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部落問題資料室
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「人権の法制度を提言する市
民会議」の動向に注目しよう
「解放新聞」(2006.08.21-2282)

 小泉首相の「人権擁護法案をできるだけ早期に提出できるように努めてまいります」という第164通常国会冒頭での答弁にもかかわらず、政府与党は法案を提出できなかった。与党である自民党内の意見がまとまらないのが理由である。
 この状況のもとで、政府は、杉浦法務大臣直轄の「検討チーム」を4月上旬に立ち上げて、次期通常国会での法案提出に向けて、論点整理をおこないながら与党内の意見調整をする作業をつづけている。
 論点整理の主要テーマが、①人権侵害の定義②人権委員会の権限と司法機関との関係③人権擁護委員の国籍条項④メディアの規制条項⑤人権委員会の所管省庁などの問題であることは、以前に既述したとおりである。
 7月24日に杉浦法務大臣は、検討チームの作業を続行しており、「メディア規制の条項削除」なども検討していることを記者会見でのべたと一部のマスコミが報道したことは衆知のところである。
 しかし、与党内の意見のとりまとめのために論点整理の作業をすすめていることに異存はないが、「次期通常国会での法案提出」という政府姿勢に与するわけにはいかない。2001年に人権擁護推進審議会が法律の必要性を答申してからすでに5年が経過している。政治の責任が厳しく問われなければならないところである。秋の臨時国会での早期提案と制定が強く求められるところである。

 しかし、自民党内の意見対立が、国権主義・民族排外主義的な立場からの人権にたいする反対・歪曲論であることは、昨年3月からの法案をめぐる議論からも明らかである。憲皆や教育基本法の改悪路線と軌を一にする危険な状況が存在している。
 このような状況のもとで重要なことは、差別・人権侵害の実態に即して「法案が何故必要なのか」の根拠を明示し、差別・人権侵害の被害者救済のために、人権侵害救済に関する法律として「どのような内容が求められているのか」という観点から法案検討をおこない、さらにこの法案が「今後の日本の人権の法制度のあり方」に関する構想のなかで「どのように位置づくのか」という展望をはっきりとさせることである。
 そのことなしには、今後の議論も正確な航海図と羅針盤を持たない蛇行船の様相を呈することは目に見えており、危険な状況にたいする有効な歯止がきかないことになる。
 今年3月30日に結成された「人権の法制度を提言する市民会議」(略称=人権市民会議)は、このような日本の危険な状況をふまえながら、日本での人権の法制度のあり方にかかわって、正確な「航海図(全体構想)と羅針盤(基本視点)」を市民の側から今年12月に「提言」することを目的にして、活動をおこなっている。

 われわれは、反差別・人権にかかわる広範な人権団体や学者・専門家で構成されている人権市民会議の一員として参加しながら、大きな期待をもって「提言」活動への動向に注目しているところである。人権市民会議は、結成以後、世話人会議や企画運営委員会、さらにはメーリングリストでの白熱した議論がおこなわれ、「提言」策定に向けた議論が積み上げられてきている。
 7月17日には、シンポジウム「日本の人権の法制度を間う――当事者の視点から」をひらき、「提言」骨格構想を提示しながら、結成総会でのシンポに引きつづきマイノリティ当事者からの意見報告をうけた。8月5,6日には、世話人・企画運営委員などの合宿がおこなわれ、彗口構想が熱心に議論された。
 9月2日午後1時半から日本青年館中ホールで、これまでの議論を集約した形で、12月の「提言」策定に向けた中間報告がなされ、参加者による意見交換をおこなうシンポジウムがひらかれる。この中間報告は、今後の日本の人権の法制度のあり方についての全体構想がほぼ明らかにされ、「人権侵害救済法」などの必要な法律や制度の位置づけに関する基本的視点が提示されると思われる。その後、人権市民会議のホームページで公表され、多くの人からの意見を募集する予定になっている。
 人権市民会議の芳「提言」が、今後の日本の人権の法制度のあり方への重要な提言となり、人権軽視の昨今の危険な状況にたいする実効ある抑制力として作用し、差別撤廃・人権確立を求める広範な団体や個人の共通の行動綱領に仕上がっていくように強く期待するものである。
 部落解放同盟はもとより、多くの人びとが人権市民会議の動向に真撃な注目と関心をはらうとともに、各人が積極的な意見表明を集中していくことを望みたい。

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