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狭山100万人署名を2月中に達成し
事実調べと証拠開示を実現しよう
「解放新聞」(2007.01.22-2303)

 狭山事件では、確定判決となっている2審判決以来32年以上も事実調べ(鑑定人などの証人尋問や現場検証)がおこなわれていない。これはあまりに不公正・不公平である。
 再審請求では、「殺害現場」とされる雑木林の隣の畑で事件当日農作業をしていた人の「悲鳴は聞いていない。人影もなかった」という証言が証拠開示で明らかになり、自白と矛盾する新証拠として出された。しかし、裁判所は証人尋問も現場検証もおこなうことなく自白と矛盾しないとしりぞけている。
 万年筆の発見経過について元狭山署刑事の「家宅捜索時にカモイを調べたが何もなかった」という新証言も明らかになったが、裁判所は証人尋問もカモイの現場検証もおこなわずに「記憶が定かではない」「カモイは見えにくく見落とすような場所」と決めつけてしりぞけている。殺害方法についても、裁判所は鑑定をおこなった法医学者の証人尋問もおこなわず、一方的に検察側が出してきた石山鑑定に依拠して弁護側鑑定をしりぞけている。対立する鑑定が出されているのであるから、鑑定人尋問をおこない、弁護側の主張を十分に聞いて鑑定の証拠価値を判断するのが当然であろう。
 筆跡鑑定や筆記用具の食い違いを指摘した元鑑識課員による鑑定、3次元スキャナを使った足跡鑑定など、弁護側は専門家による鑑定番を多数提出しているのだから、だれが考えても鑑定人の尋問をおこなうことは不可欠である。事実調べもおこなわず弁護側の新証拠を一方的に否定することは再審の理念に反している。

 再審請求での事実調べについて、日本弁護士連合会が編集した『続・再審』(1986年・日本評論社)は、「刑事訴訟法445条は、「必要があるときは、事実の取り調べ」ができると規定する。しかし、この規定は、必要性が客観的に認められるときは、事実の取り調べは義務的だとする法意に解釈されなければならない」とし、狭山事件で出された新証拠は「事実の取り調べが義務となるケース」と指摘している。1991年には著名な刑事法学者81人が「狭山事件の事実調べを求める署名」を東京高裁に提出している。
 第2次再審請求が棄却された直後の1999年7月20日付読売新聞の解説記事は、「東京高裁は、万年筆に限らず数多くの新証拠について書面審理のみで一切の事実調べをおこなわず、また検察官手持ちの証拠の開示の勧告、命令も出さなかった」「事実調べを含め十分に審理を尽くすことが求められる」と書き、著名な刑訴法学者である光藤景皎・摂南大学教授(当時)の「日本が再審制度を取り入れたドイツでは、請求理由審でも求めに応じ、事実の取り調べをするのを原則としている」との指摘を紹介している。
 狭山現地に石川さん宅のお勝手場のカモイが復元された直後の1999年2月8日付朝日新聞でも「再審請求を審理する裁判官はここに来るべきだろう。ひと一人の運命を決める前に」と書いている。2度にわたって狭山事件をとりあげ全国放映された、鳥越俊太郎さんがキャスターをつとめるテレビ番組「ザ・スクープ」でも事実調べをおこなうべきだということが強調されていた。マスコミもまた狭山事件の事実調べは不可欠だと指摘しているのである。

 いま、全国ですすめられている100万人署名は、第3次再審請求で、こうした事実調べを今度こそおこない、公正・公平な再審請求の審理を保障するよう東京高裁に求めるものであり、多くの著名な文化人、学者がよぴかける署名である。
 これを大きな国民世論、市民の声にして東京高裁に届けるということが、100万人署名運動の意義である。狭山事件の真相、川さんの無実を示す新証拠、事実調べの必要性、えん罪の恐怖を粘り強く訴え、署各を獲得するとともに世論を大きくしよう。
 市民常識にもとづく判断、人権感覚を刑事裁判にとりいれるということが裁判員制度を導入する意味であり、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則を徹底させることが不可欠である。今は市民がえん罪の現実を考え、公正な裁判とえん罪をなくすための司法改革を求める市民の声を裁判所に届ける重要な時期でもある。
 こうした狭山100万人署名の意義を確認し、署名運動に全力でとりくもう。

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 狭山弁護団は、3月末に第3次再審請求を担当する東京高裁の大野裁判長に面会し、新証拠・補充書を提出するとともに、事実調べ・再審開始を求める。狭山事件の再審を求める市民の会(庭山英雄・代表)では、弁護団が大野裁判長と面会し、事実調べを要請するのにあわせて、集まった署名をこの3月に東京高裁に提出することを決めた。ぜひ、このときに100万人署名を達成できるように早急に目標達成をはかろう。
 現在までに全国から寄せられた署名は70万筆をこえた。あと30万筆で100万人である。この2月を狭山100万人署名運動強化月間として、各団体、個人で署名連動に全力をあげてもらいたい。2月には、『第3次再審請求書』『まんが狭山事件』『狭山事件一間一答(第2版)』などの資料や狭山パンフ、解放新聞などを活用し、学習・教宣を強化しながら、100万人署名を集中的にすすめよう。
 全国の職場、地域、街頭で署名活動をおこない、一人でも多くの市民に訴えよう。
 100万人署名を達成し、第3次再審でかならず事実調べと証拠開示を実現しよう。

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