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部落問題資料室
NEWS & 主張
主張

 

与野党逆転の参議院選挙結果を
ふまえ部落解放・人権政策確立への
とりくみを強化しよう
「解放新聞」(2007.08.13-2331)

 第21回参議院選挙は7月29日に投開票され、自民党の「歴史的大敗」と民主党の第1党への躍進という結果となり、与野党逆転が実現した。部落解放同盟が推薦した38候補は、28人(民主党27人・無所属1人)が当選をかちとることができ、与野党逆転へ大きな役割をはたした。
  これは、「戦争のできる国」「弱者切り捨て」路線を強権的に推しすすめようとする安倍政権にたいする「ノー」という明確な民意のあらわれであり、小泉劇場政治によって衆議院で巨大与党をつくりだし暴走させたことへの真剣な反省であると受けとめたい。
  同時に、年金や増税問題など生活に直結する課題にたいする庶民感覚を喪失した安倍政権への不信と不安の意思表示でもある。
  大敗したにもかかわらず居座りを決め込んでいる安倍政権は、大幅な内閣改造に着手せざるを得ないだろうが、テロ対策特措法の延長問題などの重要法案をかかえる秋の臨時国会では衆議院解散・総選挙も含めた政局がらみの国会運営になることは必至である。
  私たちは、民主党を中心とする野党が今回の参議院選挙の結果にアグラをかくことなく、人権・平和・生活にかかわる具体的な政策の提起と実現を通じて人権立国への確かなとりくみをすすめていくことを強く要請していきたい。

 与野党逆転という今回の参議院選挙の結果を私たちは大いに歓迎はするが、けっして過大な期待を抱いてはならないと考えている。重要法案が安倍政権の思惑通りには成立しないという政治条件ができあがったとはいえ、衆議院では依然として巨大与党が存在している事実に変わりはないのである。
  この新たな政治条件のもとで、私たちがこの間強く求めてきた「人権侵害救済法」の早期制定に向けた政治機運を再度つくり出していく仕掛けが重要である。そもそも「人権侵害救済法」は、いかなる政権であろうとも、政治責任・政府責任・国際責務にもとづいて超党派的な与野党合意による閣法として成立を図るべき性質の法案であり、けっして党利党略や派利派略によって弄んではならない法案である。
  しかし、安倍総理は「真摯に検討」と口先では国会答弁しながらも、検討すべき機構である自民党の人権問題等調査会すら立ち上げず、与党人権問題等に関する懇話会の開催を不可能にし法案提出の努力をいっさい放棄しているのが現実である。
  今回の参議院選挙の結果を厳粛に受けとめるならば、与党は安倍総理のこの政治姿勢を厳しく問い直すべきであるし、野党はその無責任な姿勢を徹底的に追及すべきである。それでも、安倍総理の姿勢が変わらないとするならば、参議院先議による議員立法なども射程に入れて「人権侵害救済法」の早期制定をめざす多様で効果的な戦術を駆使すべきである。何よりも差別実態や人権侵害の現実が、「人権侵害救済法」の早期制定を切実に求めていることを片時も忘れてはならない。

 今回の参議院選挙での与野党逆転は、「人権侵害救済法」制定をはじめとする人権の法制度確立へ向けて積極的に活用できる有利な政治条件をつくりだしたことはまちがいない。だが、有利な政治条件を人権・平和・環境・民主主義を軸とした確固たる政治路線へとうち固めていくためには、生活圏域に根ざした国会外でのとりくみが決定的に重要であることをあらためて肝に銘じておかなければならない。
  安倍総理は、開票結果後直ちに「政権の基本路線は多くの国民に理解されており、間違っていない」と民意と乖離した独りよがりの認識を語り、「美しい国」「戦後レジームからの脱却」を標榜しながら、憲法改悪への危険な道を突きすすもうとしており、断じて許してはならない。
  安倍路線と具体的に対峙する道は、地域からの人権・平和・民主主義を基軸とした草の根運動を拡大していくことである。私たちは、地域内外の多くの人たちとの豊かなつながりを創り出す「人権のまちづくり」運動を根付かせるとりくみに全力を傾注しよう。そして、「人権の核心は生存権」との認識のもとに生活に密着七た「社会的セーフティネット構想」を生保制度・最賃制度・年金医療制度・教育制度を柱にしてマイノリティの視点から打ち出し、多くの仲間と共有するたの努力を継続しよう。さらに、人権市民会議が公表した「日本における人権の法制度に関する提言」を実現していくためのとりくみを広範な各界の人たちとともに粘り強く展開しよう。
  これらの地域からのとりくみを基礎にして、今回の参議院での与野党逆転の成果をさらに人権・平和・環境・民主主義を軸とした政治勢力の拡大へと前進させ、「よき日」の到来を一日も早く引き寄せよう。

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