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部落問題資料室
NEWS & 主張
主張

 

新たな生活文化の創造
と発信にとりくもう
「解放新聞」(2007.02.19-2307)

 「解放新聞」新年号で、食文化をいまに伝える「ムラ自慢、支部自慢」として、栃木県連佐野市協と滋賀県連三吉支部を取り上げあげている。昨年末に、「人権センターながの」がおこなったセミナー「馬一頭分のモツを食べる会」のとりくみも紙面で報告している。また、今年の愛知県連や京都府連の荊冠旗びらさの記事では、手作りの部落の食を振る舞い、新しい年の出発にふさわしい会になったことを紹介している。各地でも同じような部落の食文化を伝える、新年のにぎやかな旗びらさがおこなわれていると思う。
 部落に伝わる食文化は、それぞれの地域とそこに暮らす毎日の生活のなかから生み出され、伝えられてきたものである。まさに差別に抗して、家族を守り、地域で助け合う、そうした部落の知恵によって生み出され、培ってきたものが、いま、あらためて部落の内と外をつなげる、人と人をつなげる貴重な文化として輝いている。

 部落解放運動は文化運動である、としたのは、作家の野間宏さんだ。かつて差別とたたかう文化会議の議長として全国大会であいさつした野間さんは、環境汚染が深刻な問題になっており、人数史的な観点で部落解放運動こそが環境問題にとりくむべきであると強調した。地球的な規模の環境汚染の問題を、一方であふれんばかりの「モノ」に囲まれている日常の生活のなかでのこととして、一人ひとりがしっかりと考えていく、そうした文化の問題、意識の問題としてとりくみをすすめようとよびかけた。20年前、86年3月の第43回全国大会のことである。
 野間さんは、また、部落解放文学賞にも精力的にとりくんだ。部落差別と向き合い、苦しくともいきいきと生きるなかから生み出された識字作品を、人間解放の叫びとして高く評価し、文化運動の推進こそが部落解放運動のなかでもっともっと力をいれなければならないことであると、文化関係者の会合でも積極的に発言していた。

 さきの第4回中央委員会での論議のなかにもあったように、この間の「モノ、カネ」にまつわる一連の不祥事問題によって、部落解放運動は、全国水平社以来の最大の危機を迎えている。「組織総点検・改革」運動の全国的なとりくみをふまえ、部落解放運動の社会的信頼を取り戻し、運動の再生をかちとるために、一人ひとりの同盟員の真剣なとりくみが求められている。
 運動には「モノ、カネ」が必要だ。しかし、理想のない運動は腐敗する。われわれは、差別を媒介にした人と人の関係を変え、部落にたいする差別と偏見のまなざしを変え、いまの格差拡大社会のような日本社会のありようを問い直す部落解放運動をめざしてきた。
 部落のなかには、紙面で紹介してきた食文化をはじめ、春駒や人形廻しなどの門付け芸や識字運動、子ども会活動など、多くの人たちに部落解放運動への感動、共感を生み出してきた運動の文化がまだいきいきと息づいている。「モノ、カネ」だけに固執する価値観から脱却し、きびしいこの試練をのりこえるために、一人ひとりの日日の生活、地域のなかから、これまでの部落の文化を発展させ、新たな生活文化の創造と発信にとりくもう。

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