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部落問題資料室
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主張

 

都府県連別支部活動社会議で
組織強化・人材育成を実践しよう
「解放新聞」(2006.06.12-2272)

 今年度から「都府県連別支部活動者会議」という新たな形態で、従来からの全国プロック別支部長研修を継承・発展させるとりくみを実施する。実施期間は、基本的には6月から7月期にかけてである。この期間に開催できないところも、できるだけ早い時期に実施する努力をして、準備会を含めて全都府県連での完全実施をやりきる。
 今回の都府県連別支部活動者会議は、従来の中央本部からの一方通行の研修スタイルではなく、運動・組織・財政・人材問題などの課題で、当該都府県連がかかえている悩みや全国発信したいとりくみなどについて、中央本部・都府県連・支部が忌博のない双方向の意見交換をおこないながら、これからの部落解放連動の方向と課題で認識の共有化をはかる場としていくことが目的である。
 第63回全国大会では、今期活動で「4つの主要課題」が提起された。すなわち①憲法改悪の危険な政治動向と対峠し、総合的な「人権の法制度」確立への課題②狭山第3次再審闘争の勝利と悪質・頻発化する差別事件にたいする糾弾闘争の強化への課題③差別実態に即した行政闘争の強化と日常活動として「人権のまちづくり」運動の活性化への課題④新たな時代の課題に対応しうる中央オルグ団の再編をはじめとする組織強化と財政確立・人材育成の課題、である。
 これらの課題が、各都府県連・支部でどのように具体化されているのか、それらのとりくみで困難や問題点は何なのか、さらにそれぞれの地域での独自なとりくみ課題で成果をあげているものはあるか、などなどについての率直な議論がなされ、全国的に共有化されていくことが望まれる。

 部落解放連動は、今まざれもなく胸突き八丁にさしかかっているといえる。胸突き八丁とは、「山道で、登りのきつい難所。転じて、物事をなしとげるのに一番苦しい時期」と『広辞苑』はのべている。今日の部落解放運動にとっての「胸突き八丁」とは、具体的にどのような状況であろうか。このことにたいする明確な認識が、今ほど必要で大切な時期はない。
 全国の同盟員の中には、「やりづらくなった」「今までのようにはいかない」「これから先どうしていったらいいのか」などと、部落解放運動にたいする漠然とした不安・焦燥感を抱いている人たちも少なからず存在している。この不安・焦燥感はどこからきているのか。
 直接的には、長年にわたってつづいた「特別対策」中心の施策から一般対策の施策へと同和行政の手法が変わったことと、部落差別の実態が多様化してきたことなどが、その理由として考えられる。しかし、より重要なことは、つぎのことである。
 部落解放連動の現状は、全国水平社以来の歴史からみても、部落差別撤廃への社会的粂件を最大限に拡大させてきたことは疑う余地のないことである。そして、奨学金制度の改善など「部落内の権利」を「日本に在住する困難をかかえた人たちの権利」へと拡大させてきたことも事実である。換言すれば、部落解放運動が、「部落の境界線」を大きくこえて、社会的な人権連動の妄勢力に成長してきたということである。この歴史的事実にたいして、部落解放同盟は自信と誇りを持つべきである。
 だが、この事実を不快に感じている人たちが存在している。これまでの差別的な社会システムや、ものの考え方に胡座をかいて支配を維持してきた、さまざまな権力層の人たちである。この勢力が、部落解放連動の転換期につけ込んで、陰に陽に攻撃を開始してきている。ここ数年来の不祥事を口実にした「同和」バッシングともいうべき遠の動きは、こうしたことの延長線上にあることも見ておく必要がある。もちろん、権力層に攻撃の口実を与えるような不祥事については、みずから襟を正す自浄能力を発揮させることが第一義的ではあるが、「権力は甘くない」という冷徹な自覚のもとに、組織の総点検をおこなうことが必要である。

 部落解放運動の力の源泉は、「部落地名総鑑」などをはじめとする、いっさいの差別を許さないという当事者としての心底からの人間的怒りであり、差別撤廃という社会的正義を実現していく崇高な自主解放と共生の思想である。部落解放同盟がこの力の源泉に立脚している限り、「不安や焦燥」は無用である。
 今回の都府県連別支部活動者会議で議論すべきことは、①部落解放同盟の立脚点(原点)を再確認し②今日的な差別実態の正確な把握にもとづいて③部落大衆の切実な要求をつかみだしながら④部落差別撤廃・人権政策確立への課題としっかりと結びつけ⑤日常闘争・糾弾闘争・行政闘争を部落内外の共同の力で活性化させていく方向を掘り下げ⑥組織強化と人材育成への地域ごとでの具体的課題を探っていくことである。
 さまざまな苦悩をともなう困難についても、これを回避することなく率直に意見交換がなされていくことを期待している。文豪のヘルマンヘッセの言葉が思い返される。
 「自分を正当化できないことほどつらいことはない。だが、正当化しようとする自分の偽りが見えてくれば、それだけ本当の自分に近づいたのであり、それが成長につながる。傷つくことを恐れて閉じこもってしまえば気は楽かもしれないが、いつまでたっても出口は見つからない。苦悩を克服するには、苦悩のど真ん中を突き抜けるのが最短の道なのだ」

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