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部落問題資料室
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狭山第3次再審に向けて
各地から闘いのうねりを
「解放新聞」(2006.04.03-2263)

 いよいよ狭山事件の第3次再審請求が東京高裁に申し立てられる。石川一雄さんが、えん罪におとしいれられて、まる43年を迎える5月23日に弁護団は第3次再審請求書を提出することにしている。あらたな闘いのスタートである。
 長い闘いであるが、その闘いの積み重ねによって、裁判でも運動でも、成果を積み重ねてきていることも確かだ。私たちは現地調査をよぴかけ、多くの人に現地を見てもらい、自白のおかしさや証拠のねつ造、差別捜査の実態を訴えてきた。石川さんの無実を1人でも多くの人に訴える努力と工夫をし、支援の輪を広げ、マスコミに働きかけてきたことも実を結んでいる。そのようななかでこそ、石川さんが再審請求中で仮出獄をかちとることもできた。また、狭山差別裁判の不当性を批判し、分析することで、司法のありかたを問い、とくに証拠開示について積極的に国連などでも訴えながら、改革の連動をすすめてきた。
 弁護団は、石川さんの無実を明らかにするために、再現実験をおこない、専門家による科学的な鑑定を作成し、調査活動によって新証拠発掘につとめるなど、さまざまな新証拠活動をすすめてきた。弁護団の長い活動、努力によって、裁判でも前進を積み重ね、裁判所をおいつめていることも確かだ。だからこそ、弁護団にあらたに10数人の弁護士が加わり、第3次再審の準備をすすめている。
 私たちは、第3次再審請求でも、大衆運動の力で弁護団の活動を物心両面で支えるとともに、闘いの原点と積み重ねをふまえて、現地調査や23デーの街宣、署名活動、学習・教宣活動にとりくまなければならない。何よりも、1人でも多くの人に真実を伝え、世論をさらに大きくしていこう。

 昨年3月に抜き打ち的に出された最高裁の棄却決定は、弁護団の新証拠にたいして、きわめてズサンで非科学的な判断をしている。たとえば、斎藤保・指紋鑑定士をはじめ、警察の元鑑識課員であった3人の鑑定人が、尊門知識と経験もふまえて科学的に分析し、脅迫状・封筒に書かれた宛名の「少時」は万年筆によるものと鑑定した。封筒の筆記用具は自白ではボールペンとなっており、自白の重要な内容が事実と食い違っていると弁護団は指摘した。
 ところが、最高裁の棄却決定は、「肉眼で観察しても別の筆記用具とは認められない」としてしりぞけている。鑑定人の尋問もいっさいおこなっていない。
 あるいは、脅迫状に石川さんの指紋がないことは石川さんが触れていないことを示すという指摘にたいして、棄却決定は、「手を触れたであろうところに指紋が印象されていないことも珍しくない」といった一般論で弁護側の主張をしりぞけたうえで、さらに、「自白に出ていないからといって、申立人が指紋付着を防ぐ措置を講じていなかったとも決めつけるわけにはいかない」などと、石川さんが指紋がつかないように何らかの工作をしたかのようなことまでいい出している。
 これが裁判官の予断でなくて、何であろうか。石川さんの自白には「手袋などはしていない」とはっきりとのべられている。棄却決定のいい方では、石川さんが脅迫状作成から被害者宅へ届けるまで、「指紋付着を防ぐ措置を講じて」いながら、自白のなかでこの部分についてウソをつきつづけたことになる。
しかし、このようなウソをつく理由はまったく考えられない。

 弁護団は、第2次再審請求の異議申し立てで、元鑑識課員である斎藤保・指紋鑑定士の脅迫状作成・指紋検出実験にもとづく鑑定書を提出し、自白のような脅迫状の作成をおこなえば、指紋が検出されたはずであることを科学的、実証的に明らかにした。
 棄却決定は、「実験の前提となる諸条件自体が不確声と曖昧ないい方で鑑定をしりぞけているが、脅迫状・封筒に石川さんの指紋が付着していないという事実を認めざるをえず、何の証拠もなく「指紋がつかないようにしたかもしれない」という恐るべき予断にもとづく決めつけによってごまかしている。明らかに「疑わしさは被告人の利益に」という刑事裁判の原則に反している。弁護団が積み重ねてきた新証拠によって追いつめられた裁判所のズサンかつ権力的なやりかたが棄却決定に示されている。

 こうした不当な司法権力のやりかたを許さないためには、裁判所に公正・公平な証拠判断をさせなければならず、そのためにもまず事実調べをおこなわせなければならない。昨年、あいついで再審が開始された名張事件、布川事件では鑑定人尋問などの事実調べや証拠開示がおこなわれていることをみれば、狭山事件のこれまでの再審請求の審理があまりにも不公平・不公正であることは明らかだ。
 第3次再審請求では、東京高裁が弁護団と十分協議し、事実調べ・証拠開示をおこなうよう強く求めていかなければならない。
 狭山事件の再審を求める市民の会が中心となって、東京高裁に公正裁判-事実調べを求める新100万人署名連動を始める。
 また、第3次再審請求が出される5月23日には、東京・日比谷野外音楽堂で、実行委員会主催による狭山事件の再審を求める市民集会をひらき1再審請求を申し立てる石川さんと弁護団を激励するとともに、新署名運動をはじめとするあらたな闘いに向けて意志統一をはかることにしている。
 この5月に向けて、狭山事件の再審を求める市民の会(代表・庭山英雄弁護士)では、4月28日に都内でシンポジウムをひらくとともに、第3次再審に向けて、さらに学者、文化人、ジャーナリストらに支援の輪を広げていくことにしている。中央メーデーでも、部落解放同盟中央本部、中央共闘会議を中心に第3次再審に向けた宣伝活動がおこなわれる。
 各地でも、市民集会開催やメーデーなどでの宣伝活動などにとりくもう。
 狭山再審リボンバッジやイラストシンボルマークなどを活用し、あらたな闘いに向けて世論づくりを地域からすすめよう。

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