝世界の水平運動″を提唱し、長い年月をかけて築きあげてきた反差別国際連帯活動の、いっそうの強化を今日ほど求められている時代はない。
中央本部をはじめとする各都府県連、地協、支部で地域を基礎とした反差別国際連帯活動をさらに推進していくことこそが、国権主義・民族排外主義と具体的に闘う実践であることを再確認し、とりくみを展開しようではないか。
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