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今年6月、内閣府にある規制改革・民間開放推進会議(規制改革推進会議)は「学校選択制の一律導入」の「答申」をしようとしている。
すでに、東京、埼玉、鹿児島、広島、福岡、和歌山、千葉、北海道などでの、小学校で227自治体(8.8%)、中学校で161日自治体(11.1%)がなんらかの学校選択制を導入している。
もちろん「いじめへの対応」など人権に関わる緊急避難の場合や、学校がすぐ近くにあるのに校区編成のために遠くの学校に行かざるを得ないという場合などが原因の学校選択は当然である。
しかし、私たちは学校選択制の導入には基本的に反対である。
規制改革推進会議は、学校選択の権利がなければ「児童生徒・保護者というユーザー本位の教育が実現するはずがなく、特に真にきめ細かい対応が必要とされる学力的に不利な立場にある児童生徒、すなわち「教育弱者」が置き去りにされ、早い段階から学習意欲を喪失してしまうことになりかねない」としている。これは決定的な間違いである。
人権・同和教育の実践は、社会的困難を抱える子どもを置き去りにしているのは、学校選択の権利がないからではないことを示してきた。「勉強が分からない」「学校に馴染めない」などの「しんどい」子どもや、その社会的背景を無視・排険しやすい学校の教育内容・教職員(教育行政)の質といった「学校文化」にこそ、その原因があることを明らかにしてきた。
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学校選択制は、当然ながら「学校文化」のもつ差別性を解決しない。それどころか、学校選択制は、1960年代まで公然と存在した差別越境を、教育を受ける権利の名のもとに公然と認め、学校間格差・序列を再び拡大するものであり、歴史の教訓を無視するものである。
私たちは、差別越境に反対するだけでなく、すべての子どもの人権確立をめざす学校づくりにとりくんできた。
たとえば、子どもの通学安全や土曜日の充実したすごし方、図書室の充実や絵本の読み聞かせ、総合学習だけでなく教科学習への参加、クラブ活動の指導など、地域住民によるさまざまな学校・学習応援、さらには学校・地域の協働による運動会や人権を配慮した地域防災活動、余裕教室などを地域に開放するなどがある。
しかし学校選択制は、地域(校区)住民の絆を弱め、地域の教育力を低下させ、「魅力ある(特色ある)学校づくり・地域づくり」の実現を阻むものとしてしかあらわれない。
しかも学校選択をできる人は、現実には経済的に余裕のある人に限定される。げんに、東京など都市圏では顕著にその傾向があらわれている。教育を受ける権利の「特権化」「不平等化」を招くものである。
人権・同和教育は、地域住民が「魅力ある(特色ある)学校づくり・地域づくり」に責任を持って参画する主権者の立場に立ってきた。私たちは、今後もその立場と考え方を堅持する。
さらに、学校選択制は公教育の内容、教育内容の選択にもおよぶ問題である。私たちは、教育内容は憲法の理念・原則である主権在民・平和主義・基本的人権の立場から選択・構成されるべきであると考える。学校選択制は、こうした公教育の本質を否定する危険な考え方に結びつくものである。
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学校選択制の導入を検討している自治体は、小学校で150(5.8%)、中学校で138(9.5%)にもおよんでいる(2004年11月文科省調査)。こうした状況をしっかりとふまえ、まず自治体レベルから「学校選択制の導入反対」の声を強めていく必要がある。
同時に、学校にたいするさまざまな課題や不満は、学校選択制で個人的に解決しようとするのではなく、地域に根ざした学校づくりのなかで根本的に解決していくことを強く訴える必要がある。そして「地域に学ぶ」ことを大切にしてきた人権・同和教育の伝統をふまえ、多様な住民が参画できる学校づくり・地域づくりをこれまで以上に強力におしすすめていくことが急務である。
学校選択制導入を阻止し、人権・同和教育をはじめとした公教育を守り発展させていくうえで、部落解放連動のはたす役割と責任はきわめて大きいことを自覚し、草の根の運動を巻き起こしていこう。
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