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7月29日投票の第21回参議院選挙は、いよいよ最終盤に突入した。与野党逆転をかけた緊迫した政治決戦にどのような決着がつくのかは、投票日の最後の最後までの息を抜かないとりくみを持続できるかどうかにかかっている。
私たちは、先の第166通常国会が安倍政権がめざす「美しい国」の内実がいかに危険なものであるかを如実に示した国会であったと認識している。まさに、「戦争ができる国」・「弱者切り捨て」の国づくりに奔走する国権主義・復古主義・民族排外主義の姿をまざまざと見せつけた国会であった。それは、別言すれば、人権・平和・民主主義を露骨に押しつぶしていく姿である。
70年代のベトナム反戦運動のリーダーであった小田実は、この事態に危機感を抱いて「ワイマール憲法を踏みにじっていったドイツナチスのやり方に酷似している」との重大な懸念を病床から朝日新聞紙上で表明した。同感である。
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安倍政権の体質を露呈するかのように、閣僚の醜態があいついだ。政治資金など金にまつわる不祥事で佐田行革大臣が辞任し、松岡農水大臣は自殺、さらには後任の赤城農水大臣と問題が噴き上がった。差別・人権に関わる柳澤厚労大臣の女性の全人格を否定する「女性は産む機械」や伊吹文科大臣の人権に嫌悪感を示す「人権メタポリック」などの不当で差別的な発言、さらには久間防衛大臣の原爆投下は「しょうがない」発言による辞任問題などなど、枚挙に暇がない。しかし、安倍総理は、それぞれの問題の解明をすることもなく蓋を被せ、みずからの任命責任も不問にしたままで、数の力をバックにして事態を乗り切ろうとする倣慢な姿勢を貫いている。
それは、法案審議の国会運営にも露骨にあらわれている。愛国心の強要につながる教育基本法の改悪や憲法改定手続法である国民投票法などをはじめとする17本の法案が、十分な審議を尽くさないままに「数の力」でファッショ的に強行採決された。
安倍政権の戦前の社会的価値観や規範を伝統的美風として復活させようの企みは、靖国問題や日本軍「慰安婦」問題での歴代内閣の歴史認識までも変えていこうとしている。日本軍「慰安婦」問題については、先だって米下院の外交委員会が「日本政府は、…歴史的な責任を公式に認め、謝罪し、受け入れるべきだ」との非難決議をおこなった。7月の本会議でもこの決議が採択される見通しといわれるが、安倍総理はこの決議にたいして「コメントするつもりはない」とのべ、驚くべき厚顔無恥ぶりを発揮している。
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安倍政権がすすめる「戦後レジーム(体制)からの脱却」としての「美しい国」とは、人権・平和・民主主義の否定であり、「人権侵害救済法」制定にたいする冷淡な無視の態度もこれらの動きと軌を一にしている。「解放新聞」購読の申し込み先
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