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「規制緩和」の名で労働法制が改悪され、不安定な雇用形態で低賃金で働かざるをえない労働者が急速に増えている。この傾向は、とくに若年層に強くあらわれており、正社員になれる若者は約半数に落ち込んでいる。そのようななかで、部落の若年失業・不安定就業者が急増し、被差別やさまざまな社会的困難をかかえた人びとに矛盾が顕著にあらわれている。
このような差別構造の強化に反撃するために、就職差別撤廃をはじめ、同一労働同一賃金の確立など、雇用でのあらゆる差別撤廃のとりくみを強化する必要がある。労働組合との共闘も強めながら、募集・採用から退職までの公正なワークルールの確立にとりくんでいこう。
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5月26日に「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」が成立し、無料職業紹介や職業相談などのハローワークの仕事が、競争入札により民間委託される可能性が出てきた。現状でも「就職困難者」にたいする国の施策は不十分としかいいようがないが、その事業が経費削減と効率を求めて民間業者に委託されるとすれば、さらに施策が後退する懸念がある。
一応、国が民間委託事業の点検をすることは考えられているようだが、どこまで徹底できるかも疑問だ。
このような状況をふまえ、各地で隣保館とハローワークの連絡会議をひらくなど、あらためて隣保館などでの相談活動とハローワークとの連携を強める必要がある。そして継続的相談援助事業の活用を含め、きめ細かな職業相談・就労支援活動の充実をはかり安定雇用を促進していかなければならない。
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また現在、民間職業紹介や人材派遣業者が急速に増加しつづけ、04年では民間職業紹介業者が約8千社、派遣が約3万社になっている。そして、大阪で民間職業紹介の過程で起こった差別面接事件に象徴されるように、就職の実績を上げることが優先され、公正採用選考や人権がないがしろにされている現実がある。利益や効率を追求するために人権を置き去りにすることを許してはならない。また、そのような業者がハローワーク業務の民間委託の受け皿であってはならない。
この業界は人の就職や雇用にかかわる業務をおこなっており、その社会的責任を自覚し、同和・人権教育、公正採用選考の徹底がはかられなければならない。
差別面接事件を契機に、国からの指導も「責任者講習」の内容や「推進員」設置勧奨に一定の前進はあったが、全社員への認識の浸透が必要という意味では、まだまだ不十分である。また、業界団体によるとりくみもはじまったが、業界団体の組織率も低く、今後のとりくみ強化を求めていく必要がある。
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行政書士による戸籍など大量不正取得事件や興信所の「部落地名総鑑」所有の事実は、結婚や就職のさいに部落出身であるかどうかを調べる身元調査がいまだにはびこっていることを示している。今後、真相究明とともに、戸籍などの取り扱いの規制強化など、差別を再生産するシステムを断ち切る改革を求めていかなければならない。
「新潟県同和・人権センター」や「人権センターながの」の全県的調査により、自治体での「統一応募用紙」違反事象が多数発覚し、福井でも同様な状況があり調査中である。
公正採用選考を指導・啓発すべき自治体の現状としては、あまりにもお粗末すぎる。このさい各都府県連・支部で全国的に自分の足元の自治体から点検していくことをよぴかけたい。
「統一応募用紙」違反をなくすためには、啓発活動を強化するとともに、「受験報告書」など検証システムを全都道府県に広め、もう一度点検活動を強化する必要がある。また、部落解放中央共闘会議は、6月を就職差別撤廃月間に設定し、全国の労働組合に啓発資料を配布し「統一応募用紙」の趣旨を広め、職場からの点検活動をよびかけており、このような労働組合によるとりくみも大切である。
統一応募用紙は、部落差別だけではなく、さまざまな差別を許さないとりくみとしてすすんできた。その意義をあらためて広く訴えていくことも大切だ。
雇用をめぐる厳しい情勢はあるが、労働組合や被差別の立場の人びとなど広範な人びとと力をあわせて、就職差別撤廃と不安定雇用の解消にとりくんでいこう。
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