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部落問題資料室
NEWS & 主張
主張

 

第64回全国大会運動方針の論議を
深化させ、地域からの実践で部落
解放運動の再生を具体化しよう
「解放新聞」(2007.03.19-2311)

 第64回全国大会は、戦後の部落解放運動にとって最大の危機的状況のもと、社会的にも大きな注目を集めるなかで開催された。いうまでもなく、昨年の5月以来の一連の不祥事にたいして、部落解放同盟がこの事態をどのように捉え、部落解放運動再生への方向をどのように打ち出すかということが最大の関心事であった。
 3月3、4日、東京・九段会館に参集した全国の代議員は、緊張感あふれる実勢な議論を戦わせたうえで、「危機的状況における部落解放運動再生への道」を基調とする運動方針を可決した。同時に、一連の不祥事にたいする中央執行部の対応方針と責任問題についても、大会での「信を問う」提案が組坂委員長からなされ、全国の代議員は圧倒的な信任をもってこれに応えた。
 中央執行部は、この絶大な信任にたいして、身が引き締まる覚悟をもって、方針具体化への揺るぎない実践を展開する決意である。同時に、すべての都府県連・支部が、歴史的な第64回全国大会運動方針の議論をしっかりと受けとめて地元の運動と組織の現状に照らしながらさらに深化させ、地域からの部落解放運動再生への確かなとりくみを着実にすすめていくことを期待する。

 運動方針は、「危機の核心」にかかわって歴史と現状にたいする詳細な分析をふまえて、つぎのように概括した。
 「今回の一連の不祥事に端を発した事態が部落解放運動にとって戦後最大の危機的状況であるという現状認識に立って、実は「危機の核心」が特別措置法時代の弊害を払拭し切れていない運動と組織の体質にあること」を明確にした。
 そして、「その運動と組織の体質とは、同和対策事業を通じて生じた権力構造に起因するものであり、権力行使の公正・公平さの確保と権力構造を固定化させない仕組みとあらゆる権力関係を対等に保持する努力を担保することができなかったことによって形成されてきた」とし、「同時に、それらのことを間接・直接に支えてきた行政闘争理論の教条的理解があった」ことを指摘した。
 「この旧態依然とした運動と組織の体質を払拭しきれなかったが故に、倣慢と怠慢が派生し、「第3期論」や「基本方針」にもとづく新たな運動への対応が遅ちとしてすすまないという状況をつくり出してしまい、結果として今回の蓮の不祥事につながっていき、部落解放運動の社会的信頼を失墜させてしまった」と結論づけている。

 以上のような部落解放運動の「危機の核心」についての認識に立って、今後の部落解放運動再生への方向を、つぎのように決定した。
 第1に、「組織総点検・改革」運動を通じて、不祥事にたいする社会的謝罪と社会的責任を果たすということ。
 第2に、運動と組織の体質改善のために、権力構造を固定化させず公正・公平な行使ができるように検討していくこと。
 第3に、懸案になっている「部落解放同盟基本文書(案)」を今日的な状況も加味しながら最終策定するとともに、支部活動の手引き書などを作成し、同盟員教育を強化していくこと。
 第4に、「部落解放運動発展への提言委員会」からの意見を参考にしつつ、独善的な思いこみに陥ることなく、部落解放運動の歴史的使命や社会的責任を根底において、すでに策定している「7つの基本方針」をより豊かに練り上げ、部落解放・人権確立への展望を明確にしていくこと。
 第5に、昨年再結成した中央オルグ団を中心にして、部落解放運動発展に向けての課題を地域の現場からつかみとっていくとりくみを強化して、中央本部・都府県連・支部の双方向の意見交換のもとに組織の改革・強化をはかっていくことである。

  第64回全国大会は、昨年の一連の不祥事にかかわって身を切られるような論議を通じて、前述のような「危機の核心への現状認識」と「再生への方向性」を確認した。この運動方針を決して画餅に陥らせることなく、一人ひとりの同盟員の血肉とすることができるかどうかが、これからの部落解放運動の浮沈を決することになる。
 部落解放運動再生への道は、中央本部や都府県連・支部の幹部の誰かがやってくれるとりくみではない。
 同盟員一人ひとりが、みずからの人間の尊厳をかけたとりくみとして、「人間を尊敬すること」によって他者と対等につながり合う関係をどう創り出していくかの真剣な営みを実践しなければならない。「捨てる勇気と創りなおす気概」をもって、運動的倣憶と思想的怠慢を排して「旧態依然とした闘争スタイルと部落観」から脱却し、自立と共生を軸に困難をかかえた人たちの課題を協働で解決していくとりくみを愚直なまでに追求していくことである。

 それらのとりくみの知恵は、これまでの部落解放運動が成し遂げてきた豊かな経験と成果のなかから汲み取ることができる。教科書無償化闘争や奨学金制度改革闘争などの多くの社会的貢献につながる闘いがそれである。今日では「人権の法制度」確立のとりくみや「狭山第3次再審」のとりくみ、さらに「人権のまちづくり」運動がその課題を体現している。そのようなとりくみのなかに、部落解放運動再生の道があると確信している。
 一連の不祥事にたいする率直な社会的謝罪とみずからの襟を正す「組織総点検・改革」運動を通じた社会的責任の遂行、そして地域からの部落解放運動再生への間断のないとりくみを、一人ひとりの同盟員が人間解放への自律的自覚と具体的実践にもとづいて推しすすめていこう。

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