手書きコピーとタイプ打ちが
【大阪支局】行政書士などによる戸籍謄本などの不正入手事件について調査をすすめていた大阪府連では、市内の興信所から2種類の新たな「部落地名総鑑」を回収した。これまで8種類が確認されているが、今回回収したものはそれとは異なるもので、9、10番目のものが確認されたことになる。
一つはA4判で手書きのものをコピーしたもの。332ページにおよび、全国の部落の地名、戸数、人口などが記載されている。
大阪府内については、これに加えて「所在地及び環境」として、各部落ごとに最寄り駅からの道順、部落の範囲、周辺の雰囲気、家並みのようすが詳細に書かれ、部落内のおもな姓なども書かれている。府内58地区が「特殊部落」としてあげられており、非人系の部落も書かれているとみられる。こうした詳細な記述は、京都、兵庫、奈良の部落についてもみられる。
もう1種類はゴムで綴られた186ページのファイルで、都道府県別に部落の地名がタイプ打ちされたもの。「所在地」「戸数」が一覧になっている。地名の横には、手書きのメモで「5-ウ」「7-イ」など「符号」のようなものが書き加えられている。地名などでタイプミスと思われるところにも、手書きで修正が加えられるなど、実際の調査に使われていたことが、なまなましく伝わる。
身元調査があとたたず
第9、10の「部落地名窒」を回収
【大阪支局】部落解放同盟大阪府連では昨年の行政書士による戸籍不正入手・密売事件の発覚以降、不正に入手された戸籍と「部落地名総鑑」が照合され、差別身元調査に使われているとの情報を得て調査をすすめてきた。
行政書士など8業士(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士)には戸籍法施行規則第11条により戸籍などを職務上請求することが認められている。国家資格にもとづく制度を悪用し、不正に取得された住民票や戸籍が興信所・探偵社などに売り渡され、差別身元調査に使われていたことは明らかである。行政書士により不正に利用されたと思われる「職務上請求書」は、これまでにわかっているだけでも3000通(過去3年間のみ)にもおよんでいる。
北口末広・府連書記長の話
発覚から30年が経過した今も「部落地名総鑑」が残っているのは、結婚などの身元調査を依頼する個人があとをたたず、根強い差別意識があるあらわれである。解放同盟は真相の糾明に全力をあげるとともに、こうした状況が事実上放置されている部落差別の現実を世に問う運動を展開していきたい。
「部落地名総鑑」事件とは
部落地名総鑑は1975年11月、部落解放同盟に匿名の投書が送られてきたことから発覚した。府連は独自の調査で「部落地名総鑑」を入手し、同年12月に記者会見をおこない、大きな社会問題となった。
これまで判明しているものだけで8種類あり、そこには全国5300か所をこえる部落の名前、所在地、戸数、おもな職業などが都府県別に記載されていた。「地名総鑑」の作成者は、興信所・探偵社の関係者で、人事や結婚に関連する調査の経験から作成し、販売すれば儲かるとの考えから作られた。220をこえる購入者の大半は企業で、大企業も数多く含まれていた。
法務省は、1989年にこの事件の「終結宣言」を出したが、その後も調査業者による差別身元調査事件が明らかになるたびに、「部落地名総鑑」が存在する可能性がささやかれてきた。事件発覚から30年が経過した今でも、差別を商う差別調査が脈みゃくと営まれていたことがあらためて浮き彫りとなった。
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