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部落問題資料室
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反差別国際連帯の成果と課題を
とりくみで大きく飛躍させよう
「解放新聞」(2006.06.19-2273)

 5月10日、国連総会で人権理事会の理事国選挙がおこなわれ、初代理事国に日本など47か国が選出された。
 人権理事会は、国連での人権の主流化の流れのなかで、国連として人権問題への対処能力強化のため、これまで経済社会理事会のもとに置かれていた人権委員会を格上げする形で、国連総会の下部機関として新設された。
 今回の理事国選挙に関して、麻生外務大臣は、「わが国の人権問題に関する国内外での努力が高く評価された結果」であり、「国際的な人権規範の発展・促進をはじめ世界の人権状況の改善に貢献してきており、人権理事会においても引きつづき建設的な役割を果たしていく考えである」との談話を発表した。
 部落解放同盟は、今回の理事国入りを歓迎するとともに、日本が理事国としての責務を果たし、世界の人権の促進と保護に貢献し、「人権立国」として世界各国から信頼と信用を得ることを期待するものである。日本で差別撤廃にとりくむ当事者団体として、世界的な差別撤廃のとりくみの進捗に貢献するために、反差別国際連帯のとりくみをいっそう強化し、世界の水平連動の先頭に立ち、とりくみをすすめていくものである。

 しかし、日本が人権理事国という重要な役割を担ったいま、先の大臣談話と日本の差別と人権侵害の実態や政府の姿勢との間には、大きな隔たりがあることを指摘せざるを得ない。
 理事国には人権の促進と保護に関する最高基準を堅持することが求められる。人権諸条約の批准にともなう国内法制度の整備、各条約機関への政府報告書の提出と報告書にたいする勧告の履行はもとより、差別撤廃をはじめ自国での人権の促進と改善に真摯にとりくむことは当然の責務である。とりわけ、日本政府にたいしては、1998年の国連・自由権規約委員会をはじめ国連・人権条約機関から再三にわたって国内人権機関の設置に関する勧告が出されており、これらの勧告を真摯に受けとめ、速やかに国内人権救済機関を設置することは国際的責務なのである。
 政府は日本の人権状況が国際社会に監視されることを肝に銘じ、理事国に選出されたことを契機に、これまでのとりくみを実勢に総括し、抜本的な人権政策の見直しに着手すべきである。
 また、今回の人権理事会への改組で、国際的に「人権侵害国家」と評価されている国のメンバー入りを防ぐために、選出基準が厳格化されている。今回、日本は「人権問題に関する国内外での努力が高く評価された結果」上して選出されたわけだが、次回の改選時に同様の評価を得ることができるだろうか。
 海外のある日本研究者は、日び変遷していく「伝統と文化」を、固有で不変の価値として国民に押し付ける「教育基本法」改悪や、「日の丸・君が代」の強制の流れをみて、現在の日本を「極東の不気味な国家のひとつとなってしまった」と懸念を示している。
 こうした不名誉な評価を払拭し、真に「人権立国」として世界に誇れる社会にするために、国内の反人権・国権主義勢力と果敢に対峙していかなければならない。同時に、反差別・人権を機軸に世界の被差別マイノリティとの連帯・連携した反差別国際連帯のとりくみを強化してい.くことも重要である。

 部落解放同盟では、反差別国際運動がすすめるとりくみと連携しながら、インドやスリランカ、ネパールなどの差別撤廃にとりくむ人びととの交流・連帯をはかってきた。インド洋大津波による被災者の救援・復興活動では、全国の仲間から心温まるカンパが寄せられた。
 こうした具体的・実質的な支援なども反差別国際連帯活動の重要なとりくみであるが、部落差別の現実や部落解放運動の成果と課題を積極的に世界に向けて発信していくことも、同様に重要なとりくみである。
 現在、部落解放運動をはじめとする国内外の多くの人びとの粘り強い努力の結果、国連で「職業と世系(門地)にもとづく差別の撤廃に関する原則と指針」案の作成がすすめられている。
 日本国内の被差別マイノリティが連携し、日本の差別の現実や差別撤廃に向けたとりくみの成果と課題を世界に発信することで、海外の被差別マイノリティと課題や問題意識の共有化をはかる。こうしたとりくみの積み重ねが、世界的な差別撤廃の枠組みの確立に大きく寄与することにつながるのだ。
 支部・地域レベルでの日びのとりくみが、世界の水平運動の一翼を担っていることの自覚を強め、アジアをはじめとする世界の被差別マイノリティや反差別のとりくみをすすめる人びととの連携・連帯を深めるとりくみをすすめていこう。

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