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部落問題資料室
NEWS & 主張
主張

 

大失業の時代、職業として
選択できる元気な農業対策を
「解放新聞」(2006.03.27-2262)

 国際専門機関が人口の増加や異常気象などの要因で21世紀の世界の食糧不足に警鐘を鴫らしているが、日本の食糧自給率は40%まで低下し、先進国でも例のない食料の海外依存国になっている。そのうえ、小泉内閣は、農政改革といいながら、農業全体をますます輪入自由化と市場原理にゆだね、農家に大きな打撃を与えている。国内の農業の維持と食料の安定確保は、日本の大きな政策課題として存在しているにもかかわらず、自給率の回復や農林業の再生はまったく展望がひらけない。
 昔から指摘されているように、部落の農業は小規格、高齢化、低生産性の3つの特徴をもっている。差別によって農地をもてず、戦後の農地解放でも十分な農地を獲得できず、小規格のまま今日にいたっていることが第1の特徴だ。第2は、高齢化がきわだってすすんでいる点だ。高齢化は部落だけではなく日本全体の共通現象だが、部落ではとくに高齢化がすすんでいる。展望のない農業に見切りをつけて若い世代はつぎつぎと農業から離れ、担い手のいない荒れた耕地が増えている。第3は、低生産性だ。立地条件や地味のやせた土地が多いのも差別の歴史性を背負った部落の特徴だ。こうした環境のなかで、いま、農村部落で若い世代の農業離れがいよいよ加速している。

 ところで、「安全で新鮮な地場農産物」を求める住民や消費者が着実に増えてきており、学校給食への地場農産物の供給や、集落単位での営農組合の設立による消費者と直結した農産物直売所の建設、田植えの苗床の一括生産施設など農業に元気を取り戻す事例が各地で見られるようになってきた。つくるだけの農業から賢い農業への転換が模索されているのだ。
 このため、さきの全国大会では、部落の農家に元気を取り戻し、他の産業並の所得を確保し、職業として選択できる農業経営を実現するために部落の農家を積極的に支援しようという方針が提起された。
 この方針に沿って、中央農業対策部は5月19、20日、鳥取県倉吉市で全国農業対策部長会議をひらき、運動方針の具体化を協議する。また、これからの活動を検討するとともに地元の農業を視察する。

 全国大会では、国や府県にたいして施設型農業や農産物直売所など各地域の実情にあった農業振興策を積極的、に導入するよう要求することや、一般対策事業の積極的な活用と営農集団の形成をめざすことなどが方針として掲げられた。また、部落農業の振興のために、中央農業対策部が全国各地で導入された各種の農業生産施設の全国的なネットワーク化をめざすことが提起された。今回の視察は、その一環でもある。
 長期不況・大失業の時代に、他の産業並みの所得と労働条件さえ確保できれば、農業を「職業として選択する」という若い人がいることは各地の調査でも明らかだ。部落の農家の元気を取り戻し、食べていける農業をめざして、ハウスや施設園芸整備など地域の実情にあった農業振興策を積極的に支援することが、いま農業対策として求められている。

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